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PURGEー53 ハニートラップ!!

 ググの汚い唇がレニの唇に重なるかに思われた直前に見つめられた瞳。レニの瞳が光り、その途端にググの身体が時が止まったかのように固まって動かなくなった。

 レニはググに触れられた部分から後ろに離れつつ軽く一息ついたレニ。


「フゥ……術中にはまってくれて助かった……さて」


 レニは妖艶な目付きから鋭い目つきに変わると、動きの止まったググに対して敵意を露わにした。


 一方別の寝室のベッドにて寝ころんだままのリドリア。その美形な顔を亡き後のような充血しか目つきをしてうずくまるように体を丸めて塞ぎ切っているようになっていた。


「……」


 静まり切った空間。そこに突然響く音。突然彼女とベッドのシーツの間に空間にひびが入り、割れて中に落ちていった。

 目を閉じほとんど力のないような状態だったリドリアはこの事態への理解に理解が追い付くまで少々時間がかかってしまうも、気づいた時には砂浜の上にいた。空は既に暗くなっており、時間の経過を表していた。


「あれ? ここは……」


 突然場所を移動した事にリドリアが困惑していると、目に見える先には何人もの女性の姿が同じように倒れ、意識を回復させて起き上がっていた。


「ここは……」

「浜辺?」

「出られたの!? あの部屋から出られたの!!?」


 口調からしてやはりリドリア、レニと同じくググに拉致されていた人達なのだろう。何故その人たちが今一斉に波辺に出てこられたのか分からないリドリア。そこに声をかけてきたのは、何処かに攫われて実質的な人質状態にされていたはずのレニだった。


「リドリアさん!!」

「レ……ニ……? なん……で……?」


 リドリアが何処か暗く硬い口を開くと、レニは彼女の惨状を見てすぐに近づき彼女の手に触れた。


「リドリアさん! もう大丈夫です。みんな助かりますから!」

「え?」


 リドリアがレニの後ろに自分をこのような目に遭わせたググが呆然と気の抜けた表情になり、特殊素材のワイヤーに縛られて既に拘束されている姿だった。


「あれ……なんで?」

「ボクが魅了(チャーム)したから。大丈夫。強めにかけたからそうそう簡単には解けない」

魅了(チャーム)……強めって?」


 レニはリドリアの感じた疑問に返答した。


「サキュバスの魅了(チャーム)は、かける相手の元々の魅了度合いによって効力が変わるんです。先んじてボクに対し性欲を向けさせれば、それだけ深く術にはまるんです」

「性欲を向けさせるって……まさかレニ! 貴方!!」


 徐々に流暢になっていく口調でリドリアがレニのしたことを想像し顔が青くなりかけるも、レニはすぐにそれを否定した。


「ああ! 大丈夫ですよ!! リドリアさんが思う程酷い事にはなってませんので。それにボク、そう言う事にはある程度慣れてるから」

「慣れてるって……」


 リドリアはレニの言った台詞にそのまま返してしまうと、レニは少しだけ顔色を暗くしながら簡単にだけ説明した。


「僕は元々イブリス様の手配で色んな所に潜入工作をすることが多かったので……潜入先の相手を上手く利用するために、ハニートラップを仕掛けるのは得意なんです」

「ハニートラップが得意って、アンタ……」


 リドリアはレニが自分達が出会う前にイブリスの元で何をしていたのかを知り、いたたまれない気持ちになった。

 その思いが強くなったからなのかリドリアは次の瞬間頭で考えるよりも先に体が動き、レニを強く抱きしめていた。


「り、リドリアさん!?」


 驚くレニにリドリアは申し訳ない気持ちを感じさせる台詞をため息の様に吐いた。


「そう……私、貴方を助け出すつもりが助け出されてしまったのね」

「リドリアさん……」


 抱きしめる手から震えを感じ取るレニ。彼女はリドリアが自分を守ろうと動いた時にどれだけググの行為に恐怖を感じていたのかがよく伝わって来た。


「ごめんなさい……そして、ありがとう……」

「いえ……お役に立てて何よりです……」


 お互いにお互いを励ますように抱きしめ合うレニとリドリア。このまましばらくの間感傷に浸っていたい二人だったが、今は共に脱出できた行方不明事件の被害者たちの事、そして犯人であるググの事を考えなければならない。

 レニもリドリアもハグを止めてお互いの顔を見て軽く頷くと、表情や思考を仕事モードに切り替えて立ち上がり、事件の後始末に尽力した。


 最も相手は異世界間の事情を知らない一般人が大半だ。一般隊員二人だけではどうしても手が足りなくなっていき、顔に出る程困り果てていた。


(想像以上に多いわね。それに話を付けるにも誤魔化すにもこれじゃあ理由を作るのが大変ね……)

(せめてもうちょっと人手とがいれば)


 ないものを頼っても仕方ないと思っていてもどうしようもないとはわかっていながらもそう思わずにはいられない状況。

 だが運がいい事に、ここに来て頼もしい声が二人に聞こえてきた。


「いた! リドリア! レニィ!!」

「見つかってよかった!! って! その人たちは一体!!?」


 リドリアとレニは声に反応してすぐに顔を上げる。聞こえてきた方角から走って近付いて来るのは、間違いなく消息不明になっていた黒葉と信乃だ。


「黒葉! 信乃!!」

「お二人共! 無事だったんですね!!」


 お互いがお互いの生存確認が取れた事に思わずハイタッチをしてしまう女性陣三人。黒葉も一歩遅れつつも軽く説明しながらそばに来た。


「ごめん。人攫いに遭ってしまって……事件は解決したけど森本さんも俺も疲労で回復するのに時間がかかって遅れちゃった」

「え? 人攫いって、あの男の事じゃなかったの?」

「え? ビキニ来て海水浴客に扮していた女の人じゃ……」


 事件の詳細に食い違いが起こる黒葉とリドリア。だがとにかくは目の前の事の解決が先だ。

 この夜四人は解放された人たちの処理に追われ、眠る暇すらなく仕事に追われてしまう事態になったが、これにより連続行方不明事件は解決した。


ブックマーク、評価をしていただけるととてもやる気につながります!!


他の『FURAIBO《風来坊》シリーズ』の作品もよろしくお願いします!!


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