PURGEー47 委員長!!
巨大な蜘蛛が数多く出現する謎の島に出現した女性。遭難者と思われていた彼女が自らこのような形で出現したということが、彼女を単なる民間人ではないことは明白だった。
女性は黒葉と信乃の二人を見下ろし、少し期限が悪そうな表情で口を開く。
「まさかこの短時間で勘付き始めるとはね……正直舐めていたわ」
黒葉は彼女の言っている台詞からこの空間の正体を確信した。
「やっぱり、この空間は無人島じゃない。人工的に作られた閉鎖空間なんだな!!」
「ええ、貴方の言う通りよ」
女性は黒葉の言う事を否定せず、こうなれば幾ら知られても同じと思ったのか自分の方から種明かしをして来た。
「ここは私が海中の中に作り上げた巨大な箱の中。異世界間にて見つけた生物の研究の為に用意し、そして餌を度々用意して蜘蛛を成長させていたんだけど……まさかここに来て次警隊が来るだなんてね」
「次警隊の事まで知ってる!?」
女性はビキニの胸部分に隠し持っていたスマートファンに似たデバイスを取り出すと、画面に視線を向けて何やら操作する。
「こうなると実験はおじゃんね。異能力持ちなら色々調べることも出来ると思ったんだけど、バレて警戒されたら元も子もないから」
女性が独り言か二人に対しての台詞かどちらとも取れる台詞を吐いた直後、黒葉と信乃の前方にある森林の木々が次々に揺れる音が聞こえてくる。
まさかと思い二人が警戒を強めると、その予想通りの光景が現実に起こった。信乃を襲った巨大蜘蛛が集団を引き連れて出現したのだ。
「この蜘蛛達……あの人が操っていたのか!?」
「さっさと始末しちゃって。終わったら場所も移らないとね」
もう既に二人に勝った気でいる女性の投げやりな態度。実際後ろには海があり、下手に潜ったところで追い込まれるだけだ。
黒葉が前に出てなんとか蜘蛛達を戦闘不能にしようと構えるも、それよりも前に蜘蛛達は一斉に大量の意図を吐いて来た。
「しまった!」
素早い速度に見渡す限り大量の数。黒葉一人ではとても対処が仕切れないことが実感として沸くももう体を動かしたところで間に合わない。
それでも黒葉は逃げなければ意識を集中させて後ろに下がろうとするが、蜘蛛の糸は彼の判断を嘲笑うように彼の動きより距離を詰めてくる。
(捕まる!)
しかし黒葉に悪い予感がよぎった次の瞬間、黒葉に向かって迫って来ていた蜘蛛糸が一瞬で消え去ったのだ。
目の前で自分に襲い掛かっていたものが忽然と来てた事態に黒葉が目を丸くすると、視界を広げて何が起こったのかを理解した。蜘蛛同士お互いがお互いで糸を吐きつけ合い、その粘着性によって絡まってしまっていたのだ。
「これは!?」
「何!? 蜘蛛共が! 何が起こっているの!?」
女性のお法は蜘蛛達が取った自滅に走る行動に冷静だった表情が崩れて大きく動かした。一方で黒葉はこれが誰の力によるものなのかすぐに分かった。
「委員長?」
黒葉が向けた視線。やはり苦手なものは克服できていないようで身体を震わせながらも、目つきを鋭く集中させて腕を構えている信乃の姿があった。
「蜘蛛達は、これですぐには動けない……大丈夫!」
「委員長! ありがとう!!」
一か所に集めたことが仇となり蜘蛛達は信乃の異能力によって実質的な拘束状態。こうなれば後は上空に浮いている女性一人だけだ。
「まさか一気にやられるなんて。あの女、面倒な能力を持っている!」
声と顔付きに怒りが籠り始めた女性がデバイスを操作すると、空いていた左手元に片手銃が出現し構えられた。
すぐに女性は信乃に照準を合わせてこの場で随一に厄介な存在となった彼女を始末しようとかかる。
(ここは空中。いくら蜘蛛を対策したところでこっちに攻撃は届かない!! 名だ飛び道具があればこっちのもの!!)
などと完結に思考を回していた女性。しかしここに来て間髪入れずに彼女の予想と違った展開が発生した。瞬きをしたその合間にさっきまで地面の上に立っていたはずの黒葉の姿が目の前に現れたのだ。
(なんで目の前に!? さっきまで地面の上にいたはずじゃ!?)
こうなれば思い当たる理由は一つしかない。女性は地面の上に立っている信乃がさっきから少しだけ構えが変わっている事に気が付いた。
「まさか!……あの女!!?」
信乃の異能力を舐めてかかった、気にしてもいなかったがために起こった奢り。今更彼女に注意を向けようとも既に至近距離にまで近づいていた黒葉を止められるものは何もない。
黒葉は女性の腕に触れて<分解>を発動。彼女のデバイスや銃を手元から外させて無力化し、更に直後に用意した手錠によって彼女を拘束してみせた。
「ナァ!!」
「空中に浮いていて、もしかしたらもっと浮かべるのかもしれない。でも意表を突けば、どんな能力を持っていようと対処できる!」
女性を抱えた状態で落下する黒葉。これも信乃が位置操作をすることで瞬時に地面の元まで安全に移動。黒葉は無事着地した。
「ありがとう、委員長!」
「お役に立てて、良かった!!」
お互いに心の底からの笑みを向ける二人。二人の持つ一見役に立たないと思われた異能力によって、この場の戦闘を勝利に収めたのだ。
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