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PURGEー43 高校!!

 小学生時代に偶然が重なって起こってしまった事件。始めはたった一つの小さな噂レベルでしかなかったこの案件。だが子供の好奇心や深い思考のない正義感によって情報は拡散されていき、学校全体に広まってしまった。


 そこから先の黒葉の扱いは酷いものだった。触れられれば強制的に服を脱がされる変態として見られ、廊下を歩いていれば女性陣から陰口を叩かれ睨まれる。男性陣からは直接野次を飛ばされる日々。

 相手にとっては軽いお遊び、しょうもない出来事感覚だったのであろう。しかし受ける側からすれば精神的なダメージは計り知れない。


 黒葉は小学校時代の生活はもちろんの事、卒業して中学生になってからも続くどころか、思春期に入った同年代からはより煙たがられ差別される存在となってしまった。


「おい、アイツ……」

「あぁ、触れた奴の服脱がすっていう変態だろ?」

「全く、どんな事があったらそんなやばいこと起こすんだか」

「最近も十人以上被害出したとか噂だぜ」

「マジかよ。見境ないな」


 捻じ曲げられた噂。もはや否定しようが悪く見られ、虐められ続ける黒葉。彼はそんな世間から逃れたいがために、故郷から離れた誰も自分を知らない町へ一人引っ越し、高校に通うようになった。


 もはや小さい頃に思い描いていたヒーローになりたい思いなどなくなっていき、再び自分がいじめの被害に遭う事を恐れてこの世界の世間に対して距離を取った付き合いをしていくようになっていった。


 最低限しか人と関わらず、周りから空気のように思われることを望む細々とした生活。幸せを感じることがなかったがそれでも精神的苦痛を受けるよりはましだと頭の中で自己完結していた。


 朝教室に入っても誰とも挨拶をしない。誰とも関わらない。そんな生活を心がけようとした黒葉だったのだが、そんな彼の気持ちに反するように交流を持ち掛けてきた人物が一人いた。


「おはよう春山君!」

「え? あぁはい。おはようございます森本さん……」


 それこそが彼女『森本 信乃』交流の始まりだった。黒葉のクラスの学級委員長であり、本人は無自覚ながらもその可愛さと何より誰に対しても壁を作ることなく優しく接してくれる人物像からクラスのマドンナとしての地位を確立していた。


 そんな彼女だ。学級委員長としての立場もあるのだろうが、信乃は黒葉がどれだけ邪険に扱おうとしても優しく話しかけてくれた。


 だが当時の黒葉は、下手に人と関わる事によって自分が追い詰められた経験から彼女の行動を素直に受け止めることが出来ず、一方的に壁を作っていた。


「春山君、提出物ちゃんと持ってきた?」

「はい、もう提出しました」

「そう? ならごめんなさい」

「いや、いいから……用がないならもうこれで……」


 席を離れて教室を出る黒葉。信乃が何処か眉の下がった表情で背中を見てくるも黒葉は気にしないふりをしていた。

 だがどんなに取り繕っていても生まれ持った性格を根本から変えることは到底出来ない。高校生活を送っていたある日、彼自身がそれを改めて自覚させられる事件が起こった。


 黒葉にとっていつも通りの日常。一人きりぼっちの学園生活を送っての帰り道。

 行った先で寄り道をするよ言うわけではなく、家に帰ろうとしていた黒葉だったが、道中、普段は見かけない人物を発見したことで彼はふと足を止めた。


「あれ? 森本さん?」


 見かけたのは普段この道を通学路にしているいるわけではないはずの信乃。当然これは黒葉が今まで気付いていなかっただけで、信乃が普段からこの道を使っていたのかもしれない。


 一度はそう納得しようとした黒葉だったが、彼が見かけた信乃は何かが起こっているわけでもないのにとても急いで走っているようだった。まるで何かに追われ切羽詰まっているような様子。黒葉は彼女が足を進めた方向に追いかける形で走って行った。


 黒葉は何故自分がこの時信乃について行ったのか自分でも分からなかった。だがこのとき彼が走らなければ、今の彼になれなかったことは確かだろう。


 ついて行った先で感じ取れる焦げ臭い匂い、風に乗って飛び散る煤。そして異様に赤く明るくなる光景。一件の建物を中心に火事が発生。それも丁度黒葉が火事をハッキリ認識した次の瞬間、危険物に接触したためか突然爆発を起こした。


「いきなり爆発!? こんなの大事故に!!」


 黒葉の予見通り、ただでさえ火事の中である上に突然起こった爆発に対応など出来るはずもなく、近くにいた人達が火の手に襲われそうになっていた。


 とても走っても間に合わない。頭でそれを理解していても身体はそれについていかずに前へ出ようとする。ひょっとすれば助けられるかもしれないと思ったのだろうが、やはり現実はそうはいかない。

 もうじき人が焼かれる。そう思われたとき、突然火事の建物を中心に、将棋盤に似た立体映像らしきものが投影され、マスの中に入った人達が次々と盤面の端の方、炎の範囲の外にへと移動した。


「これは!?」


 何が起こっているのかが分からず唖然とする黒葉に、走っている最中にいつの間にか姿が見えなくなっていた信乃が、火事の建物の近くで将棋の駒を指すような手つきで手を動かしているのが見えた。


「森本さん!? 何をして!?」


 黒葉が目を凝らして見ると、信乃が指を指した方向に火事から逃げる人が移動し、すぐに安全圏に退避していく。

 黒葉が初めて見た信乃の異能力『盤面操作(ボードゲーム)』の活躍。信乃の次警隊としての姿だった。

ブックマーク、評価をしていただけるととてもやる気につながります!!


他の『FURAIBO《風来坊》シリーズ』の作品もよろしくお願いします!!


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