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PURGEー40 葉っぱ!!

 自分と別れたはずの黒葉が現れた事に、元々会った恐怖と混乱が合わさって声も出ない程の衝撃を受けて固まってしまった。

 反対に黒葉はとにかく必死に蜘蛛を撃退することに意識を全振りして体を動かし、次々と巨大蜘蛛の足を分解(パージ)して戦闘不能にしていった。


「春山君……」


 ようやく声が出た信乃の反応を受けた黒葉は必死な形相のままある程度蜘蛛を撃退すると、次の蜘蛛が動き出すよりも前に信乃の右足先に手を触れることで分解(パージ)を発動、蜘蛛の巣から綺麗に信乃だけを取り外して落下する彼女の身体を受け止めた。


「逃げるよ! 捕まってて!!」

「うん!」


 黒葉に言われるままに彼の身体に強くしがみつく信乃。黒葉は全力疾走で走り抜け、何とか蜘蛛の集団から逃げ切る事に成功した。


 後ろから追手がいないことを何度も視線を向け、耳を澄まして確認を行った。念入りにして一呼吸置くことでようやくホッとした黒葉は信乃に声をかけた。


「大丈夫、もう降りていいよ」


 黒葉の声を受けて抱えられていた信乃はゆっくりと足を地面に付けて彼の背中から手を放し、数歩後ろに下がって間を置いてから頭を下げてお礼を告げた。


「春山君、ありがとう……」

「あ、いや……それはいいんだけど……」


 冷静に立ち返った黒葉が突然視線を逸らす。信乃が何故黒葉の態度が豹変したのかと疑問に思っていると、黒羽は後ろを向いて指摘して来た。


「森本さん……とりあえず何か着るものを見つけないとね……」

「着るもの……!!」


 信乃はここまで暴走していたがために指摘されてようやく我に返り、自分が今も一糸まとわぬ姿になっていることを思い出した。

 信乃は一瞬で顔がゆでだこ以上に真っ赤になり、慌てて両腕で大事な部分を隠してしゃがみこんだ。


「キャアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

「ご! ごめん!! わざとじゃないんだ!! 不可抗力というか、助けることに必死で!!」

「わ、分かってるから大丈夫!! 春山君は何も悪くない! 全部私の不注意で……す、すぐに何か着るから!!」


 信乃は黒葉が自分を見ていないことを信用して立ち上がり腕を動かすと、近くに生えている木の大きな葉っぱに目を付けた。


 一方の黒葉は後ろの信乃が未だ何も着ていない事に緊張を走らせながらも動かないようにしていた。

 とはいえ黒葉も思春期の男だ。自分がしてしまった事に激しく内心興奮してしまっていた。


(俺! 緊急だったからって森本さんの裸を!!……見るだけじゃなく触って、抱き着いて……これもしかして、とんでもない事なんじゃ……

 と、とにかく! 森元さんの為にもあの光景は忘れないと!! 俺は何も見ていない! 俺は何も……)


 黒葉はそう意識を強めて記憶を消そうとするが、当然ながら逆効果となりどんどん信乃のボディラインがくっきりと脳内に浮かび上がってきてしまう。

 白く光を反射するきれいな肌。程よく育ったバスト。細く美しいウエストや足。


(ああ! ダメだ!! 止まれ俺の邪な思考!!)


 徐々に信乃のボディに関する詳細な情報が判明してくる脳裏に黒葉は小野が頭に鋭いチョップを決めて強制的に終わらせた。


「イッタ!!」

「春山君!? 大丈夫!?」


 すぐ後ろで突然謎の行動をする黒葉に信乃は思わす驚いて声をかけてしまい、黒葉はこれになんでもない風を装って答えた。


「ああ、大丈夫何でもないから。ちょっと蚊が頭に止まって叩いただけ」

「そ、そうなの? ならいいけど……」


 どうにか誤魔化せた事にホッとしつつ不意に視線を下に向けた黒葉。もう大丈夫だろうと立ち上がりかけた彼だったが、ここに来てあることに気が付いて文字通り身体が固まってしまった。


「……」

「春山君」

「は、はい?」

「その……着替え終わったから、もういいよ」


 信乃が合図を送った事に黒葉は自身の状況に気付かれないよう慎重に体を動かして後ろの信乃の姿を見た。


 そこにいた信乃が着ていたのは、おそらく近くの木々に生えていた葉っぱから作ったのであろう即席のビキニだ。

 細長い緑色の葉の部分を使って大事な部分こそ隠せているものの、そこまで範囲の大きくない葉っぱの面にしつつ紐の代わりに葉柄を使って少々強引に結んで形どっている服装。ある意味リドリアが着ていたビキニよりもよっぽど目のやり場に困る装いだ。


 黒葉は普段清楚な印象が強い信乃のかなり刺激の強い格好に反射的に生唾を飲み込んでしまい、頬を赤くして再び固まってしまった。


「あの……春山君?」

「え!? ああ……その……」


 反応に困ってしまう黒葉。信乃は黒葉の態度に首を傾げるも彼はすぐに後ろを向き、今度こそ立ち上がって改めて信乃に声をかけた。


「じゃ、じゃあ移動しようか。いつ蜘蛛が戻るかも分からないし、俺達のほかにここに溺れかけていた人がいるなら、助けに行かないと」

「そ、そうだね……」


 足早に近づいて来る信乃に黒葉は言及した。


「ああ、森本さん!」

「どうかした?」

「その、ちょっとの間……後ろを歩いてもらっていいかな?」

「え? どうして……」

「あぁいや、しょうもない事情だから。すぐに大丈夫になると思うから」

「大丈夫?」

「と、とにかく! 急ごう! またはぐれないように一緒に!!」


 黒葉の何処かチグハグな言い回しにキョトンとする信乃。黒葉は不自然に足早に歩いて行き、信乃は彼の態度に表情を曇らせてしまった。


(春山君……役に立てない私に対してやっぱり呆れて……無理もない……よね……)


 自分に非があると信乃が落ち込んでいく中で、先頭を歩く黒葉は自覚のない鼻血を垂らしてあふれ出る興奮を抑えようと躍起になっていた。


(ダメだダメだダメだ!!! 落ち着け落ち着け落ち着け!! 森本さんの裸の事は忘れないと彼女の為に!! 彼女のためにぃ!!!)


 心の奥で反全く温度差が違う二人は再び謎の島の中で捜索を再開した。

ブックマーク、評価をしていただけるととてもやる気につながります!!


他の『FURAIBO《風来坊》シリーズ』の作品もよろしくお願いします!!


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