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PURGEー38 謎の島!!

 海の中に引き吊り込まれたはずの自分が気づいた時には地上に出ており、外に見える景色には周辺に島の一つも見当たらない。

 そして後ろには手入れの行き届いていない原生林。黒葉は今自分が何処にいるのか分からなくなっていた。


「ここは何処だ? 俺、確かさっき海に潜らされて……気を失って……」


 黒葉は自分の身に起こった事を頭の中で整理する。自分の事態がとりあえず飲み込めた黒葉だったが、次に思い出したことでまたしても焦り出した。


「そうだ! 森本さん!! それに、溺れかけていた人も!! 近くにいるのか?」


 黒葉は自分と共に海に引き吊り込まれた信乃や元々溺れかけていた女性を探すのを最優先に動きだした。


「森本さん! 誰か!? いるなら返事を!!」


 ある程度遠くにいても聞こえる大きな声量で叫びながら走り続ける黒葉。いざ森に入って道も分からずに足を進めていく黒葉。一時間かそこらの時間が経過して、黒葉は再び砂浜に出ていた。

 黒葉は目を疑った。砂浜に出て来て見て光景は、自分が倒れていた位置と全く同じだったのだ。


「この光景さっきと同じ? いやいや、周囲に島の一つもないってことも……」


 自分の視覚に疑いを感じる黒葉。不意に彼が顔を下の方に向けると、砂浜に意識を失って倒れている信乃を発見した。


「森本さん!」


 黒葉はすぐに駆け寄り、信乃の近くで声をかける。しかし反応がなかったがために思わず軽く体をゆすってしまった。


「森本さん! 森本さん!!」


 黒葉の必死の呼びかけを受け、信乃はようやく目を覚ました。


「……春山君? 私……」


 黒葉が目を覚ました時と同じく記憶の整理に時間を要してしまう信乃。彼の力を借りて体を起き上がらせつつ、少し時を置いて信乃は情報の整理がついて来た。


「そうだ……私! 人を助けようと海を泳いで、それで……あの女性は!?」

「まだ見つかってない。これからもう一度捜索する」

「それなら、私も!!」


 黒葉の動こうとする意思を聞いてまだ少しぼやけていた思考をハッキリさせ、黒羽の介助を置いてけぼりにしつつ立ち上がった。

 しかしそれがいけなかった。信乃の目を覚まさせ助けるためとはいえ、黒葉は信乃の身体に触れてしまっていたのだ。当然その効果は、この危機的状況下でも関係なく発動してしまう。


 信乃が立ち上がり自身の後ろにある森の方へ足を踏み入れかけたその時。突然彼女が身にまとっていた競泳用のものに似たワンピースタイプの水着が肩の部分から下方向に布地がずれていき、一瞬にしてはじけ飛ぶように脱げ落ちてしまった。


「ナッ!!……」

「え?」


 立ち上がってすぐは一緒に溺れてしまった女性を探そうと意識を集中させていた信乃だったが、後ろにいる黒葉の反応の声を聞いたことで目線が下に動き自分の姿に気が付いてしまった。


「ナッ! ナァ!!……イヤアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァ!!!!!」


 水着の下に下着を付けているわけがないために野外で一糸まとわぬ状態になった信乃は、恥ずかしさのあまりに顔を真っ赤にしてしゃがみこんでしまう。


「ああぁ!! ごめんなさい森本さん! すぐに水着を!!」


 黒葉は慌てて砂浜に落ちた信乃の水着を拾おうと足早に急いだ。しかし彼の手が水着に触れかけたその時、横目に見えた森の中から何かが信乃に向かって飛び出したのを見つた。


「危ない!!」


 黒葉は咄嗟に彼女を押し倒して回避させた。信乃は状況が分からないままに混乱していると、発射された何かが信乃の後ろに位置していた彼女の水着に激突し、それを一瞬でドロドロの液体状に溶かされてしまった。


「溶けた!? あんなの喰らったら人体も危ないんじゃ!!」

「は、春山君……」


 自分の名前を口にする信乃に黒葉は彼女に顔を向けると、押し倒した彼女の胸に自分の左手が当たってしまっている事に気が付いた。


「アアァ!! ごめん!! わざとじゃないんだ!!」


 咄嗟に信乃の胸から手を放して必死の弁解をする黒葉。露出している胸を左腕で、もう一方を右手で隠しながら起き上がる信乃。


「いや、いいの……また助けてくれたんだよね、ありがとう」


 お礼の言葉を口にするも、その表情はやはり何処か曇っている。黒葉がどうにも信乃の様子を気にしていると、彼女の方は先程自身の水着を一瞬で溶かした攻撃について問いかける。


「それより今の、一体……」


 黒葉と信乃が揃って海とは反対方向の森の方に視線を向け、警戒を強める。すると次の瞬間、先程と同じ素早い何かがまたも飛び出し、二人に対して襲い掛かった。

 二人が左右に素早く動いて回避すると、今度は個人個人にそれぞれ同じ攻撃が連続して飛んで来た。黒葉は回避しつつ自分より目覚めて間もない信乃を心配する。


「森本さん! 大丈夫!?」

「大丈夫! 今度こそ私に任せて!!」


 信乃は近くに黒葉がいるからか少し腰が引けた妙な姿勢になりつつ腰回りから右手を外して前方に伸ばし構える。


「水希を溶かした分! お仕置きさせてもらうから!!」


 信乃は自身の異能力<盤面操作(ボードゲーム)>を発動させ、自身の元に飛んでくる攻撃を外しつつ足を前に進めていき、瞬間移動できる範囲を移していく。

 そして少しして信乃は範囲内の端に何かが入った事を感覚で理解した。


「これだ! 春山君、いくよ!!」


 信乃は黒葉に一言声をかけて理解をさせてから技を発動。飛んで来る攻撃の発射元を一瞬で森の中から砂浜まで移動させた。それで見たのは


「ナッ! なあぁ!!!」


 当の呼び寄せた信乃本人が顔を青ざめて体を震えさせる。出現したのは人間の数倍の体格、三メートル程の前兆をした巨大な蜘蛛だった。


「く、蜘蛛……蜘蛛って……虫……虫だけは……」

「森本さん?」

「虫だけは、イヤアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァ!!!!!」


 信乃は激情のままに叫び散らし、なんと黒葉を置いて一目散に森の中に逃げてしまったのだった。

ブックマーク、評価をしていただけるととてもやる気につながります!!


他の『FURAIBO《風来坊》シリーズ』の作品もよろしくお願いします!!


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