PURGEー36 ナンパ!!
事件が起こったのは一週間前の事。被害者はこの海で海水浴をしていた若い男女十組。
情報によると、失笑者の一人が霧が深くなったことに不安の声を漏らした直後に消息不明になったらしく、他にもホテルに向かっている最中に突然消えた人もいるとか。
整合性のない情報に現場の地元警察ではは操作が困難となり、異能力による神隠しの可能性が大いにあると判断され、情報を聞きつけた隊員からの連絡によって黒葉達森本小隊が出動することになったのだ。
とはいっても現時点ではかなり情報が少ない。かといって現場の世界では次警隊の存在が知られているわけではないため、黒葉達は噂に聞き耳を立てて調査をするしかなかった。
というわけで二人一組になって一時解散して調査を始めてみる四人だったが、やはりハッキリとした情報がない中での捜索やははりそう中々上手くはいかなかず、時間が過ぎていくばかりだった。
そんな中で黒葉が調査を続けていると、ちょうど同じく進展のない様子の信乃を発見した。
「森本さん!」
「春山君」
信乃が一瞬少し俯いたような顔をしたように見えたが、すぐに作ったように表情を戻してとりあえず互いの状況を報告し合う。
「どうだった?」
「全然かな……人に聞いても興味がないって感じみたいで」
「こっちも似たような感じ。噂はあっても怪奇現象過ぎて信じてないって感じ。この世界には次警隊の事は知られていないみたいだし、変に強く問い詰めるのもいけないから……」
話をしている最中にも何処か信乃の表情が曇っていく。黒葉は横目でそれに気付いて少し声をかけてみた。
「森本さん?」
「え? あぁ、どうかした?」
またしても声掛けに気付いた途端に表情を戻す信乃。まるで何かを隠しているような信乃の態度を黒葉は心配に思った。
「その、大丈夫?」
「大丈夫? 私は全然元気だよ!」
「え、ああぁ……」
信乃の返事に黒葉が返す言葉に悩みつつも言葉を口にしようとしたが、その直前に信乃が前に向けた目線である光景を発見して声に出した。
「あれは!」
信乃が指摘を向けたのは二人と同じように既に合流していたリドリアとレニの二人だ。
しかし二人は美少女二人で一緒にいたが為に目を付けられたのか、派手ながらの水着にセットした明るい髪型の若い男性二人に迫られ一方的に話しかけられている様子が見えたのだ。
リドリアの戦闘力ならばこんな相手など簡単に追い返すことなど造作もないのだろうが、一般人相手にそれは出来ないと彼女も悔しそうにしながらレニの前に立ってどうにか話だけで事を収められないか奮闘している。
「いい加減にしてください! アタシ達は用事があるんです!!」
「そんなこと後でもいいだぉ~なぁ!!」
「せっかくのビーチなんだ、一緒に楽しまないと損だぜぇ~!!」
微妙な伸ばし方をした独特な喋り方でナンパし続ける二人組の対処にリドリアも困り果てていると、そこに信乃が割って入ってリドリアに話しかけた。
「リドリアさんごめん! 待たせたね! さ、行こっか」
「信乃さん!!」
突然話に強引に入って来た信乃に驚くリドリアとレニ。信乃は一瞬女性人二人の近くに顔を寄せて
そのまま信乃のペースでこの場を立ち去れるかと思われたが、ナンパ男二人は当然納得せず腹を立てて後ろから怒声を吐いて止めさせようとした。
「オイ! ちょっと待てよ!」
「今俺達が誘っている最中だったんだから邪魔すんなよな!!」
声をかけても足を止めない三人にイラついた男達は信乃の肩に強引に触って振り向かせた。
「やめてください!」
よこしまな思いを持って触られたことに嫌悪感を感じた信乃が思わず振り返ってしまうと、ナンパ男達は信乃の顔とスタイルを見た途端に苛立ちを引っ込めて代わりに鼻の下を伸ばした。
「へえ……おいおいこっちもいい女じゃねえか!!」
「俺君みたいな清楚な子の方がタイプ」
男二人は更に結果的に勢いづいて三人にナンパをして来た。当然信乃もこれには嫌悪感を剥き出しにして拒絶するも、相手は気にせず迫って来る。
「いい加減にしてください! これ以上強引なら……」
口に仕掛けた言葉を引っ込める信乃。下手な行動は自分達の立場を危うくしなけないからだ。男達にはそんな都合は関係なく攻めたてる。
「強引ならなんだってぇ~?」
「俺達と一緒に遊んでくれるのかな~!!」
三人は対処に困り果ててしまった女性陣。男の腕が今度はより強く信乃の肌に触れようとしたその時、突然男たとの間を割って黒葉が飛び込んできた。
「あぁ! ごめん皆! 俺が最後になっちゃったね」
「黒葉!」
「春山君!」
「黒葉さん!」
三者三用の呼び方で名を呼ばれた青年の存在にナンパ男達は一瞬で不機嫌な表情に戻り彼に怒声を浴びせた。
「オイてめぇ!!」
「その子たちはこれから俺達と遊ぶんだよ!!」
「小僧はとっとと市民プールでも泳いどけ!!」
しょうもない悪口をものともせず、黒葉はリドリア達に声をかけた。
「とりあえず移動しよっか。ここじゃ話もしにくいし」
黒葉の問いかけに同意した三人は回れ右をして移動し始める。ナンパ男達は頭に血管を浮かせてより怒りを見せる。
「無視すんなてめぇ!!」
「痛い目見ないと分からないようだなぁ!!」
殴る気満々になる男二人を黒葉は見向きもしないで返事だけした。
「そんなことしているよりも、自分のプライバシーの心配した方がいいよ」
「あ? プライバシー?」
二人が黒葉の台詞の意味が理解できないでいると、次の瞬間に彼等が腰に履いていた水着が不自然にずれていき、一瞬にして足元にまで下がって脱げ落ちてしまった。
「ぬおあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「何故水着があぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ナンパ男が慌てると、さらにこの様子を近くにいた海水浴客が発見してしまった。
「きゃぁああああああああああああああああ!!!! 変態よぉ!!!」
「「おわあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」
男二人はこうなれば逃げ出す他に手はなく、浜辺を去っていった。
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