PURGEー35 海水浴!!
指令が送られてきた森本小隊。新たな任務を受けて移動した一行。その場所とは……
明るく照らされる日の光。光を反射する白い砂浜。何よりも目立つのは、目線いっぱい地平線のかなたにまで広がっていく青い水平線。
森本小隊は、『海』に来ていたのだ。
「まさかこんな所にまで泊りがけの任務になるだなんて。いやまいくつも異世界渡って旅している人もいるから、当然と言えば当然なんだけど……」
海パン一丁で済むために速めに着替え終わった黒葉が一人ただただ広がるどこまで続いている屋も分からない海を見て感傷に浸っていると、聞きなれた明るい声が耳に響いて来た。
「お~い! 黒葉~!!」
黒葉が振り返ると、元気よく彼に手を振りながら走って近付いて来るリドリアが見えた。
天真爛漫な明るいビキニ姿。抜群のスタイルを余すことなく露出させて走るリドリアの姿には、周囲にいる一般男性達が揃って頬を赤くし視線を向けてしまう。
実際黒葉も何度かリドリアの下着姿を不可抗力で見た事があるとはいえ、水着を着た彼女からはそこまでにはなかった魅力を感じていた。
見る人全てを魅了していくリドリアは、黒葉の元にまで近づくとキョトンとした様子で問いかける。
「どうしたの? そんなにぼ~っとして」
「えっ!? あぁ、いやその……可愛いなって思って……」
黒葉の何気ない不意打ちの一言にリドリアは顔を真っ赤にしてしまう。
「な! 何よいきなり! 上手いこと言っちゃって……」
「上手い事だなんて、そんな……」
二人揃って初々しい空気を醸し出していると、そこに割って入る声が一つ。
「お待たせしました!!」
次に現れたのはフリルの水着を着たレニ。彼女の可愛らしさにマッチしつつ突き抜けたスタイルも申し分なくアピールできる素晴らしいスタイルだ。
「……って、あれ? なんだかお邪魔でしたか?」
レニは二人で甘酸っぱい空気を流していた黒葉とリドリアの様子に水を差してしまったのではないかと申し訳なく感じてしまっていると、当の二人は我に返って焦りながら弁解しようとする。
「ちょっ! お邪魔って何よレニ!!」
「そうだよ! 別に邪魔だなんてそんな、俺達何かあったわけでもないし!!」
「ハ、ハァ……(良かった……)」
心の中で何処かホッとしてしまうレニ。リドリアははやく誤魔化さなければと話題を変えようとレニの水着について言及した。
「そ! そんなことより!! レニ、その水着凄く似合っているわね!! 可愛いわ!!」
「あ、ありがとうございます……」
自分に話題を振られるとは思っていなかったレニ。二人とは別の意味で恥ずかしそうにしながら少し笑みを浮かべた。
「リドリアさんが一緒に選んでくれたからです……本当に可愛い水着。ボクにはもったいないですよ」
レニの謙遜した言い分にリドリアは少し顔をしかめ、レニの両肩を挟み込むように力強く両手で掴んだ。
「そう謙遜しないで! 確かに水着が可愛いのはそうだけど、レニがその水着を着ているからこそより一層魅力が引き立てられているのよ!!
自信を持ちなさい! その水着は貴方が着てこそ一番似合うのを選んだんから」
「り、リドリアさん……」
リドリアの力の籠った言い分に頬を赤くしたまま目を丸くして固まってしまうレニ。恥ずかしがるままながら彼女の視線はふと目のやり場に困っている黒葉にふと問いかけた。
「黒葉さんは……どう思いますか?」
質問された黒葉は一瞬反応に戸惑いつつもこれに応えないのは失礼だと外していた視線をレニの目に真っ直ぐ向けて彼女の姿をよく見た。
恥ずかしそうにモジモジしているも、その優しい小動物のような小柄な身体に反して大きくメリハリの付いたナイスバディ。彼女もまた知らず知らずの内に周辺の男達の注目の的になっていた。
「そ、その……めっちゃ可愛い……」
恥ずかしそうな柄どうにか口にした素直なコメントにレニの表情が明るくなった。
「はい! 良かったです!!」
「ムムゥ……」
今度は黒葉とレニで甘酸っぱい空気が流れ始めた。そばで見ていたリドリアはこれを止めたいと思いつつも、自分が選んだ水着の事を否定するわけにもいかないと膨らませた頬の中に言葉を詰めて我慢した。
そしてこの空気にもまた外野から声がかかった事で崩れた。
「皆ごめん! 私が一番遅れちゃったね」
声をかけたのは最後に着替え終わった信乃だ。競泳水着に似たワンピースタイプの水着は彼女のスレンダーなボディにピッタリ纏わりつき、露出こそ二人より少ないながらもある意味それ以上のセクシーさを醸し出していた。
「も、森本さん!!……似合ってます……」
思わず声に出てしまった黒葉に信乃も頬を赤くして反応し、残り二人の女性陣が目つきを細めて黒葉に文句あり気な視線を送っている。
「ど、どうかした?」
「べっつに~……」
レニは我に返って表情を戻し、逆にリドリアはより分かりやすく不機嫌な顔を浮かべて黒葉にアピールしてきた。
一方で信乃は一人またしてもどこか考え事をしているような顔を浮かべていた。リドリア達の対応に困っていた黒葉がたまたま視線を向けて彼女の顔を見た。
「森本さん? どうかした?」
「え!? あっ! いや、なんでもないから……大丈夫。そんなことより仕事仕事!」
さっきのリドリア以上に強引に話の論点を切り替える信乃。彼女の大きな声に黒葉達も意識も仕事モードに切り替わった。とある怪奇事件の捜査のために……
そして四人の様子を気付かれずに何処からか見ている視線が一つ。邪な笑い声を出しながら独り言を呟いていた。
「ニヒヒヒ……若い奴が複数人。どいつも体力がありそうだ。今回の獲物は決まったな」
不穏な空気の漂う事件捜査が始まった。
ブックマーク、評価をしていただけるととてもやる気につながります!!
他の『FURAIBO《風来坊》シリーズ』の作品もよろしくお願いします!!
リンク https://ncode.syosetu.com/s1109i/




