PURGEー34 三度目!!
ルール違反の手紙から始まった大きな騒動がどうにか解決し、重傷を負った身体も回復して数日過ぎたある日。
怪我が治ったとはいえ中々疲労が抜け切らない黒葉は、非番ということもあって寝室でぐっすり眠りこけていた。
起きたときにはカーテンの隙間からでもハッキリと日の光が漏れる程に時間が経過していた。上半身をベッドから起こし伸びをしてから時計を確認すると、既に十時は過ぎている。
「また寝すぎたか……いい加減もっと早起きしないと仕事に支障が出るよな。これ……」
自分の今の生活パターンに不安を感じる黒葉。とはいえこの時間までグッスリ眠っていたがために頭の中はまだ覚醒しきっておらず、まずは目を覚まさなければと洗面台に手顔を洗うことにした。
自室を出て廊下を歩き、洗面台のある部屋の扉の前に到着した黒葉だったが、指を引っかけた瞬間にこの先の部屋で起こった二度のアクシデントについてフラッシュバックした。
一度目は扉を開けた途端にタオルで体に付いた水滴を吹いている最中のリドリアと、二度目は脱衣所には誰もいなかったが風呂場で体を洗って上がった信乃と遭遇した。
よく二度あることは三度あるという。黒葉は凄く警戒をしていた。ゆっくり扉を開き、脱衣所に誰もいないことを確認する。
「よし、脱衣所には誰もいない」
脱衣所に入った黒葉は次に風呂場の方に視線を向け、明かりがついていないことを目視確認。念のためシャワー音がない事、ノックをして反応がない事も確認した。
「我ながら何をやってんだろうな……まあ、これで脱衣所にも風呂場にも誰もいないな。これで今度こそ普通に洗顔が出来る!」
黒葉は安心して洗面台に立ち、寝ぼけた顔を洗顔してスッキリ綺麗にさせた。
「よし、さっきよりも目が覚めたな」
目が覚めてきた黒葉だが、ここに来て長時間眠っていたが故の尿意を感じた。
「ついでだし、ちょっとトイレ行くか」
黒葉は完全に安心しきって脱衣所の向かい側少しずれた個所にあるトイレの扉に手をかけた。そしてドアノブを掴んで回した。
「ンエッ!!?」
「ハイッ!!?」
トイレの扉を開けて黒葉が見たのは、何故か赤い布地に黒いレースの付いたブラジャーだけを付けた姿で便座に座っているレニの姿だった。
「なんでここに!? ていうかなんで服を!!?……」
「キッ……」
反射的に質問を飛ばしてしまった黒葉だったが、今するべき行動はそんなことではないと考えた。しかし扉を閉めるという行動に思考が移される前に、レニは顔を真っ赤にして黒葉に力いっぱいのビンタを喰らわせた。
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
「何でいるのおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
やはり二度あることは三度ある。再び壁にぶつけられた黒葉にレニは足元にまで下げていたショーツを引き上げて迫った。
「アアアアァ!! ごめんなさい!! シャワーを浴びようと思って服を脱いでいる最中にお手洗いに行きたくなっちゃいまして……それに、鍵までかけ忘れて……」
レニが必死で弁解して謝罪するも、当の黒葉は白目を向いて気を失ってしまっていた。
「……って! 黒葉さん? 黒葉さん!? 黒葉さあぁぁぁん!!!!」
レニの叫び声が聞こえたのか、寝間着姿のまま急いで階段を駆け下りてくる足音が二つ。リドリアと信乃だ。
「レニ! どうしたの!?」
「春山君に一体何が!!?」
二人は階段を駆け下りて見た光景に揃って絶句した。たまたまながらたった今彼女たちの目の前には下着姿のレニが気絶した黒葉を抱き寄せて自身の豊満な胸に押し当てている様子だった。
これに次の瞬間信乃は口を閉じて顔を真っ赤にし、リドリアは同じく顔を赤くして怒り顔になりながら叫んだ。
「朝っぱらから……何してんのよアンタ達いいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」
「ち、違うんですうううぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」
朝のドタバタ騒ぎを終え、頭にたんこぶを作りながら食事をすることになっていた黒葉。向かい側にはしかめた顔を浮かべたままのリドリアと目線に困っている信乃が黙ったまま食事をしていた。
(またしても、気まずい食卓……)
何か会話を切り出そうと頭を回転している黒葉だったが、そこに服を着替えていたレニが慌てて合流した。
「すみません! お待たせしました」
以前黒葉から渡された物に似た黒い布地に赤いラインや模様が入ったゴスロリワンピース。しかし前回のものと違いサイズはレニにピッタリなものになり、動きやすいようにフリルの量も少なめになっている。
「そのワンピース似合っているわね。一緒に選んだ甲斐があったわ」
レニの姿を見て鼻を高くするリドリア。レニは少々照れた顔を浮かべながらお礼を口にする。
「本当にありがとうございます。こんなに可愛い服まで買っていただいて、本当にお世話になりっぱなしで!」
「いいのよ。ね、信乃」
「えっ!? え、ええ……とっても可愛いです」
信乃の遅れた反応にリドリアは何処か引っかかり顔をしかめた。
「どうかした? ぼ~っとしちゃってるようだったけど」
「あ……いえ、なんでもないよ。ちょっと寝ぼけていたかな? アハハ……」
「そうなの? まあ、ならいいけど……」
信乃のふとした変化。リドリアがこれ以上問い詰めることはなかったが、向かい側に座っていた黒葉が咀嚼しているものを飲み込んでから何かを問いかけようとした。
「森本さん、その……」
しかし黒葉の質問は口に出す前に全員のスマートフォン型デバイスにそれぞれの着信音が鳴り響いた。
「着信?」
「もしかして……」
何となく予想が付いた四人。代表して信乃がデバイスの画面を広げて送られてきたメールの内容を確認すると、ぼ~っとしかけていた信乃の表情が引き締まった。
「来ました。新しい任務です!!」
森本小隊、新しい任務の始まりだった。
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