PURGEー26 ゲームセンター!!
とりあえずの行動内容を決めた黒葉はなんでこうなったのだろうかと困惑するレニを連れて喫煙所を離れ、二人でゲームセンターに入っていった。
「ここなら色々楽しめるゲームが揃っているから、色々出来ると思うよ。何かやってみたいこととかない?」
「や、やってみたいこと……」
レニが左右に視線を回して困惑の汗を飛ばしながら何か探してみるも、いざ探せと言われても中々ピンとこないもので、その場に立ち止まったまま選べないままだった。
「ご、ごめんなさい……何がどうなのかもよく分からなくて」
「ああ、それもそうだね。それじゃあ、俺が案内するよ。気に入ってくれるのがあればいいけど」
黒葉が最初に連れて行ったのは某リズムゲームの機器。黒葉はレニに遊び方を説明すると、一緒にゆっくりとゲームを始めた。
当然レニは初心者。上手くいくはずがなくミスをしてばかりであり、黒葉は笑顔を向けるが当の本人はその度に謝罪の言葉を口にしていた。
「ごめんなさい! すみません……」
(協力プレイは自分を責めちゃうのか。それじゃあ)
次に黒葉が案内したのは横に四つ並んだレースゲーム。協力プレイがダメなら対戦ならどうだろうかと思ったのだ。
だが実際に対戦を始めてみると、この世界では車の運転自体あまりなじみがない。レースものという車を体現したようなゲームの操作法の感覚はレニにはつかめず、あたふたとしながらコースアウトを連発してしまった。
「ああ! また落ちてしまった!!」
(もう十回くらいはコースアウトしているな~……ルールが難しすぎたかな?)
泣きべそを浮かべるレニに黒葉はもっと単純なルールで楽しめるゲームをと移動し、エアホッケーにたどり着いた。これならパックを相手の方向に落とすだけなので単純かつ楽しめると思ったからだ。
三度目の正直で今度こそはレニを楽しませることが出来るのではないかと思った黒葉。
(これなら楽しんでもらえると思うけど)
「ソラッ! 行け!」
自分の方に来たパックを飛ばす黒葉。向かって来たパックを目を瞑って思い切り振るったレニ。すると次の瞬間にゲーム機から音が鳴り響いた。
自分が点を入れれたのではないかと目を開けるレニだったが、彼女が目にしたのは空振りして自分の手から離れたマレットが黒葉の顔面に激突し、後方に倒れて気絶してしまった。
「アアァ! ご、ごめんなさい!!」
少しして目を覚ました黒葉。ゲームセンターから離れ、近くのベンチで横になっていた。
「イッタタ……俺、何をして……」
意識が回復するまで少し時間を要したが、我に返った黒葉は近くにレニがいない事に焦りを感じて体を起き上がらせた。
「いない! しまった!! 気を失ったその隙に」
次に黒葉は自分が眉間から出血をしている事に気が付いて目を大きく開いて反応していると、自分の元に走って近付く足音に気が付いた。
視線を向けた先にいたのは、自分の監視から逃げ出したかに思われたレニだった。
「レニさん」
「これ! そこのお店で買ってきました!!」
レニが手渡して来たのは簡単な絆創膏と消毒液だ。黒葉は先程まで自分から何か動こうとしなかった彼女が自分で判断して動き、戻って来た。
黒葉は自分が気絶している間に逃げることも出来たはずなのにそれをしなかったレニに思うところが出来た。そんな考え事をしている中、レニは黒葉の傷口に消毒液をかけ、絆創膏を張り付けた。
「はい。これでもう大丈夫、です……」
「……」
じっと見つめてくる黒葉にレニは瞬きをして何故じっと見てくるのか分からない様子だった。
「あの……どうかしましたか?」
「……あ、いや……ありがとう」
黒羽はレニに何故逃げなかったのかを聞くのを止めた。以前自分を襲撃した彼女が自分の手当てをしてくれたことに思うところはあった黒葉。だがすぐに目の前の彼女の息が上がった様子から本心から助けてくれたことが分かった。
黒葉はレニの行為に対して素直に嬉しくなっていき、優しい笑みを浮かべてお礼を告げた。
「あれがとう、レニさん」
レニは黒葉の笑顔を正面から見た途端に顔を赤面させて目線を逸らした。
「い、いえ……ボクがマレットを放り投げちゃったのが原因だから」
「あ、それで俺気絶しちゃったのか……プッ! フフフフ……ハハハハハ!!」
「フフ……ハハハハ!! ハハッ!!」
思わず笑い出してしまった黒葉に釣られてレニも笑い出した。黒葉は初めて見たレニの笑顔に素直な感想を述べてしまう。
「レニさん、笑っている顔の方が何だかいいね」
「え?」
「可愛いっていうか、明るいっていうか……あ、ごめん。セクハラ発言だったかな?」
「い、いいや。そんなこと言ってもらえて、ボク嬉しい……」
黒葉は落ち着いて聞いていたために聞き取れたレニの台詞に引っかかった部分があった。
「レニさん、さっきからボクって」
指摘されたレニは途端に口を大きく開いて言葉を修正する。
「すみません。ワタシ……」
この様子に黒葉は一つ思った。
「もしかして、一人称直しているの?」
「はい、ボクなんて男みたいな言い方を止めろって」
「それって、もしかしてイブリスから!!」
黒葉がイブリスの名を上げたその時、突然彼等がいるところを含めたショッピングモールの照明が消灯した。
「なんだ!?」
驚く黒葉にレニは何かを察した様子でせっかくの笑顔が引っ込み、思い立ったようにベンチから立ち上がった。
「レニさん?」
「春山さん……こんなワタシにお付き合いいただきありがとうございました。でも、どうやらもう行かないといけないみたいです」
「行かないといけないって、一体何を!」
「すぐにショッピングモールを出て! 逃げてください!!」
「え!?」
レニは言う事を言ったとたんに今まで以上に何かに迫られるように走り出した。黒葉は追いかけるも曲がり角を曲がったところで彼女の姿は消えてしまい、一人取り残された。
「レニさん……」
黒葉はいなくなったレニが何をしようとしているのかは分からない。だがこの場で何か悪い事が起きると確信したがために、逃げるようなことはせずすぐさまリドリアと信乃と合流しようとより内部へ足を急がせていった。
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