PURGEー24 買い物!!
リドリアとイブリスによる決闘が終わり、リドリアが病院から退院して数日後。本日森本小隊は非番の日だ。
普段ならば特に何も予定はなく、大事のトラブルがあったのでゆっくり休もうかと思っていた黒葉だったが、この日は朝早くに身支度を終えて何処かそわそわしながらリビングで待機していた。
「あれ? 黒葉もう準備できたの!」
「待たせちゃってごめんね」
数分経過すると、リビングにいつもとは違うお洒落をしたリドリアと信乃がやって来た。
リドリアは黄色い布地に花のような白い柄がいくつか入ったボタン止めのTブラウスに下はシャツの明るさを邪魔しないような紺色のチュールスカート。
信乃は黒い布地にワンポイントだけ白い模様が付いた動きやすそうなシャツに茶色いショートパンツを履き、黒いキャップを被っている。
二人の美少女が普段は見せない格好に思わず見惚れてしまう黒葉。だがもう一度声をかけられて彼はすぐに現実に引き戻された。
「ちょっと! 聞いてるの? そろそろ行くわよ!」
「ん? ああ! ごめん。ぼ~っとしてた」
今回はプライベートのお出かけ。小隊の家の買い出しついでにランチに行く予定なのだ。
とはいえ科学技術の発展したこの世界では車で行くような距離に公共交通機関を使うことはしない。信乃は扉の近くの機器を操作して座標を決めると、二人が靴を履き終わったのを確認してから扉を開いた。
扉を開いた先には目的地であるショッピングモールが見え、足を踏み入れるともうその場所に到着した。
黒葉が扉を通ってから後ろを振り返ると、柄は違うも同じように扉が開かれた状態となっており、一度閉めると近くの機器で座標を打ち込むまで開かないようにロックがかけられた。
「はぁ~……やっぱりすごいやこういう技術。なだ慣れないけど……」
生まれたころは超能力こそ当たり前ながら科学技術の発展については現代日本と差し支えない世界にて暮らしていた黒葉にとって、最先端の転移技術による移動はまだ慣れていない部分があり、数度扉を見てしまった。
「何してるのよ黒葉。行くわよ」
「ああ、ごめん」
黒葉に対してこのシステムに慣れているリドリアが呆れた顔をし、信乃は思わず少し笑ってしまう。黒葉は少々恥ずかしい思いになりつつも先に歩いて行った女性人二人について行った。
道中通り過ぎていった清掃スタッフの一人に視線を向け続けられていたことには気づかずに。
そのスタッフは掃除場所の移動という体で人目に付かない物陰に入ると、スマートフォン型のデバイスから誰かに向かって通信した。
「森本小隊が姿を見せました」
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そこから三人は様々な店へ買い物をしに行った。とはいえこの三人の内二人がお洒落な恰好をしている。日用品類を買うことは別にして、二人が楽しむことといえば黒葉にも何となく想像がついた。
「じゃーん! この服どうかしら!」
三人が今いるのは、大型ショッピングモールには必ず十か所はあるであろうことでおなじみ服屋。見つけた服を早速試着したリドリアが試着室のカーテンを堂々を開けてきた。
さっきまでの服装は正直いつものノリとあまり変わらない印象だったが、今回は真っ白な清楚系ロングワンピース。露出も少なく気品に満ちている。
……はずなのだがいかにも自慢げなリドリアのドヤ顔が服の効果を正直半減させていた。
「似合う! けどなんだかちょっと違うような……」
「分かりやすくアタシ出来ます感っていうか……」
「二人して何よその言い草! まるでアタシがなんでも似合う事を自慢しているみたいじゃない!! まあ、実際そうだけど」
「否定しないんかい!!」
少々気辱めな顔で自画自賛をするリドリアに思わずツッコミを入れてしまう黒葉。リドリアはならば次とカーテンを閉めると別の服に早着替えをして再びカーテンを開けた。相手に退屈をさせない辺り結構気を使ったのかもしれない。
「これならどうかしら!!」
ガラリと雰囲気を変えて居間の信乃と同じようなボーイッシュ。スポーツTシャツにロングパンツを履きこなして見せた。
「私、さっきよりこっちの方がいいと思います!!」
「確かに、元気な性格のリドリアにはこっちの方がいいのかも」
今度は高評価な言い分に少しかいていた冷や汗を引っ込めて少し頬を赤くしながら顎を上げて自慢げなポーズを取った。
「ま、まあ当然ね。でもなんだかこう面と向かって言われるとこそばゆいわね……」
自慢を崩しつつ目を開けたリドリアは、黒葉の隣で共に観客でいる信乃に指摘した。
「というか信乃、アタシばっかり着替えていたって面白くないでしょ? ほら来なさい!!」
「ああ! ちょっと!!」
リドリアによって強引に試着室に入れられた信乃。カーテンが閉められると中で会話と服が着替える音が黒葉の耳に入って来た。
「ウワッ! 信乃ってめっちゃ肌が綺麗ね! 白くてスラっとしていて……」
「フエッ! ちょっとどこを触っているのリドリアさん!?」
(これ……中でちゃんと着替えているんだよね……)
そこからは二人の美少女によるファッションショーが始まった。ロックスタイル、ファンシー、チャイナ……黒葉は今自分が共にいる仲間達がどれだけ美少女なのかを改めて理解させられた。
なんだかんだでしばらく時間が経過し、リドリアと信乃はいくつも服を購入して大量の紙袋を両手に持ち、黒葉も服の一部を紙袋の中に入れて携えていた。
女性陣はウキウキな様子で足を進めていたが、あまりお洒落に興味のない黒葉にとっては正直退屈な時間だった。
「それじゃあ、次はあのお店行きましょ!!」
「うん。可愛いのいっぱいありそう!」
「え!? まだ行くの!?」
女性陣のお洒落への情熱について行けない黒葉は、どうにかこの流れから抜けられないものかと代案を出すことにした。
「じゃ、じゃあさ……二人が服を見ている間に俺他の物買いに行っておこうかな」
「え!? いいの」
「それだと春山君一人にいっぱいいどうしてもらっちゃうけど」
「ああ、それは別にいいから!」
むしろこのまま付き合わされていた方がキツイとは言わない黒葉。リドリアと信乃はこれに快く乗る事にし、黒葉に頼んだ。
「分かったわ」
「春山君、ありがとう」
こうして二人とは別れ、信乃から渡されたメモを頼りに必要なものを揃えようと店を転々と移動する黒葉。
「ええっと、次はトイレットペーパーで売り場所は……」
その道中、黒葉はメモに視線を向け過ぎたがために思わずそばを歩いた人物の方とぶつかってしまった。
「あ! ごめんなさい!!……って!!」
すかさず振り返って相手に謝罪しようとしたときに突然目を丸くする黒葉。その理由は見た相手にあった。
「あ……あの……その……」
「何で君がここに!?」
特徴的な眼鏡をかけた小柄な人物。スヘッダ小隊に所属する、黒葉に手紙を渡したあの少女だった。
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