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PURGEー20 代理!!

 時間は少し遡り、信乃が黒葉の代わりに闘技場へ向かおうと決心を決めた時だった。信乃は自分が行くと言いかけたときにリドリアの声に押されて出しかけたセリフを引っ込めてしまっていた。


「リドリアさん! ここは……」

「小隊長!!」

「リドリアさん、何か?」


 信乃は感が悪い方ではない。このタイミングで自分の台詞を止めてきたことはリドリアは何を言い出そうとしているのかは明白だった。


「今回の決闘、黒葉の代わりにアタシに出させてください! お願いします!!」


 深々と頭を下げて頼み込んできたリドリアに信乃は一筋汗を流して戸惑ってしまう。


「リドリアさん……そもそも決闘において代役を立てるというのがあまりない事例なんです。だから少しでも可能性を上げるためには小隊長である私が出る方が」

「分かってます!! でも、今回の件はそもそもアタシが鯨飲で引き起ってしまった問題です!!」


 リドリアは頭を上げると、信乃の目を真剣な目付きで真っ直ぐ見つめてきた。


「だから、自分の問題は、自分で片付けさせてください!!」

「リドリアさん……」


 信乃はリドリアの思いを受け取り、イブリス達に手前で邪魔されないよう敢えて彼女に時間ギリギリのタイミングで闘技場に到着させ、自分は黒葉の捜索を続けることになったのだ。



_______________________



 そうして突然闘技場に現れたリドリアに動揺する観客達。対するイブリスは少々目を細めつつ手振りを付けながら彼女に問いかけた。


「おやおや、何故君がこの場にいるんだい? 今日の決闘は俺とあの少年とのものだったはずだよ。それをいきなり横取りとはいけないな」

「横取りじゃありません。代理です!」


 イブリスの問いかけにリドリアは強気な威勢で返答した。だがイブリスは彼女の様子を鼻で笑い見透かしたようなことを言い出す。


「代理か……大方逃げちゃったあの男の身代わりなのだろう? 行動力があるのはいいが、余り過ぎると自分が痛い目に遭っちゃうよ」

「黒葉は逃げてなんていない!!」


 リドリアはん逆鱗に触れられたような思いになって叫んでしまった。すぐに激情を抑えようと声を静めるも、やはり納得のいかない部分は口から出てしまう。


「アイツは逃げてなんていないわ……本当はここに来たかった。でも出来なかった」

「へえ、どうして出来なかったというんだい?」


 わざとらしく問い詰めるイブリスにリドリアは思っていることを正直に告げた。


「アンタ達が、何かしたんでしょ!!」


 これを聞いたイブリスは思わず大きな声で笑いだしてしまった。


「はっはっはっは!!!……面白い事を言うねえ、リドリア。俺達があの男を襲ったとでも思っているのかい?

 そんなことをして何になる。俺は小隊長だぞ? そんなせこい真似をしなくたって、この程度の勝負勝利できるさ」


 悔しいがリドリアにはイブリスが黒葉を襲撃した証拠はない。イブリスは彼女の行動を茶番と捉えたようで、自身の左側奥に存在する部屋の方に声を出した。


「審判さん! 春山黒葉隊員は勝負から逃げた。これで俺の不戦勝って事でいいですよね!!

 腰抜けの代わりに俺の隊員になる人がわざわざ勝負を代わる必要なんてないし、何より俺は美しい女性に怪我を負わせたくないので!!」


 イブリスの提案に観客達がそれぞれ反応する。困惑する人もいればイブリスを称賛する人もいる中、事の判断はイブリスの目線の先にいるであろう審判にゆだねられた。


 審判。次警隊の隊員同士での揉め事の解決において一番解決しやすい決闘であるが、その場で不正を働いたりする者がいないように監視するのが役目の人物だ。

 審判は決闘の開催地となった基地にいる隊員の中から選ばれ、公正な目で判断する。


 その審判はイブリスからの申し出に対してこう答えてきた。


「スヘッダ隊員の意見を却下する」


 闘技場中に響き渡る男性の声。イブリスは自分の意見が承認されなかったことに驚いたようで、少し激情がこぼれながら審判に問いかけた。


「どうしてだ!? 春山隊員の勝手な行動でこれから無駄な戦いが行われるのがいいというのか!?」


 イブリスの言い分に審判は淡々とした口調で返答した。


「アイズ隊員は自ら春山隊員の代わりを務めると言っている。過去の決闘でも体調不良者の隊員に代わって別の隊員が結党に参加した例はある。何も問題はない」

「しかし! 彼女は春山隊員が塞ぎ込んだせいで仕方なくこの場に姿を見せただけであって、それは体調不良とは関係ない!!」

「春山隊員が塞ぎ込んでいると何故確定する!」


 審判からの強い言葉にイブリスは黙らされると、審判の言い分は続けられた。


「春山隊員がこの場にいないことについては確かに異常だ。しかしそれが本人の意志からのものであるかは別問題。

 春山隊員が自ら欠席の意志を示しているのならまだしも、今回はそれもない。春山隊員が何者かに襲撃された証拠は出ていないが、襲撃されていない証拠も同じく出ていない」


 先程自分が言った事に対するブーメランをぶつけられたイブリスは、屁理屈ではあるものの一理ある審判の言い分にこれ以上リドリアの退場を要求することは出来なかった。

 この様子を見た審判は会場に響き渡るようにアナウンスを出す。


「今回の決闘、春山黒葉隊員の代理として、リドリア・アイズ隊員が出場するものとする!!」

「チッ……こざかしい言い分を」


 誰にも聞こえない微かな声で愚痴を漏らすイブリス。リドリアはとりあえず自分の出場が認められたことにホッとしつつイブリスを再び睨みつけた。


「これで文句はなし。勝った方の言うことが決定事項になる」

「ハァ……まあいいさ。君は俺には勝てないからね」


 こうなっては仕方ないと気持ちを切り替えたイブリス。両者が睨み合う中、機会音声による開始合図が闘技場に響き渡った。


 リドリアとイブリスによる決闘が始まった。

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