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PURGEー16 申し出!!

 イブリスの指示を受けた隊員が部屋から離れて数分後、案内されて現れた森本小隊の隊員は一人。女性陣の話を聞いて黙っていられなかった黒葉だった。


「これは意外。てっきり全員、最低でもリドリアは来るかと思ってたんだけどな」


 黒葉一人だけが来たことに関する感想を口にしたイブリスの世間話に付き合うことはなく、黒葉はさっそく本題に入ろうと口を開いた。


「話がある」

「おいおい、何ため口で話してんだ。俺は小隊長。君より立場は上だ。発言くらい丁寧にしろ」


 黒葉はここで自分の立場の事を受け入れ、敵陣の真っただ中で余計な事をするべきではないと言われた通り言葉を慎めた。


「失礼しました。スヘッダ小隊長」

「へえ、礼儀はいいんだ。前に会った生意気の減らない奴よりはましだな」


 イブリスはとある人物の事を思い出しながら独り言を呟いていると、黒葉はもう一度本題の話を申し出た。


「スヘッダ小隊長! 俺と決闘してください!!」


 イブリスは黒葉の申し出に近くで見ないと微かに口角を上げ、二人の間の位置にいた少女の表情は曇った。


「リドリアの移動指示を取り下げたいって事かな? だけどこっちには隊長権限の許可がある。わざわざ受けて上げる道理もないだろう」


 黒葉からすれば最もな言い分。以前彼がリドリアと決闘をしたのはクオーツの仲介があっての事。正直殴りこんだとて向こうが許可をしなければ何も始まりはしない。

 だから黒葉は思う限りの条件を出した。


「確かにそうです。でも今回の件に森本小隊(俺達)は納得していない! 一方的に事が終わったのならば何度でもリドリアを取り戻そうと奮闘します!!」

「それを、決闘で俺が勝てばもう手は出さないと?」


 条件の最後の部分を先に言われてしまい口を閉ざしてしまう黒葉にイブリスは思わず笑ってみせた。


「はっはっは!! 強引この上ない言い分だな。そうされたところで悪あがきにしかならないというのに」


 自分を馬鹿にする相手に一切真剣な目付きを崩さない黒葉。イブリスはそんな彼に笑いを諫めると、受けた提案への返事をした。


「だが、いいだろう」

「ッン!」

「受けて上げよう、その決闘。こちらとしても何度も文句を言われ続けるのは鬱陶しいし、引き下がってくれるのなら本望だ」


 黒葉は正直可能性の低い頼みかけでイブリスが首を縦に振ってくれたことに驚きつつも、何処か正直な気持ちも籠って頭を下げた。


「ありがとう! ございます!!」

「ただし!……条件を付ける」

「……条件?」


 イブリスは机に膝を立てて少し前のめりな姿勢になると、黒葉に条件の内容を告げた。


「君は、入隊時にリドリアの痴態を晒したそうだね。あの時は決闘でなかったことにしたけど、今回喧嘩を売った件も含めて……

 俺が決闘に勝った暁には、君に次警隊を止めてもらおう」


 黒葉の目がこわばった。正直なところまだ出会ってからそこまで日が経っていない相手のために自分の首を賭けろというのだ。そこまでして自分に挑む覚悟があるのかというイブリスなりの脅しなのだろう。

 だがこの問いかけを受けても黒葉の意志は一切変わらなかった。


「分かりました。その条件飲みます!!」


 イブリスは顎を広げ、少女は黒葉のあまりに素早い返事に驚いて数歩前に歩いてしまった。


「いいんですか!? そんなの貴方が」

「お前は黙れ!」


 イブリスに匙を投げられた途端に口を閉じて身を引く少女。イブリスは再び黒葉に視線を向けながら告げた。


「決闘は二日後。場所はメールで送信する。いいね」

「はい!!」


 こうして、黒葉とイブリスの決闘がここに決定された。



_______________________



「という訳で、俺とイブリス小隊長による決闘が決定しまして……」


 家に帰ってすぐに起こったのは、リドリアによる手痛いビンタだった。大きく高い音が部屋に響き渡る中、黒葉は左頬に感じるかなりの痛みに手で抑えていた。


「イッタタ……」

「何考えてるのよ……」


 ビンタをしてからすぐは震えていただけのリドリアだったが、次の瞬間には黒葉の胸ぐらをつかんで大声で怒鳴っていた。


「何考えてるのよアンタ!! アタシの移動程度の問題で! なんでアンタがしょい込んで!! 馬鹿じゃないの!!!」

「リドリア! 落ち着いて!!」


 後ろから羽交い絞めにしてリドリアを放す信乃だが、暴れるリドリアを抑えるのにはかなり苦戦し、その間にもリドリアは黒葉に対し叫び続け、激情のままに罵倒した。


「馬鹿よ! アンタ大馬鹿よ!! こんな事のために自分のクビをかけるなんて!! 本当に……アタシなんて捨てればよかったのに……」


 上がり切ったアドレナリンが止まった途端に涙が溢れる形で下がっていく。信乃が手を放すとリドリアはその場に泣き崩れて拳を床に叩きつけた。


「アタシのせいで黒葉にまで被害が及んだ!! もう嫌!! アタシのせいで! あたしのせいでぇ!!!」

「リドリア!!」


 怪我をしかねないリドリアの行為に黒葉がその手を受け止めた。


「黒葉?……」

「まだ何も被害が及んでないだろ? 決闘で勝てばいい」

「簡単に言わないで! 相手は小隊長よ!! 新人が敵う訳ない!!」

「新人とか隊長とか関係ない!!」


 リドリアからの激の籠った発言にリドリアの声が喉の奥にまで引っ込んでしまう。


「リドリアは俺にとって大切な仲間だ。それを物みたいに扱って、軽々しく見て……俺はそんなアイツが許せない。一発殴ってやんないと気が済まない!! ……なんて乱暴だけど、それが俺の気持ちだ!!」

「黒葉……」

「春山君……」


 黒葉は立ち上がり、もう一度自分を鼓舞するように決意の言葉を口にした。


「俺は勝つよ! 俺を認めてくれたリドリアのために。森本小隊のために!!」

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