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PURGEー13 インターホン!!

 森本小隊の初任務が終了して数日が経過した。最初の仕事が上の想定以上に大事の仕事になってしまったためか、この所は仕事の要請もなく、休息日を取っていた。


 この日、黒葉は妙に体力が余っていたからかいつもより少し早めに目が覚めてしまい、これからもう一度寝るには時間が微妙だという事で朝の仕度をすることにした。

 着替えを済ませて部屋を出た黒葉が廊下を歩いていると進んだ先にある空き部屋の扉が開き、部屋の中から明かりの光がこぼれていた。


「あれ? あの部屋なんで電気がついて」


 部屋の中を興味本位で覗いた黒葉が見たのは、部屋の中に置かれたトレーニング器具によって鍛えているリドリアの姿があった。これまで目にしたことのないスポーツウェア姿に黒葉はふと足を止めて見とれてしまう。

 後ろ上側に丸く纏めた髪と同じ色の青いスポーツウェアにぴっちりと張り付き、歳の割に豊満に育ったバストやヒップはもちろん、鍛えられて適度に細くなったウエストと魅力的なボディラインを余すことなく曝け出し、更に滴り落ちる汗がその魅力をより引き上げている。


 そんな筋トレに集中していたリドリアだったが、黒葉からの視線に気が付いたようで持っていたバーベルも床に下ろして話しかけてきた。


「黒葉? 今日は早いのね」

「ああ、なんか邪魔したみたいでごめん」

「別にいいわよ、ちょうど休憩取ろうかなって思ってたし」


 汗をタオルでふき取り部屋の中に用意されたベンチで水分補給をするリドリア。黒葉も隣の座りながら彼女に早速問いかけた。


「この部屋、確かこの前空き部屋だったよな」

「ええ。でも小隊長に頼んで用意してもらったの。アンタも鍛えたくなったらいつでも来なさい」

「ああ、ありがとう。でもどうしてまたこんな朝早くに?」


 黒葉からの問いかけにリドリアは視線を少し下方向に向けて素直に答えた。


「この前の初任務で反省したの」

「反省?」

「小隊長も黒葉もちゃんと戦えて活躍していたけど、アタシは何の役にも立てなかったから」


 黒葉はリドリアの言い分に目を丸くした。


「役に立たなかったって……そんなことないだろ!? スライムを最初に発見したのはリドリアだし、後から聞いた話じゃ、俺が追い付くために拾ったスライムのかけらは、リドリアが切り裂いて出来たものなんだろう?

 役に立ってないことなんてないよ。むしろリドリアの行動がなかったら俺こそ何も出来なかった」

「黒葉……」


 黒葉の優しい台詞が胸に染みるリドリア。だが例え彼の言い分が正しかったとしても、繋ぎしか出来ず自分で結果を出せなかったことは彼女にとって気になるところがあるらしい。


「情けないわね。同情までされちゃって」

「同情だなんてそんな! 俺はリドリアに感謝を」

「いいの。今の言葉は嬉しかったわ。でも、アタシはもっと自分で結果を残さないといけないの。アイズ家の令嬢として」

「リドリア……」


 その後、黒葉はリドリアに何と声をかけていいのか分からず、かといって筋トレの邪魔をするのもいけないと判断してトレーニングルームから退出した。

 悩みを抱えたまま居間にいる黒葉だったが、リドリアの悩みに対してやはり思うところはあるようで、何か励ます手立てはないものかと考える。


 とはいえど余計な事をしてリドリアの気に障ればそれこそいけないと、どう動けばいいのか悩んでいた。頭を抱えていた黒葉だったが、ここに来て突然インターホンが鳴り響いた。


「え? こんな早い時間に誰だ?」


 早朝にわざわざインターホンを鳴らしてまで呼び出すとなるとただ事ではないのかもしれない。黒葉はリドリアは筋トレ中、信乃はまだ起きてないこともあって自分が出るしかないと家の中の宅配モニターを見た。


「は~い……って、あれ?」


 モニターの画面には何も映っていない。最初はピンポンダッシュかと思った黒葉だが、こんな早朝だと子供もまだ学校に通う時間ではないだろう。

 どうにも気になった黒葉は玄関にまで移動し扉を開いて外に出た。だがやはり外に出ても周りには誰もいない。


「やっぱり子供のいたずらか? ……ん?」


 思った事を口にして頭の中で片付けようとしていた黒葉だったが、家の敷地から出て周りを見回した際、道の端にて微かながら不自然に飛び出ている謎の物体が視界に入った。


「何だあれ?」


 興味本位で近付いて見えてきたのは少し捻じれた黒い物体。形状からして角のように思える。ならば生き物なのかと慎重に近づいて角を曲がると、そこで見つけたのは震えてしゃがみこんでいる一人の少女だった。


 褐色の肌に赤紫色のボブカットの髪をし、日本人である黒葉から見て俗に言う創作作品の悪魔のような角を頭から二本生やしている。

 だがそれ以上に黒葉の目を引いたのは、これまた創作作品の優等生キャラクターがかけていそうなぐるぐる模様の丸眼鏡だった。


「え、ええっと……君がさっきインターホンを押したのかな?」


 奇妙な恰好とポーズをとる少女に少々戸惑いつつも声をかけると、相手の方は声をかけられて初めて近づかれている事に気が付いたようで、大きく驚きながら尻餅をついてしまった。


「ヒャッ!!」

「ああ、ごめん。そんなに驚くと思ってなかった」

「ああ、いえ……ボク……いや、ワタシが悪いので……怖くて、逃げちゃって……」


 片言な一人称を口にしてどうにも震えている少女に黒葉が首を傾げていると、彼女は震える右手に持った封筒を黒葉に差し出した。


「こ、これをアイズ隊員に……と頼まれました」

「リドリアに?」


 黒葉がとりあえず封筒を受け取ると、少女はおもむろに立ち上がって急いでこの場を立ち去っていった。まるで詮索されたくないようなそぶりに黒葉はつい目で追ってしまうも、すぐに彼女の姿は見えなくなった。


「何だったんだ? 一体」


 黒葉はとりあえず受け取った封筒を見るも、リドリアに向けた手紙のためにここで開けるのは止めておき、家に帰ることにした。

 この封筒がさらなる騒動の引き金になるとは、この時黒葉は思いもしなかった。

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他の『FURAIBO《風来坊》シリーズ』の作品もよろしくお願いします!!


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