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続編のない短編達。

彼女は竜の血を継いでいます

作者: 池中織奈


 この世には竜と呼ばれる絶対的な強者がいる。その血を引く竜族は特別な存在である。

 竜の血を引く者は愛情深い。それこそ自分の唯一が亡くなれば、自死することをいとわないほどに。






 そのため竜の血を引く王家が治めるフレーダス王国では、竜の血を引く者とその唯一に定められた者への保護と見守りの制度が確立されている。




 さて、フレーダス王国では竜の血を引く者は尊ぶべき存在であり、神格化されているといえるだろう。それは国民たちが竜の力というのを目撃することが多いからというのも大きな理由である。






 ……しかし、その力を示さなければ竜の血を引くという意味を人々は理解しないものである。




 それこそ本来ならば竜の血を引くものがほとんどいない国ではなおさらだ。






 フレーダス王国から、国を三つほど跨いだ先にある一つの王国。

 その王都にある学園に通う一人の少女。

 ――赤みがかった茶髪の髪を二つに結び、黒縁眼鏡をかけた少女。

 彼女の名は、フィディラ・ソルディーン。






 ソルディーン公爵家の娘である。ただし彼女よりも、従姉妹の少女、ツィアンナ・ソルディーンの方がその学園では存在感を露わにしている。






「フィディラ!! あなた、ソルディーン公爵家に連なるものなのになんて地味なのかしら。そんな身なりでは結婚相手など一生見つからないでしょうね。あーあ、どうしましょう。いつまでたっても居座られたら」

「それはあなたが心配することではないわ」





 ツィアンナは、美しい金色の髪と藍色の瞳を持つ。この国では金色は特別な色とされている。それは精霊が好むのがその色だからである。

 ツィアンナはその金色の髪を持つこともさることながら、見た目が大変可愛らしかった。この国でも有数の公爵家の者というのもあり、多くの人々に囲まれていた。

 フィディラのことをよほど気に食わないのか、ツィアンナはよくフィディラにこのように話しかけていた。その後ろには取り巻きである令嬢たちの姿がある。それに対してフィディラは全く怯える様子もなく淡々としている。




 ――その淡々としている様子が、ツィアンナにはより一層気に食わないことだった。




「あなたね!! 両親が亡くなったあなたを育ててやっているのよ。公爵家に置いているだけで感謝を――」

「私が成人するまでは公爵家に置くようにというのは王家との取り決めだから、そのように言われる筋合いはないわ」




 そう、彼女の両親は既に亡くなっている。




 先代公爵当主であったフィディラの父親は、とある事件により死亡。そしてその後、間もなく他国から嫁いできた母親も亡くなっている。そして現在、公爵家を取り仕切っているのは先代公爵当主の弟の一家である。

 さて、その弟に関してはフィディラの父親のことを気に食わないと思っていた。それこそ優秀な兄と常に比べられ続け、両親からは当主の器ではないなどと言われ……、かろうじて生活するだけの援助は得ていたもののそれだけだった。





 それなりに見目の美しい女性と結婚したものの、フィディラの母親の美しさに比べるとどうしても見劣りをしていた。




 公爵家当主としての地位も、そんな美しい妻も手に入順風満帆な兄のことを気に食わなかった弟はその座が手に入ったことを喜んだ。嘆かわしいことに、フィディラの母親は亡くなっており、手にすることはできなかったが当主の座を手に入れられたと喜んでいたわけである。

 ……さて、そんな気に食わない兄の娘がフィディラである。

 その妻も、娘であるツィアンナも彼女のことが気に食わなかった。彼女を虐めぬこうと、そんな性悪なことを考えていたわけだが――、






「話がそれだけならもう行くわ」

「ちょっと、待ちなさいよ!!」



 フィディラはやられっぱなしの少女ではなかった。





 両親が亡くなった、齢七歳の頃から大人びていた。叔父夫妻やツィアンナが何かを起こそうとする前に、さっさと自分の生活環境を整えていた。

 基本的に彼女は、周りに対しての関心がほとんどない。それこそ、ツィアンナ達が何をしようとも、どうでもいいとばかりに受け流される。ただしやられっぱなしというわけではなく、自分の生活に不便が生じると徹底的にやるような、そういう少女であった。




 叔父からしてみると、どうしてあの兄夫婦からこんな子が産まれたのだと嘆くばかりであった。フィディラの両親は、明るい性格をしていた。いつだって生き生きとしており、周りから慕われていた。

 ――そういうフィディラの母親だからこそ、叔父は惹かれていたのである。ちなみにそれをツィアンナの母親は察知しているので余計にフィディラに対するあたりが強いのかもしれない。





 もしフィディラが母親に似ていれば、叔父からの扱いはまた違ったかもしれない。





「フィディラ様だわ。あの年で婚約者もいらっしゃらないのでしょう?」

「お可哀想に」





 フィディラに同情している生徒達は学園内に居るものの、フィディラに手を伸ばそうとするものはいない。

 そもそもの話、彼女と親しくなろうと話しかけられたところで淡々とした返事がされるだけであり、結局離れていくものの方が多かった。




 フィディラに婚約者が居ないことに対して、周りは叔父夫婦に冷遇されているからと思っているらしかった。――実際にはその事実はないが、そんなことは周りは知らないのである。

 今日も今日とて、フィディラは叔父家族の言葉を聞き流し、ちょっとした嫌がらせにはそつなく対応する。そしてただ学園生活をのんびりと送っていく。




 彼女は時折、図書館へと顔を出す。




 本を読むことが嫌いではないのか、それとも叔父家族のいる家に帰るのを嫌がっているのか、よくこうやって本を読んでいたりするのである。

 ちなみにだが、彼女に対して家事を押し付け、使用人のまねごとをさせようと叔父夫婦はしていたが――そんなものを聞くような存在ではフィディラはなかった。さっさと受け流して、対応し、今の生活を謳歌している。





 自分たちの思い通りにならないので余計に気に食わないと、彼らは思っているようである。しかし何をしたとしてもフィディラは揺らがないというか、大人しく虐げられたままという状態にはならない。

 フィディラは図書館で本を読んでいる時も、基本的に無表情である。まるで感情がないのではというように――いつも通りである。図書館でよく彼女を見かける生徒は、「何のために本を読んでいるのか分からない」と語る。それだけ楽しんでいるようには特に思えないからかもしれない。

 ツィアンナがフィディラに悪感情を抱いていることもあり、無表情である彼女をどうにかして動揺させることが出来ないかと、子供じみたことを行おうとする生徒も居た。ただしそういう生徒に関しても全て華麗にあしらわれている。




 ――フィディラは学園内で腫物のように扱われており、親しくしている者など居ない状況が続いていた。




 虐げようとしても虐げることのできない。

 そんな不思議な存在の感情を動かせる者などきっと居ないだろうと思われていた。

 ――しかしである。驚くべきことにそんな彼女が親しくする存在が現れた。

 それは彼女やツィアンナにとって後輩にあたる少年である。眼鏡をかけており、いかにも真面目そうなこげ茶色の地味な少年。



 ……なぜか、真面目に図書館で勉強をしているその少年、スェルマンに興味を抱いたようだった。




「フィディラ先輩、今日は何を読んでいるんですか?」



 そう言って臆することなく話しかけてくるスェルマンに、フィディラは返事をする。




 スェルマンが彼女と仲良くなれたのは……誰もが近づこうとしないフィディラに何度も話しかけていたからかもしれない。

 フィディラは少しずつスェルマンとよく話すようになっていた。




「スェルマン、この本、読んだらいいと思う」




 そう言って自分から話しかけることも時折ある。

 そうやってフィディラが自分から話しかけることなど、これまでなかった。

 それでいて図書館内だけではなく、それ以外の場所でもスェルマンはフィディラにすぐに話しかけたりするので、それはもう目立っていた。





 ツィアンナなどは、彼女の傍に誰かが近づくことを気に食わない様子である。




「どうしてフィディラに近づく生徒がいるのよ……!」




 ツィアンナがそう口にする理由と言えば、彼女に近づく者が居ないようにと手を回したからである。

 従姉妹であるフィディラのことを気に食わなくて仕方がないツィアンナ。何をしたとしてもいつも素知らぬ顔で、ツィアンナのことを気にもしない。





 だからこそ、フィディラの顔を歪めたいというか、苦しませたいなどとそんなことをツィアンナは思っていたわけである。





 公爵家の力を使って、孤立させていたのだ。

 それなのにスェルマンがフィディラに近づくことになったのは――、彼が貴族とはかかわりのない家の出だからである。

 この学園は王侯貴族が多く通っている。そんな中でスェルマンは、とある商会の三男という立場である。




 商会を継ぐ立場ではなく、自分の未来を模索していかなければならない立場だ。

 だからこそスェルマンは勉強熱心である。だからこそ図書室によく向かっているのだ。




 ――ツィアンナは、スェルマンに対して制裁をすることにした。




 フィディラと親しくしているからというそれだけの理由でそんなことをしようとするツィアンナ。中々理不尽である。

 しかし貴族と平民というのは、身分差が明確にある。貴族が平民に何かをして問題になることというのは、ほとんどない。

 フィディラの両親が亡くなった後、ツィアンナは公爵家の娘としてその権力を欲しいままにしていた。それこそ何かしらの問題を起こしても、家がもみ消すことが出来るぐらいには。

 ただまだ一線を越えるようなことは彼らはまだしておらず、そのこともあり特に断罪されるわけでもなくここまで至る。




 ――これまでフィディラは親しい者を一切作ってこなかった。公爵家に仕える使用人達とはそれなりに交流はあったようだが、その程度だった。

 だからこそ……ツィアンナは見誤った。




 彼女が親しくしている者に手を出されるとどんな行動に出るかというのを把握できていなかったのが運の尽きであると言えるだろう。

 その日、ツィアンナはスェルマンのことを呼び出していた。





「フィディラ先輩の従姉妹さんですよね? 何の用ですか?」




 そう問いかけるスェルマンの瞳は、何処か冷たかった。それは親しくしている先輩であるフィディラがツィアンナ達に冷たくされていると知ったからである。

 実家が商会でしかない彼がこんな態度を貴族にすることは、命知らずなことである。怯えもしないスェルマンの態度はツィアンナには気に障ったらしい。





「あなたね、この私に向かってなんて態度をするのよ!!」




 ツィアンナはそう言って大声をあげる。

 公爵令嬢としてこれまで好き勝手生きてきたツィアンナからしてみると許せないことである。




「本当よ。ツィアンナ様に向かってなんて態度なの!!」

「あの無表情で気味が悪いフィディラさんと関わっているだけあるわ」




 ツィアンナの後ろに居る取り巻きと言える少女たちに関しては、ツィアンナの機嫌を損ねないようにと必死である。




「フィディラ先輩を悪く言うのはやめませんか?」




 スェルマンが嫌そうにそう言うと、ツィアンナ達はまた不機嫌そうにその顔を歪める。




「あなたねぇ!!」




 自分に同調するでもなく、フィディラのことを庇うような言動にツィアンナは怒った様子で手を挙げる。そして――スェルマンのことをぶとうとしたその時、




「何しているの」




 冷たい声が響く。



 いつの間にかツィアンナの腕を掴んでいるフィディラの姿がある。




「ちょっと!! 何をしているのよ!! 離しなさい」

「駄目よ。だってスェルマンのことを叩こうとしていたわ」



 ツィアンナはフィディラの手を振り払おうとするものの、その力は強く振りほどけない。




「その男が私の言うことを聞かないのが悪いのよ!! いいから離しなさいってば!!」

「嫌」



 フィディラがそう答えると、周りの取り巻きの令嬢達も含めてフィディラをどうにかしようとする。だけど、それは叶わない。

 彼女はツィアンナの腕をつかんだまま、向かっていた令嬢達を軽く足で転ばせたり、蹴散らしている。






「ちょ、ちょっと、あなたこんなことをしてもいいと思っているの!! こんなことをするなんてお父様に言いつけてやるわ!! 私達があなたを養って――」

「言いつけても問題ないわ。勝手にすればいい。私の生活費は両親が残したもの。だから、あなたたちに養育はされてない」




 脅しつけられてもフィディラはいつも通りである。




 全く気にしていないという様子である。



「な、何を言って!! というか、あなた、こんな地味な男を何気にしているのよ!? まさか惚れているとでもいうのかしら。公爵家の血を継ぐ者が――」




 そしてそんなことを言われても、フィディラは特に動揺しない。




「そうね。それが?」

「は?」




 惚れているのか、という問いに躊躇せず答えられてツィアンナも含めてその場にいる全員が固まった。




「ちょ、ちょっとフィディラ先輩!?」



 当の本人であるスェルマンも何を言われているか分からないと言った様子であった。

 挙動不審な様子のスェルマンに、フィディラは声色一つ変えない。




「スェルマンは良い子。一生懸命で、勉強も頑張っている。それに私にも躊躇いもせずに話しかけてくる。あとは、瞳が綺麗。緑色の宝石みたいで、見ていて楽しい。笑顔も可愛いし――」

「フィディラ先輩!! 何を急に言っているんですか!?」




 フィディラはこれまでスェルマンに対してそういうことを告げたことはなかった。だというのに急にこんなことをいつも通りに言い始めるわけだから、スェルマンが戸惑うのは当然である。

 顔を赤くして文句を言うように声をあげるスェルマンを不思議そうにフィディラは見ている。




「聞かれたから答えただけだけど?」

「いや、あなた、そんな素振りいっさいだしてなかったでしょうが!!」

「私から話しかけていた。一緒に居ようとした。それで分からないの?」

「それだけだと分かるわけないでしょう!!」



 スェルマンは驚いた顔でそう告げる。



 確かにフィディラがそうやって誰かに近づこうとするのは珍しいことだった。しかしだからといってこんな風に好意を向けられているとは思っていなかったのだ。



「そうなの? スェルマンは嫌?」

「え、いや、嫌ではないですけど!」

「なら問題ないでしょう?」

「そうですけれど……えっと」




 マイペースな様子のフィディラに、スェルマンは調子を崩されっぱなしであった。




「ちょっと!! 何をいちゃついているのよ、あなたを幸せになんかさせないわよ! いい? フィディラ! 私はあなたのことがずっと気に食わなかったんだから、その男もまとめて潰し――」

「そんなこと、駄目よ?」



 フィディラはそう口にしながら、眼鏡越しにツィアンナのことを睨みつける。それと同時に彼女の身体に内封されている魔力が、その場に広がった。



 高圧的で、威圧的な魔力。

 それを受けて、腕を掴まれたままのツィアンナは身体を震わせ、座り込んだ。

 それを興味なさげに見たフィディラはようやく手を離した。




「スェルマン、私と結婚しよ?」

「あの、フィディラ先輩、まずは付き合うからじゃないですか?」

「じゃあ、それから」

「それにしてもツィアンナ様達は大丈夫なんですか?」

「問題ないよ。煩くなるなら、フレーダス王国に行く?」




 フィディラは軽い調子でそんなことを言うので、スェルマンは驚いた表情を浮かべている。竜の血を引く王族が治める大国の名前を突然出されて、驚くほかない。




「なんで、フレーダス王国?」

「私のお母様はそこの出身だから」

「え? ということは、竜の血引いてたりします?」



 スェルマンはフィディラの言葉にそう問いかける。




「そうよ。お母様はフレーダス王国の貴族だったから、私は竜の血が強いの。お母様の親族もいつでも好きな人が出来たら連れ帰っていいと言っていたから、連れて行こうかなって」

「なるほど?」

「それにスェルマン、フレーダス王国で研究したいってこの前言っていたでしょ?」

「それはそうですけれど……」



 スェルマンはそう言って、まじまじとフィディラのことを見つめる。




「フィディラ先輩って、案外、愛が重かったりします?」


 発言からしてなんだか、その気持ちが重そうで――スェルマンは恐る恐るといった様子で問いかける。





「ええ。だって竜の血を引く者は愛情が重いものだから。そういう人に出会うまではあんまりやる気ない人多いの」



 説明をしながら、にこにこしているフィディラ。



 他の人にはこういう風に笑いかけたりなどしないので、そのあたりは竜の血を引くものの本質が出ているのかもしれない。

 ……ちなみに途中でツィアンナ達が口出ししようとして、全て一睨みで黙らされていた。




「そうなんですね……」

「どのくらい重いかというと、私のお母様はお父様が死んだ瞬間に自分の首を掻っ切ってたわ」

「え」

「怖い?」




 恐ろしい発言をされ、固まるスェルマン。



 そう、フィディラの母親は夫が死んだその瞬間に自分の首を掻っ切った。それも娘であるフィディラの目の前で。

 普通ならトラウマになってもおかしくないことではあるが、彼女もまた竜の血を引く者なのでそれに対しては悪い感情は抱いていない。ただそれだけ母親が父親を愛していたというのを、実感しただけであった。




「び、びっくりはしましたけれど……。ええっと、フィディラ先輩も俺が死んだらそうなります?」

「なるかも。多分、このままどんどん好きになって、いずれそういう風にはなると思う」

「そうなんですね……」

「それでも私と一緒に居ようとしてくれる?」




 そう確認をするのは、竜の血が濃い竜族の恋愛沙汰は色々と厄介だからである。遥か昔だと気に入ったものを番だとかいって無理やり結ばれたりもあったらしいが、それはそれで問題も多々起こったので今ではこうやってきちんと意思確認はした上になっている。




 勝手に重い愛情を抱く竜族なので、その思いを向けられたものが恐れて去っていくこともあるのだ。

 ――そうなった時、耐えきれずに竜族が自死することもたまにある。




 彼女は珍しく国の外に出ている竜の血を引くものだが、基本的にフレーダス王国では竜の血が濃い者達は自死しないように周りから見守られている。その国の中でも竜の血が濃い者は限られているので当然である。

 彼女の母親が竜の血が濃いというのに、外の国に飛び出して子を成したのでフィディラの血もそれなりに濃かった。




「えっと……」




 じっと見つめられて、スェルマンは一瞬言いよどむ。



 どう返答しようか悩んでいる様子だ。そんなスェルマンのことをフィディラはただ見つめるまでだ。




「……俺は、そんな風にフィディラ先輩から好意を向けられるのは嫌じゃないです。寧ろ、綺麗だなといつも思ってましたし、俺も好きだなっては思うので問題ないです」




 正直言ってスェルマンは、フィディラから言われた言葉が嫌ではなかったのである。



 元々好意はあった。フィディラがそういう気持ちを自分に向けているなんて思ってもいなかったが、それはそれで嬉しいのでまぁいいかと思っているようだった。

 スェルマンの言葉を聞いて、フィディラは嬉しそうに笑った。






 ――そしてその後、すぐさま彼女はスェルマンを連れてフレーダス王国に向かうのであった。

 当然のことだが、彼女は愛しい者に手を出そうとした存在を許せないので、叔父夫婦と従姉妹には早急に報復した。



 そしてその地で彼女は重い愛情を向け続け、末永く幸せに暮らしましたとさ。


書きたくなって書いたものです。楽しんでいただけたら嬉しいです。


フィディラ・ソルディーン。

竜の血を引く竜族の少女。赤みががった茶髪。竜の血を濃く継いでいるため、基本的に特別が出来るまでは低燃費というか、あんまり自分から動かない。父親が亡くなった際に目の前で母親は自死した。特にそれに関しても「お母様はお父様が好きだからなぁ」としか思っていない。

魔力量も多く、力も強い。竜との相性もとても良い。両親が亡くなった後、叔父夫婦に家を乗っ取られている感じだが虐げられる気はないのでさっさと対処した。

フレーダス王国の者達に見守られている。本人が気にしていなかったのでツィアンナ達は放置されていたが、今回スェルマンに手を出されたので報復。


スェルマン

商会の三男。こげ茶色の眼鏡をかけた少年。勉強熱心。

跡取りではないので自分の将来を模索中。フィディラの事は綺麗だなと思って興味本位で話しかけてなかよくなった。あんまり物怖じしないタイプ。

実家の商会は他国にも影響力のあるので、ツィアンナが何をしようとも正直どうにかしようとは思っていた。(人脈はあるのでどうにでもする)

竜の血を引くフィディラに気に入られたわけだが、愛情が重いのを怖がったりするというより、フレーダス王国や竜族に対して興味津々。特に嫌がっては居ない。


ツィアンナ

フィディラの従姉妹。フィディラの両親が亡くなって公爵令嬢になれたと喜んで好き勝手していた。

フィディラのことを虐げようと思っているのに、虐げられなくてイライラしていた。これまで何をしても特に気にしていない様子のフィディラだったので、スェルマンに制裁しても問題ないと思って行動したら大変なことになった。




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シンプルに面白いと思って、作者ページ飛んで作品数見て震えてます。 執筆グループかな?
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