第十二話 妖精騎士アイギスさんと花園城塞キレッキレッエルフ対決(1)
女の子同士でしか子供を成さない女猫妖精の聖地。
わたしアイギスと仲間達は、その中心にそびえるお城、花園城塞に辿り着いたんだけど……
辿り着く間際に核兵器の光とキノコ雲。
着いてから更に遠方で核の炎が見えるの。
その前にはフリュドラさん達の集落がクソエルフどもに襲撃されてるの。
そしてわたしの見た目ってエルフなんだよね。
回りを女猫妖精の人達に包囲されてるこの状況がよろしい訳がないっていう。
「ざっけんなよ! このエルフども! 死にに来たか、ああ!」
「やんのか! やんのかコラぁ! この妖精騎士、アイギスさん舐めんなよ、あぁん!」
何故かメンチ切りあってるの。いや、いきなり囲まれて、売り言葉来たら当然、買うよ。アイギスさん、冒険者なのよ。舐められたら終わりってご職業が本職なんだよ、わたし。
「ブッ殺してやるよてめぇ。のこのこどの面下げて来やがった、どデカい船浮かべて、バカスカ撃ちやがって、生きて帰れると思ってんのか!」
「知るかボケ! あの戦艦とは別口だよこの猫野郎が。なんで可愛い顔してそんな口汚いんだよ。わたしが抱いた幻想を返せ!」
そうなの、猫耳でね。綺麗な人達なんだよ。
けど、野生味が溢れててこのわたしの想像を打ち砕いて来るの。百合の楽園イメージが行方不明よ。
いや、こんなことしてる場合じゃないって判るんだけどさぁ。核とか撃たれてるこの状況で。
けど、ここで引くと一斎に襲い掛かって来るのが解るの。わたしの今まで修羅場くぐってきた経験って奴で。しかも面倒な連中も紛れてるし。
「あらあら、まさかこんな場面を見られるなんて僥倖ですね。これがメンチの切り合いですよね? 初めて見ましたわ」
「良く、知ってるねアスタロッテ」
天使王と魔女王の娘なのに、なんでそんな事知ってるのか分かんないけど。聖魔帝国のお姫様でしょ。やんごとなき過ぎるお方じゃないの。魔神将が言ってたけど。
「あぁ! なんだてめぇは、人間、人間か! すっこんでろ、ブッ殺すぞ」
「本当に可愛い子猫さんですね。それでアイギスさま、どうします? 手早く済ませた方が、良いと思いますけど」
「方法ある? ――黙ってろボケぇ! 話し合いしてんだよ。てめぇの方こそスッコンでろ」
「でも襲って来ないのはさすが野生の勘ですね。これが本能的な長生きタイ――?」
アスタロッテが話してる途中で前に聞いたビーという音が鳴り、アスタロッテの近くの中空に映像が投影される。
「なるほど、そういう事ですか。では、お時間ないので手早く――〈魅惑の波動〉」
言うが早いか、アスタロッテを中心に精神波動が周囲に衝撃波のように奔る。
囲んでたフリュドラさん達に、ちょっと遠目に見てたフリュドラさん。怯えた目で見てた子供のフリュドラさんなど、関係なく全員が一様に呆然とした表情に変わった。
「仕事早いね、アスタロッテ」
「お褒めに預かって、嬉しいです」
「いや、頬を赤らめなくて良いけど、紛れ込んでるのどうしよっか」
「それも手早く始末しましょうか。タイミリットが2時間ちょっとなので。はい、では、皆さんブッ殺してください」
アスタロッテの命令で、女猫妖精の姿に魔法で偽装してたエルフ連中が次々に周りに居たフリュドラさん達に血祭りに上げられる。一切容赦がない。
アスタロッテがやらせてるけど。
完全に魅了されてるから抵抗もできないんだよね。
女猫妖精さん達の爪で輪切りにされたり殴られたり、石斧で頭かち割られたり。
唐突な暴力シーンだよ。
けど、コレやると面倒ごとならない?
「アスタロッテ。城の前でやると警戒されない?」
「いえ、むしろここに皆さん集まってたと言う事は曲者が紛れ込んでるのを認識してますね。代わりに始末つけたので喜ばれますよ」
フリュドラさん達を魅了して? と言っても方法がなかったのも事実なんだよね。
エルフ3人いるわたし達がいきなり行ったら殺気だってるフリュドラさんと揉めるのが解りきってる。
だから、ザランバルのクローン体を先触れに行かせたんだけど、話しも聞かれずにブッ殺されるし。
わたしは取り敢えずザランバルのクローン体(遺体)に〈死者復活〉の魔法を掛ける。
哀れにも踏まれた押し花みたいになってたクローン体が息を吹き返して、2本の緑の触手をいきり立たせて復活した。
『おのれぇい! 雌猫どもゆるさんぞ! 神祖の妖精王さまがお出でになったから謹んで出迎えろと吉報を持って来た我を、よってたかってなぶり殺すとは!』
「許してあげなよ。向こうもそれどころじゃないって状況なんだから。あと、おまえフリュドラさんと揉めてたの忘れてたよね」
繋ぎ役任せたのに、瞬殺されるから唖然とするわ。
仕方ないのでアスタロッテと二人でそれとなく強者オーラだして乗り込んだんだけど。あの状況になるから内心どうしようかと。エルフの侵入部隊とかも紛れてるしさ。
そして、わたしは改めてフリュドラの聖地の城を眺めた。
花園城塞って聞いたけど、外観は武骨な黒光りする建物なんだよね。ジャングルの奥地にこの城ってかなり違和感あるんだけど。
古ぼけた印象はなく、最新鋭の要塞って感じがした。昔に建てられた城とはとても思えない。
そしてその城門が開いて、服装が綺羅びやかなフリュドラさん2人に、2足歩行する機械に乗った、ちっこいのが来た。
済まん、ちっこいと言ったけど近づいて来たらわたしの頭一つ分、身長低いくらいだったわ。
そして、その機械に乗った背丈低くて、口許をマスクで覆った男が口を開いた。
「助かったでござる。正直どうしようかと。神祖の妖精王さまでございますな」
「知ってんの?」
「無論でござる。拙者、ル・フェインと申すもの。時間がないので城内へ。急いでくだされ。あの戦艦に乗った連中が後2時間で核攻撃して来るでござるから」
「マジか、あのクソども。2時間と言わずに今すぐブチ殺してやるよ。アスタロッテ、念の為に皆を城に入れて。この城なら耐えれるんでしょ?」
「いえ、花園城塞の状況を知るまではお待ちくださいアイギスさま。ブチ殺すのは、その、あ・と・で」
とアスタロッテが笑顔でじらす感じに返答するの。うん、わたしも大概だけどこの子もおかしいよね。
「何か手があるの?」
「というよりこのままアイギスさまが突っ込んだら核が全弾発射されますわ。まだ、この城塞に辿り着けてない避難民も居ますけど……」
「Oh……我慢するぅ」
アイギスさん待てができる子。連中にかなりプッツンしてるけど、まだ理性保ててる。目の前来たらブチ殺すけどな。
「では、こちらへ。城内を案内しながら事情を説明しまする。フリュドラ達も中へ」
「オーケー。他にも仲間や合流したフリュドラさん居るからその人たちも中へ」
そして戦艦と睨み合う花園城塞へ。
わたし達は最短ルートで要塞の制御司令室まで案内されたのだった。




