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神祖の妖精王〜妖精騎士アイギスさんの冒険の日々〜  作者: フィリクス
第2章 暗躍錯綜のフェアリーテイルズ
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第十一話 妖精騎士アイギスさんと緑触妖精と女猫妖精と悪魔で天使なお姫様(7)





女猫妖精フリュドラ達の暮らすジャングル地帯――


私、〈光暗妖聖〉ことリネーシュ・ヴィネクト・ハウロンは配下の天使部隊と共に、フリュドラ達の集落を襲撃した飛空艇部隊と交戦状態になっていた。



『メーデー! メーデー! 駄目だ、墜落する。脱出できない! 浮力が保てな――ガッガ――』


戦闘飛空機エアファイター・ガンシップからの広域救難要請。それが通信機に繋いだイヤホンから聴こえてくる。


「やっと撃墜したか。時間が掛かり過ぎた」



私が連れて来たのは能天使と力天使が主体の天使部隊だ。


戦闘能力は、単騎で後進国を壊滅させる真龍10体分くらい。つまり未だ中世時代の後進国相手なら、国の二つや三つは潰せる戦力だ。


先進国の軍隊でも通常の戦闘飛空艇ガンシップと降下猟兵ていどなら問題にすらならない。一個大隊ていどの戦力では後進国でも潰せんぞ。


が、音速超えの戦闘機まで出されては、流石に手間取る。天使と言ってもいくら何でも音速では飛べないのだ。

(但し、上位の座天使以上には居るが)


そもそも、戦闘機など対人戦闘ではほぼ使わない代物しろものを出してくるからな。

音速で飛んで来てナパーム弾頭でジャングルごと焼き払うなど鬱陶うっとうしいにも程がある。しかも見えたと思ったら音速で過ぎ去って行く。

空間収納があるので装備を見た目以上に保有していて、継戦能力が違うことを初めて知った。母艦が居ないのに何度も旋回してやってくる。



結局、戦闘機は能天使の戦士パワー・ウォリアー装備の対空ミサイルで牽制しつつ、私の神聖魔法〈天の怒りディエス・イレ〉を掠めさせて撃ち落としたが……



「出てきた2機を撃墜した。他の戦況は? 支天使の司令官ドミニオン・コマンダー

『飛空艇6機をすべて撃墜。現在、下位天使部隊で残敵掃討中。各集落の安全は確保しました』

「飛空艇で連れ去られた救助対象まで損害を与えてはいないな?」


『救助後に墜落させました。撃墜した戦闘飛空機エアファイター・ガンシップへの部隊派遣はなさいますか?』

「放っておけ。フリュドラの救助が先だ。花園城塞一帯が核攻撃される可能性がある以上、あちらが安全とは言えん。オチュッグ達と連携して、避難民の捜索を優先しろ」

『仰せのままに』


しかし、通信を終えた私には漠然とした不安があった。フリュドラ達が襲われているのでやむを得ず助けてしまったが……



一旦、フリュドラの集落に戻った時にはもはや介入の機会を失ったことを知った。

危惧していた花園城塞一帯への核攻撃が2回……


と、先行して送り込んでいた能天使エクシアイの忍者から報告があったからだ。

それにデュヌーの戦艦と花園城塞との交信からタイムリミットが3時間だと知って。


「流石に3時間では今から花園城塞に辿り着いても何もできん。勝てる筈がないのに増援を出して来たが、やはり私たちの足止めが狙いだったか。やられたな」


「助けぬ訳にもいきますまい。義を見てせざるは勇無きなり、ともうしましょう、姫」

と、言って来たのは祖小人妖精ハイブラウニーの聖騎士タブ・ウェインだ。


フリュドラが襲われていた所を割って入り、飛び立った飛空艇を聖剣一つで落とすほど腕の立つ聖騎士だ。そのまま、我々と掃討作戦をともにするなど慣れた感じで戦闘に参加していた。

そして会って間もないのに馴れ馴れしい。



「やはり花園城塞にはそれだけのリスクを犯してでも手に入れたい物があると考えるしかないな。本当に卿はそれを知らないのか」

「申し訳ない。円卓騎士団に席があるとはいえ末席ですので。そもそも大概の任務で重要事は教えてくれません。『知らなければ、喋りようがない』と聞きましたな」


「そうか。例え知ってても無理に聞き出す訳にも如何いかないか……」


「お察しいただけるとは恐縮です、姫。ただ、言えるとすれば神祖の妖精王陛下に関係がある。森陽王には知られたくない。とは聞き及んでいます。……知られているのは明白のようですが」


「なるほど……タブタブ神はかつては神祖の妖精王陛下の臣下でしたか。……他にも何か聞き及びがあれば教えて貰いたい。どうやら森陽王は本気でことを構えるらしい。先じて対応できなければ無辜の民に犠牲がでかねない。なにとぞご協力願いたい、ウェイン卿」

「さて……」


すると、私の腰元までくらいの背丈の聖騎士タブ・ウェインが頭を捻るという具合に、首を傾げる。


これは本当に何かは知らされていないのかもしれない。実際、ただの護衛役がことのすべてを知る必要はない。知らなくても不自然ではないな。


「……封印されている"もの"を神祖の妖精王陛下に引き渡すまで、は聞いた気がしますな。それまでの護衛任務だった筈」

「そうか。なるほど……」


なら、引き渡しまでは滞りなく終わる。その神祖の妖精王が目的の城に向かっているのだから。

厄介なのはそのことをデュヌーが知らない点だ。

もはや、獲物を先じられては奴では成すすべはあるまい。


ただ、獲物を掠め取られたからと言って奴が引き下がる筈もない。奴に核兵器を持たせているのは形振なりふり構わない瀬戸際交渉で何かの奇跡が起こるのを万が一期待しているのと……


「やはり本命は紛争危機の演出か?」

「……? 何か相手の狙いが分かりましたかな、姫」

「……森陽王が、先ほど非常事態を国中に宣言したと聞いたので。やはり息子が核兵器を勝手に暴発させたことにする気らしい、ベルンベストの里の連中は道連れだな」


「捕虜の者たちのことですね。命令されてやったと。しかし、あれほどの非道な行いを上からただ命じられたからやった、とは本当に信じられません。我ら円卓なら反旗を翻す者が何人か出てきて招集つかないことになるのですが」


「貴国の円卓騎士団では命令を拒否できるのですか?」

「良心に応じて。命令拒否が許さる最大の理由でしょう。そもそも気に入らなければ戦いません」


おとぎばなしのような騎士団だ。妖精界からやって来て、騎士ロマンスを素でやってる連中、とは何処かで聞いたことがあったが、所属してる本人から聞くと真実味がある。


しかし、それが許されるのは何より強いからだろう。

目の前の聖騎士は、私と充分戦えるほど。つまり真龍10匹分に相当するな。最低でも。

強者というのは揃いも揃ってが強い。完全には統制が出来ないから円卓騎士団では、命令拒否も許されるのかもしれない。



「……お聞きしたいが、花園城塞にその円卓が二人居る。そして花園城塞は鉄壁の要塞。神祖の妖精王まで花園城塞に向かっている。これでは落ちない。と考えてよろしいかな、ウェイン卿?」


「いえ、城を外部から落とせなければ要塞内に侵入しての強襲揚陸戦という手がありますからな。いくら鉄壁でも針の穴くらいは空けれる筈。噂に聞くハイエルフの長老達が出てくれば話しが別では? 真龍の"太古エンシェント"並みの実力者揃いと聞きましたが」


「いや、おそらく長老達は出てこない。下手をすれば神祖の妖精王が出てくる可能性を考慮せざるを得ない筈。今、向かってるのを知ってるか解りませんがこの危険性は奴らにとっては大きい」



何より、天使王聖下の〈律命宣言プロディヴィデンス・オーダー〉のように致命的な権能を持っているような場合を考慮せざるを得ないはずだ。


神々の中には眷属に対する絶対の命令権を権能スキルとして持った存在もいたらしいから、すべての妖精族の祖先とも言える神祖の妖精王が持っていてもおかしくはない。


完全な命令権が森陽王にさえ効いてしまう可能性がある以上、迂闊な事はできない筈だ。ちなみに聖下のあの権能はずる過ぎる。耐性を持つ、というレベルでは貫通させて来るからな。種族とかも関係ないぞ。



「……下手を打てば長老たちの情報が漏れかねないのは森陽王には致命的でしょう。確実に策謀の材料に使われますし、戻ってきても仲間のままなのか疑わざるを得なくなる」

「なるほど、捕らわれた場合のリスクが怖いと。ただ、戦わずに侵入されて獲物を掻っ攫う可能性もあるのでは?」

「可能性はゼロではありませんね。ただ、私は被害の最小化が目的なので、獲物の有無についてはこの際、拘泥こうでいしてる訳では有りませんので」


それにもう、手遅れなのでどうにもならない。おそらくこの分だと亜精神バーギアンの娘辺りがいるのではないかと思うが、森陽王や神祖に渡すというのなら、そう悪い結果にはならないだろう。

魔女王とアスタロッテは駄目だが。

ただ、森陽王が本気で欲しているとは思えないのが気掛かりだが……



「なるほど……実に気高い方だ……騎士の忠節を捧げたくなる。では、問題は攫われたフリュドラ達ですな?」

「ええ、ですが核兵器で大陸の水源を破壊されるのも問題です。どれだけ被害が出るか」


「ふむ……しかし話しを聞くに、本当に水源地に核兵器を? エルフとはそこまで非道を貫ける種族なのですか。我らなら、事故で……とかは有りますが」

「事故か……なるほど。一つだけ私にも打つ手があるか」

「と、仰ると?」


私は聖騎士の疑問に答えず、通信機で乗ってきた母艦の特殊次元潜航艦に命令を伝達する。


「……そうだ。この辺り一帯の通信をすべて封鎖、妨害しろ。星幽界アストラルサイド、電波帯、光学通信、すべてだ。聖地に突入した戦艦と本国の連絡をさせるな」

『命令を受諾しますが、通信封鎖することのみ軍統合作戦司令部に通告しますがよろしいですか?』

「ああ、構わん。アスタロッテにも教えてやれ、説明しなくても奴なら判る」


通信機を切ってから私は聖騎士タブ・ウェインに説明した。おそらくこれが現状打てる最良の手段だと。


おそらく森陽王は確実に核兵器を撃たせる為に仕込みを入れてる筈だ。ただ、目的の物を手に入れる可能性もゼロではないので、時間設定は出来ない。


だと、すれば本国との通信連絡が怪しいと私は睨んだ。極限状況では本当に核兵器を撃つかは解らないからだ。


デュヌーの手に核兵器の全弾発射ボタンを持たせてることは確実な気がするが、果たして部下までその命令に唯々諾々と従うかは、これは分からない。


なら、そこに活路を見出すしかないだろうからな。


ただ、まさかあんなやり方で私が思い付いた手を実行に移して来るとは思いも依らなかった。

神祖の妖精王のこの世界での活動記録を知っては居たが……


キレっキレっであった。


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