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神祖の妖精王〜妖精騎士アイギスさんの冒険の日々〜  作者: フィリクス
第2章 暗躍錯綜のフェアリーテイルズ
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第十話 妖精騎士アイギスさんの妖精の里巡りと姫君修行(4)





戦闘で捕虜にした連中連れて、ルーメン氏族の里に辿りつく頃には夜になっていた。


午前中にマンドラゴラの族長に会って、昼過ぎに戦闘、戦った連中を捕虜にして、早めに転移魔法でおうち帰って家族の団欒だんらんを楽しみ夕食にして、今に至る。



さっきまで血流す戦闘やってた連中の行動じゃねぇ。と思った人は一般人。しくは荒事に向いてない。


普通の生活との割り切りできない人は冒険者稼業はできんのよ。冒険者は魔物討伐が主な仕事だけど、人同士の殺し合いも避けては通れないからね。


街の外で道歩いてたらイチャモンつけられるのなんてしょっちゅうよ。わたしがやけにやくざ者やゴロツキに詳しいのはそういう連中に絡まれまくってる経験あるから。


そして今日めでたく神祖の妖精王の跡目ついで旗揚げした最初のシノギなんだけど……



「これは上手く行くかわからんね……」

「最悪、血流れますかぁ」


と、ルーメン氏族の里が森の木々の間から一望できる小高くなった丘でわたし達は話し会ってた。


里に明かりなんてないから真っ暗。星明かりと二つの月だけが闇夜を照らしてるような夜。

静か過ぎるぐらいの静寂に辺りが包まれていた。


「これ、場合によっては向こうはやる気ってことよね。セレスティナさん」

「残った里の人達の頭数が86、残りの52が子どもや戦えない人、その護衛で逃げてますからね」

「時間与えたのが不味かったか……」


ルーメン氏族の里には戦闘で逃げ延びた3人に、こっちの意向伝えた2人も解放してる。戦いで勝っても、負けても意味ないって解ってくれたら良いんだけど……



「貴様らに我ら誇り高いルーメン氏族が屈伏するとでも思ってるのか」

戦闘で先ほどエルフの一隊を率いていたリーダーの男がいつの間にか目を覚ましてた。


「……一応言っとくと逃げ場ないけど。森の外は魔族の縄張しま。しかも、こっちは渡りつけれるよ」

と、わたしは聖魔帝国の外交官ルインに視線を送る。


「はい。我々との友好国ですので、交渉するのは容易いことです。情報を流せば狩り出されるでしょう」

「――貴様らっ! 魔族とさえ繋がっているのか!ハイエルフが聞いて呆れるわ。恥も外聞もないのだな」


「ごめん。魔族どころか繋がってるの正真正銘の悪魔の女王さま。今日、ちぎり交わしちゃった。きゃ」

と、わたしは悪戯いたずら心満載で茶化してみる。こんな時でもわたしの妖精気質が疼くんよ。


「畜生どもめっ! 交渉するという話しも嘘かっ!」

激高してくれる真面目そうなエルフの人。このアイギス、人を苛つかせて愉しむ悪い癖がある。


ただ、

「アイギスさん。悪い冗談は辞めてください。話しこじれますから」

と、真面目に戦神司祭のセレスティナさんにたしなめられるまでがワンセット。


でも、話しを聞いてたのにシャルさんが心配そうな顔を見せていた。

「アイギスさま。このもの達にもお慈悲を。このまま戦いになってしまうと犠牲が出るかもしれません」

「だってさ。森祭司のシャルさんに感謝しなよ。わたしだったらお前らブチ殺してるよ」


「その聖樹神の御使いが魔族どもと繋がってるのはどういう事だ。聖樹の末どもはそこまで窮したか」

「……ちょっと意味わからないよ。ちなみに繋がってるのは魔女王経由。あ、魔女王が悪魔の女王で……」

「アイギスさん。余計話し拗れます……」



一旦、ここでわたし達はエルフの隊長も交えて情報を整理しながらついでにこちらの事情も説明。まず、……わたしがどうして魔族がそこまで嫌われてるのかが解らなかったんだよね。


魔族って悪魔の血を引いた人間達でその昔、二千年まえくらいに闇の王ダークロード、今は神さまになってる暗黒神デイティオブダークネスが血を分け与えて生み出したとか言う種族なの。


で、千年前にこの大陸でその魔族達を纏め上げた魔王が現れて、他の国や種族を相手に戦争おっぱじめる。

結局、その戦いはシャルさんのお父さん含めた英雄御一行が魔王倒すことで収まるんだけど……



「で、お前らはその時の魔王との戦いで、この森に逃げ込んで来た氏族ってことなんだね」

「貴様らのように我らは悪魔に魂を売り渡しはせん。ベジどもよくも騙されたものだな」


「……補足いたしますと。アイギス殿下。この者達は当時、森陽王しんようおう陛下に見捨てられた者達の末裔ですね」


ルインが意地悪く説明したりするから半ば言い合い見たいな感じになってるよ。わたしもルーメンのエルフを心良く思わないから優しくしたりはしないけど。

ルインって丁寧な口調なんだけど言葉の端々に棘あるんだよね。本当に外交官か?



「悪魔は良くわからんけど魔族の人たちにも良い人いるよ。帝国で奴隷の人たちとか会ったことあるけどさ。気のいいおっちゃんとか居たし」

「神祖の跡継ぎなど聞いて呆れるわ。奴等のようなけがわらしい連中とつき合うとはな」


「悪いね。わたしはお高くとまってる貴族じゃないのよ。自分の目で見たことしか信じない。けど、聞いてる限りじゃ魔王との戦いってただの縄張り争いじゃん。それ下々しもじもの人たち関係あるの?」


「我らがどれほどまでに苦しめられたか知らぬと言うのだな。未だに呪いを受け、苦しむ者達も居ると言うのに」

「……袈裟まで憎いってか。解らなくはないけど……でも戦争ってそういうモンでしょ。おまえらマンドラゴラ相手にそれやってんだ。族長お怒りだぞ。族長が炎の魔神イフリートまで呼び出せるって知ってるの?」


「なに……馬鹿な。マンドラゴラごときが炎の最上位精霊を呼び出せる訳が…」



やっぱり知らなかった。そりゃ、森祭司ハイ・ドルイドのシャルさんが、妖精の揉め事が起こってるとこで、この森を真っ先に何とかして欲しいって言うよ。


マンドラゴラの族長、激怒して森を全焼させる気なんだもん。炎の魔神イフリートなんて真龍に匹敵する凶悪な精霊使ってさ。


植物系の妖精だからって森を過保護に大切にしてる訳じゃなくてバランス取ってるらしい。その森育てるのが使命なだけで。


杜妖精もりようせい――べジエルフたちは土から直接栄養取れたり、光合成できるから大概の種族が森自体は必要ないらしいよ。水の精霊とかの微精霊ウィスプなら簡単に呼び出せるらしいし。

もう大地があればなんとか、海とか水の中にいる種族もいるらしいから。


昔この世界の環境がヤバいことなっててそれを何とかするのが大昔の"私"から杜妖精たちに与えられた使命だったらしいから。いや、今も真面目にやってるらしいです。



「で、おまえらが先代の神祖に与えられたのがその森の守りと環境整えることだろ。仲間殺したら族長怒るに決まってるよね? そりゃ焼こうとするわ」


「仲間だと、魔王との戦いでなにもせずに見ていただけの連中が。炎の魔神イフリートさえ呼び出せるというのに奴等は何をしていたのだ」

「仕事してたんだよ。関係ないからな。"私"だったらそう命じるね。余計な争いに首突っ込むなって」


「貴様っ父祖を愚弄するかっ!」

「お前らを愚弄してんだよ。お前らの先祖の事情など知らん。それが役割ってマンドラゴラ達は思ってんの。あいつら森、育てる。おまえらが良い感じにする。亜妖精の役割なんだっけ?」



と、余計なことを話しの途中で考えるのがこのわたし、妖精騎士アイギスさん。ただ、シャルさんが答えてくれた。


「アイギスさま。亜精神バーギアンに連なる者たちに与えられた使命は戦いです。妖精たちに害なす者たちと闘うのが彼らの……使命でした」


「オーケー。忘れられてるの把握。別に良いよ。もうこんな状態じゃ使命うんぬんとか言っても仕方ないし。――ただ杜妖精たちはまだ守り続けてるのそれを」


そう。未だに守り続けてんだよね。"私"の言うこと。もう放り出しても良いような話しなのに……

ジェラルダインの言った意味。解ったよ。信仰を持ち続けてるって。

……そりゃ私を神と崇め続けるわ。



「…………」

「……連中にしてみればおまえらも仲間なんだよ。いや、家族かな。だから、この森に受け入れてくれたんだろ。それ裏切られたから大激怒よ。シャルさんに土下座するくらいに感謝しろ。この人居なかった今頃、お前ら焼け死ぬか路頭に迷うかだぞ」


エルフの男が黙ったのでわたしは森祭司ハイ・ドルイドのシャルさんの様子を伺う。


シャルさん、どうにかしようとして頑張ったらしいけど。このルーメン氏族の連中話し聞かなかったらしいからね。

いつもの儚げで、あどけない顔が曇ってるね。どうなるか不安に思ってるみたい。



「悪いけど……最悪考えるね。――ルイン。聖魔帝国の手借りたい。どのくらい数呼べる? 軍隊が欲しい」

「特殊作戦群1個大隊ほどを出動待機させています。兵員は約800ほどです。三十分ほどでこちらに到着、展開できるかと」

「早いな、おい。……転移魔法があるからか。でも、そいつら勝手やらない? 悪魔でしょ」


「魔女王陛下の御意を曲解する者たちではございません。精鋭と自負しておりますので殿下のご期待に必ずや応えるかと」

と、ルインが笑みを見せて答える。余程自信あるんだな。ただ、シャルさんが慌てるの。



「ア、アイギスさま。お考えなおし下さい。悪魔たちは邪悪な者たちです。それでは罪なき者たちまで犠牲になります」

ただ、そのシャルさんの肩にセレスティナさんが手を置くの。

「いえ、逆ですよ。シャルさん。だからこそアイギスさん兵隊呼ぶんです。数で威圧していざとなったら……」

「力押しでねじ伏せる。その方が多分犠牲少ないよ。話し聞かないなら止むを得ないでしょ。正直、ここだけに構ってる暇ないんだし」


ここと同じように揉め事起こって、危険信号ともってるとこがあと6箇所あるって聞いたよ。どこもこんな状況だと考えるとここだけに手をこまねいてる時間ないって。



「シャルさま。聖魔帝国の軍隊は近代軍です。非戦闘員をむやみに殺傷しない為の交戦規定もございます。悪魔とはいえご安心を。極力殺傷行為は控えさせますので」


「ですが……」

「シャルさんも解ってると思うけど……ルーメンの連中が馬鹿で詫び入れても族長抑えられないなら……どのみち制圧だよ。森焼かれたら他に迷惑が掛かり過ぎるよ」



はっきり言って皆殺しされても文句言えないだろ。と、思わなくもないよ?

家族殺されたら、殺った奴らモンスターと一緒じゃん。しかも裏切られてんだから尚更。連中で落とし前付けれないならわたしが付けるわ。マンドラゴラ殺った奴の首刎ねれば良いだけだろ。


……アーパ・アーバの爺さん悪いね。そう上手く妖精族を纏められないよ。出来ても杜妖精くらいだわ。



「じゃあ、ルイン。今すぐ呼んで。魔女王陛下にはジェラルダイン通じて感謝しとくからさ」

「はい。陛下もアイギス殿下にご助力でき光栄でございましょう――」

と、通信機を取り出すルイン。わたしも念の為貰ってる奴だ。大陸間でも魔法通信できるんだってさ。妨害されなきゃだけど。ただ、


「……待て」

その様子を今まで黙って見てたルーメンの隊長が口出しして止めて来たけど。


「なに、もう呼ぶの確定だよ。大分時間経ってるけど向こうから音沙汰ないし」

と、聞いた瞬間にルインが連絡取り始めた。

「……おそらく討ち死にする覚悟だ」

「正気とは思えねぇ……」

「我らの氏族は森陽王しんようおうにも背き魔王と戦った誉れがある」


「きゃは。今度は一番くだらん理由で戦うことになるよね」

「アイギスさん!」

「…………マンドラゴラを殺ったのは族長の息子と悪たれどもだ。引くに引けん」

「……本当にくだらん理由だな……。で、お前解放したら何とかできる?」


「条件はなんだ?」

「族長に詫び入れて許しを請え。全力で、だ。とにかく手打ちに持っていけ。仲介はするけど手伝わん」

「悪魔と手を結んでる連中が出すとは思えん条件だ。何が狙いだ?」



「……わたしの名声狙い……? 神祖の妖精王の跡継ぎだから」

と、わたしは自信を無くしてキョロキョロと仲間達を見る。うん。そう言うことだよね。

連絡を付けたルインが頷いたので多分あってる。


「……補足致しますとそれ以外に理由は有りません。森陽王に対する対抗馬と申し上げればご納得頂けるでしょうか?」

「悪魔と手を組んでまでか……正気とも思えん。……が、早くせんと我らの氏族が森に火をつけかねん。それがお前らの条件なら祖ルーメンに誓って里の者を説き伏せよう」



わたしはシャルさんにお願いして隊長の男を拘束してる魔法の蔦を解いてもらう。黙って里に向かうエルフの男の背に声を掛けた。


「氏族で呪いを受けてる奴の解呪も必要なら請け負ってやる。頼むぞ」


隊長の男は一度立ち止まったけど、そのまま里に降りて行った。本当に頼むぞぉ。こんな力押しの瀬戸際交渉、失敗したら終わりなんだからさ。



そして、隊長の姿が里に降りて見えなくなったのと前後して、聖魔帝国の駆逐艦3隻が星幽界を渡って夜空に空間跳躍ワープアウトして来た。


駆逐艦から更に飛空艇が飛び出して来る。 その数20艇以上。両翼に機関銃を装備してる。


おまえらその過剰戦力は聞いてねぇよ。


里の周囲に悪鬼デーモンや悪霊たちが着陸した飛空艇から現れ、里の包囲が瞬く間に完了していた。



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