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神祖の妖精王〜妖精騎士アイギスさんの冒険の日々〜  作者: フィリクス
第1章 星幽界の彼方から求めて
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第一話 妖精騎士アイギスさんの村人救出作戦(6)



そして、今、森の深奥で、真の王者を決する戦いが――


「ストップ! わたしの戦闘脳、ステイ! ボス戦みたいな状況だけど、まだ戦うには早い。落ち着け、落ち着け。クールダウン」


わたしは声に出して自分を諌めた。最後に出てきた強敵の雰囲気に流され、つい戦おうとしてしまったがその前に選択肢が残されている。


というのは、樹木妖精トレントは見た目が植物系モンスターみたいだが、知性を持つ妖精種族の生命体だ。それに自分の縄張りに侵入して来た、村の子供を攻撃せず守っていた節がある。


なら、話し合いの余地がある…?

と、わたしは戦闘民族の血を諌めた。ギリギリで気付いたのだ。偉いぞわたし、我慢ができる子だ。しかし……一抹…いや二抹の不安がある。


が、動き出した樹木妖精トレントから攻撃してくる気配がない。わたしはその様子を見て取り、交渉を試みる。


『 森の妖精トレントの長老よ。わたしは妖精騎士アイギス。貴殿はこの森に逃げ込んだ村の子供を保護してると伺うが?』


と、警戒しつつ〈妖精言語〉で声音こわねを大きくして尋ねる……しかし、反応がなかった。


ふむ……通じてない?

けれど前に樹木妖精トレントに会った時は通用した……わたしは諦めずに何度かアレコレと語りかけてみる。


子供を守ったかも知れない優しい妖精を殺すというのはちょっと避けたいのだ。


するとやっと巨大な樹木から反応が返って来た。


『おお、おお、小さき者よ。我は古き樹木。太古の樹アルガドラスの枝葉。汝は何処いずこよりの新芽たるや』


……反応はあった。

然し、わたしの不安的中。樹木妖精トレント達は基本的に出身氏族を身分の証とする。これはエルフも同様だ。でも、わたしは身分証明不可のなんちゃってエルフだ。


『わたしは神祖の妖精王に連なる者。氏族は持たぬ』


正々堂々と言い放つ。別に嘘は言ってないぞぉ。流石のわたしも王様ですと言い張るのは気恥ずかしいので、血縁設定で。某、暴れん坊将軍も身分を隠す為に親戚の身分使ってたりしたと聞くよ?

なら、わたしも何もおかしくはない。御忍びの妖精騎士アイギスさんだ。姫君扱いを許すぞ。


『……おお、ぉぉ、まさか、まさか、まさか! 我、吾、藁、の、望む、望むあああっ!』

『……不味い、やっぱりしくじっちゃった…嫌な予感してたしなぁ……』


樹木妖精トレントの様子がおかしい事に気づいて、わたしは諦観と共に身構えた。前に出会った個体と似たような反応だ。会話はある程度できるのだが……"狂ってる"のだ。


『おぉ! 我らが我らが、永遠の主! 希望の霊!絶望より先にして、暗闇より尚、奥底に揺蕩たゆたう我らが主よ! 我らを罰し給うたか。いと慈悲深き汝の葉は我らへの御慈悲たるや!?』

『落ち着け。樹木妖精トレントの長老よ。汝の罪は赦されよう。子らを守りし慈愛に免じて……』


と、狂い始めた樹木妖精トレントにどさくさに紛れて何とか会話を成立させようと頑張るわたし。諦めたらそこで試合終了ですよ。


兎にも角にも子供の安否が最優先事項だ。この際、最悪遺体で構わない。死者復活の魔法は余り使いたくないが、わたしの失敗で死んだらちょっと見過ごせない。


まぁ、最初から"狂ってる"相手なので完全にわたしのミスとは言い難いが…


話しに聴くと樹木妖精トレント達は千年前だか二千年前の魔王だとか闇の王との悲惨な戦いに巻き込まれ気が狂ってしまったらしい。


森が焼かれ、川は毒にまみれ、森は瘴気に覆われ、ありとあらゆる呪いを受けるこの世の終わりのような戦いに樹木妖精トレントは疲れ果てその精神に異常をきたしたんだとか。


「以来、森に住む樹木妖精トレント達は殆ど精神異常者だとか。吟遊詩人のおっちゃんが言ってた。エルフの森にいるのはまともらしいけど」


と、わたしは助けた女の子に状況を説明し始める。状況が切迫してるように見えるが、樹木妖精トレントの長老(多分)はうわ言のように喚き散らすだけで攻撃してこないので、その間にわたしは女の子のフォローをしてたのだ。


傷心の女の子を放置はできない。野郎共にはこんな繊細な気遣いできんだろう。わたしを褒めよ。

そして、ボケ老人のように一方的にまくし立てる樹木妖精トレント爺さんとの会話も欠かさない。


『おぉおぉ、神祖の妖精王は未だ我らを見捨てなんだか、然し、然し、然し! 太古の我らの祖の行いは赦されざる。アルガトラス、ヴィネージュ、バーギアン…我らは罪人つみびとぞ…報いを、報いを! 我等は連環にる資格なし、あぁァァァ!』

『はいはい。お爺さん駄目ですよぉ〜気をしっかり持って。神祖の妖精王さまは全てを赦されます。貴方の罪を告解するのです。わたしが陛下に成り代わり汝の罪を聴き届けましょう』


……途中から会話の方向性が痴呆老人の介護みたいになってるが、何とか会話を成立させ続ける。

わたし、アイギス。DARK悪魔との会話を得意分野に入れても良いかもと思ってる。


ん〜話しを纏めると、先祖が神祖の妖精王に対して罪を犯して、魔王だか闇の王にやられた酷い仕打ちと、守りきれなかった森や仲間に対する後悔が贖罪を求める感じになってる? わたしがやられた記憶がないから他にも神祖の妖精王が居た感じか?


「あ、あの。アイギスさま。あ、赤ちゃんとアル君は一体…」

「大丈夫。任せてください。ただ、おそらく戦闘になるので隠れていて下さい。この盾を持って」


と、わたしは手持ちの盾ではなく空間収納から取り出した自動防御機能付きの神盾を渡す。


ゲームの世界で手に入れた逸品でかなりの高性能な盾だ。防護対象の周囲を浮遊し、核攻撃魔法さえ完全に対象をノーダメージで防護しきる。まさかあの爺さん熱核攻撃はして来ないと思うけど。


「さて、そろそろあの爺さんとの会話を伸ばすのも限界かなぁ……続けても子供の居場所吐かないし。引導を渡すか。お望み通りに」


剣と盾を念の為、最強の物に持ち替えたわたしは決意する。会話を続けていたが段々あの樹木妖精トレントの爺さんが可哀想に思えて来た。


「あ、あの!」

「?」

「が、頑張って下さい! 赤ちゃんとアル君を助けて下さい。お願いします」


と、勢い良く頭を下げた彼女にわたしは笑顔で応え、背を向けた。

さて、戦うに十分な理由ができた。後顧の憂いなしだ。さ、やるぞー。


『よろしい。樹木妖精トレントの長老よ。汝の願いを聞き届けよう。神祖の妖精王に代わって戦場いくさばにて介錯致そう。されど最後に聴きたい。村の子ども何処いずこや?』

『おぉ、おお。我が老木が遂に尽きる時。神祖にして真祖の妖精王よ。その慈悲とお恵みに感謝を。子らは我が腹の中に』

『良い…。神祖の妖精王としての力、その一端を見せよう。冥途の土産ぞ。連環の果てで尚武を誇れ』


最後の最後に子どもの居所が分かったのは僥倖ぎょうこう

しかし、この爺さんもしかしたら……いや、もはや考えても無駄か。


後は決着をつけるのみ。生命を差し出せと言えば喜んで差し出しそうだったが、このアイギス、無抵抗な爺さんを斬るのは癪に障る。

戦いという形にして本懐を遂げさせるのが武人の情けである。


『では、尋常に、参る!』


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