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神祖の妖精王〜妖精騎士アイギスさんの冒険の日々〜  作者: フィリクス
第1章 星幽界の彼方から求めて
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第一話 妖精騎士アイギスさんの村人救出作戦(5)



やっと森の王者決定戦、第二ラウンドを制した。

最初の戦いと違い、少し手強くなってるから厄介だ。勿論もちろん、この最強のアイギスさんの敵ではないが、鬱陶しいものは鬱陶しい。


大量の藪蚊に絡まれたら普通の人でも嫌でしょ?

そしてわたしはその藪蚊の駆除業者だ。冒険者としての熟練の技で手早く片付ける。女の子一人守りながらでも容易たやすい、容易い。まぁ倒しきるのに半刻(1時間)以上掛けちゃったけどね。


そして、チラッとその女の子の状態を確認する。生命反応は正常。因果逆転による〈存在回帰〉の魔法は正常に効果を発揮したようだ。


わたしは周囲を警戒しながら、服装から村娘といった感じの女の子に近寄る。


「わたしは冒険者ギルドから派遣されて来た、冒険者アイギスです。貴方を救助しに来ました」


と、お前誰だよ? と思われるくらい普段とは全く違う丁寧な言葉遣いで接する。冒険者稼業は舐められたら終わりみたいな所が有るので乱暴な言葉遣いをする人が多いが、わたしはその場の空気を読む。


家族や知人を殺されたばかりの被害者に冷たい態度で接するのは人の心がなさ過ぎる。まれにそれをやる馬鹿な冒険者が居るが。


「あ……ッ……」


わたしに問いかけられた子は何かを言おうとして口詰まる。コレが普通の反応。気が動転してたり、助かった安堵から言葉が出ないのだ。

いきなり助けられてペラペラ喋る奴とか居たら逆にわたしは警戒するぞ。前に助けたら、盗賊の仲間とか居たからな。子供だろうと油断ならん。


「大丈夫、安心してください。喋るのは後でもゆっくりでも良いので落ちついてください。喉が渇いてるなら飲み物でもお持ちしましょうか?」


と、我ながら完璧な態度で女の子に接する。これ以上ないと言う女性騎士らしい気遣いっぷり。…何せ気の迷いでつい殺っちゃた相手だ。復活魔法の後遺症とかない? 記憶障害とかは?

アイギスさん気になります。


「――あっ! あ! あの!」


が、そんなわたしの不埒な思いを余所に女の子はいきなり振り返り森の中の巨木をゆび指す。

樹齢千年と言われても納得しそうな大きな木だ。


彼女は言葉が出ないのか掠れた声で訴える。

わたしはその様子に警戒しながら、声を聴き取る為彼女に近寄った。


「あ――の木…中にあか…ぼうと子供がィ…す」


その声を聴き取った瞬間にわたしは一気に警戒度をMaxに引き上げた。鞘から剣を抜き放つ。

精神探知に反応がない…

例え死体だとしても死後数日は精神反応に残滓が残るので探知が出来る。

それがないと言う事は――異常事態!


わたしは咄嗟に盾を身構えて、女の子を背後に、巨木を睨みつけるように見据える。

完全に戦闘体制だ。

大袈裟かも知れないが、わたしは自分の直感を信じる。

何よりわたしの冷静な頭脳が、後から次々と今の状況を推察し、危険だと結論を出していた。


この村娘が今まで無事だったのは何故なぜ

どうしてこんな森の奥まで入り込めたの?

そして、どうして森の魔物たちが執拗にわたしを攻撃して来たの? 恨むならギルドマスターにして。いや、これは違うな。考慮対象から除外破棄――

精神探知からあの巨木から反応があるが少しおかしい、違和感が――


……ちょっと余計な考えも浮かぶが、概ね、わたしの明晰な頭脳が過去の経験と照らし合わせて結論を出していた。


――あれは"魔物モンスター"だ!


答えを得ると同時に巨木が動き出す。それまで微動だにしなかった巨木の根が鞭のように唸り、森の大地を蠢動しゅんどうさせる。巨木の枝が不自然に動きだし、まるで生きてるように脈動する。


もはや、ただの大きな木でない事は明白。

そして、わたしにはこの森の"主"であろう魔物に心当たりがあった。


「――"樹木妖精トレント"。しかも大きい…」


そう、森の妖精として知られるエルフに並んで森の住人として知られる存在。


ただ、わたしはこれ程大きい樹木妖精トレントをこの世界で見た事がない。


これは戦うのが厄介な相手だぞ、と覚悟する。


この最強の妖精騎士アイギスさんともあろう者が何を怖気づいてる。

と思うかも知れないが、要救助者三名を守りながらの戦いになるのだ。


いつも余裕なわたしもプレッシャーを感じずには居られない。そもそも初めて戦う相手が自分より強い可能性も有るのだから。


奇しくも森の王者決定戦の第三ラウンドが始まろうとしていたのだ。

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