第五話 妖精騎士アイギスさんと混血妖精の戦神司祭(3)
え? なにこれ。
多分、その時の状況は二人同時に同じこと思ってたに違いない。
なにせ転移魔法を使ったら。何かに当たるような感触がして二人一緒に縺れて、草むらに転がって……
地面に仰向けになってる私とその真上で押し倒してる感じになってしまったわたし……
わたし達は吐息がお互いの顔に掛かるような距離で二人一緒になって見つめ合って……出会った。
((え、なんで目の前に女の子がいるの?))
†
え? え?
とわたしアイギスは眼の前に女の子がいる状況に大混乱。
日が落ちて子爵領の賊共殺るのに良い頃合いだな。と思って転移魔法で飛んだら眼の前に女の子。
良しっ。ここまでの状況確認はオーケー。
も、問題は……
わたしがその女の子の真上に被さって草むらでうつ伏せになってること……
でね。じゃあすぐに起き上がれば良いじゃんと思うでしょ?
でも、駄目なの。その女の子に魅入っちゃって。
金髪で碧眼で、混血のエルフなのかなわたしより耳の長さは短いの。容姿はわたしより年上だけどまだ幼いって感じで……
わたしはゴクリと息を飲む。
状況を理解しながら動き出せなくて、目が離せないってこういう事を言うのかな……
でも、……可愛いからとかそう言うのじゃなくて……いや、すっごく可愛いんだけど既視感が……
†
私、セレスティナは混乱の極みです。
〈鮮血妖精〉さんに合いに行こうと思って、転移魔法を使ったらいきなり押し倒されてる状況です。
しかも私動けないんです。
もう、お互いの吐息が掛かるくらいの距離で顔が近いのに……何より眼の前から子から眼が離せなくて。
栗色の髪に赤い瞳。そして細長いエルフ耳……
私より幼い顔立ちなのに凛々しい顔立ち……
ちなみに胸ありますこの子。男の子じゃないです。
今の状況どうなってるんですか?
まるで魔法に掛かったみたいにお互い見つめ合ってます。
私の胸高まってます? なんか動悸が激しくなってきましたよ。え、え?
もう、五分くらい経ってませんかこの状況から……
あ、ヤバいと私は思いました。
なんかお互いの手握ってますよ私たち。
正直わたしはこのままだと流れに乗っちゃうかもと思いました。何せ私の心がそんな雰囲気です。
待って、流石にそれは不味いですよ!
一応、私、聖職者ですよ。相手女の子ですよ!
と、私は理性をフル動員してなんとかこの場の状況から抜け出そうと言葉を紡ぎました。
「あ、あ、あの!」
「!?」
急に女の子が飛び跳ねるように眼の前から居なくなります。
私も呪縛が解けたように起き上がりました。
ただ……私は夜空の星灯りに照らし出される彼女に呆然としました。
そう……まるでおとぎ噺に出てくるような妖精……の騎士。
私の胸高鳴ります。眼がもう離せません。
私の顔紅く紅潮してます。熱くなってるの解るんです。
なんででしょう。なんででしょう。
これが……………………、
恋ですか?
†
わたし、アイギス。オーケー。今、眼の前の女の子から声掛けられてハッとなって飛び上がった。
そのまま着地。
ここまでは良い。ただ……問題が解決してない。
わたし見て女の子が固まってるよ。
しかも顔真っ赤。そうだよね、そうなるよね。
女の子が眼の前居て、顔近づけたらキスできるような位置に居たらそうなるよね!
わたしもそうだもん。今、状況認識して顔真っ赤だもん。
よ〜し、落ち着こう。
よ〜し、まずは眼の前の女の子を観察しよう。
でも見れば見るほど綺麗な子。本当にエルフって感じの。しかも混血の子でこんな可愛い子みた事ないよ?
そりゃわたしも美少女だよ? ……でもわたしが子供っぽくて可愛いなら眼の前の子は本当に少女って感じなんだよね。
本当に目が離せなくて……で、またわたし達見つめ合ってるんだけど。さっきはわたし呆然としてたけど流石に声掛けた方が良いよね。
「だ、だ、だ、大丈夫?」
「え……、あ……はい……」
うん。わたしこう言う時に緊張して声でないんだ〜。こっちもまだ気が動転して回復しきってないんだってば!
結局、30分ほどかな、わたしも立ちっぱなしもなんだからその子の横座って二人して自分が落ち着くの待ってた。
†
わたし、セレスティナとアイギスさんは、ぽつりぽつり会話していきます。
最初はもう本当にお互いぎこちなくって、要領とか得なくて会話に成らないような感じでしたけど。
「うん。それでねあの街に傭兵団が占拠してるんだ〜」
「そうなんですか……街の人たち大変ですね」
今、なんとか普通に会話ができるようになってきましたね。取り敢えず解ったのはどうも二人同時に別々の場所から同じ場所に転移魔法で転移しようとしてばったり鉢合わせしちゃた事ですね。
なんです、その天文学的な確率。
ヤバいですね。運命感じちゃいますね。
それに、何より……
「あ、あのつかぬことをお聞きしますが」
「は、はい。なんでしょうか」
「も、もしかしてアイギスさんって〈鮮血妖精〉さんじゃないでしょうか?」
「…………」
あ、あれ? なんか急にアイギスさん口をきゅって結んだ感じになっちゃいましたけど。
人違いじゃないですよね?
血のように赤い瞳で赤い鎧来た妖精人。容姿は子供で、おとぎ噺の凶悪無比な赤帽子妖精もかくやと言われる血塗れの妖精〈鮮血妖精〉……
完全に噂話と同一人物じゃないですか。
王国と帝国で特に有名でこの大陸で知らない人いないって言うくらい有名人物ですよこの人。
しかもこの国にこの人来た時、王都じゃ新聞とかの見出しで、特集組まれましたからね、大きな都市じゃないと新聞読めませんが。まぁ……やらかして情報統制でその新聞に出禁食らってましたが。
「妖精騎士って呼んでくれないかなぁ……」
アイギスさんが急に遠い目しだしました。
解ります。忘れたいんですね。でも呪詛のようにこの大陸に噂話染み込んでますから無理ですよ。
と言う言葉を私は飲み込みます。大人ですから。
「ですよね~。アイギスさんはやっぱり妖精騎士って呼ばれるべきですよね」
アイギスさんが急に眼を輝かせます。そして私の手を握って、
「だよね。そうだよね。わたし妖精騎士だよね!やったー。判る人には判るんだぁー」
え? って思うくらいに無邪気に喜んでくれます。
さっきまでの凛々しさが嘘みたいで、普通の女の子みたいで私の頭また混乱しそうですよ。
「でねでね聞いて聞いて。わたし今からあそこの街乗り込んで賊ども皆殺しにするの! 偉いでしょ」
「……凄いですね~」
あれ? なんか最初の印象と物凄く違うんですけど。
実際に〈鮮血妖精〉さんに会った人と話し聞いたら男口調で喋って女っ気なんて一切ないキレまくりの人って聞いてたんですけど?
さっきの私の恋心気の迷いですか?
「で、そろそろ私も準備して行かないと。お話しできて楽しかった。わたし女の子と余り喋ったことなくて……」
「あ、そうなんですか。でしたら私もお手伝いしましょうか? これでも戦神に仕える司祭ですし。冒険者ギルドにも出入りしてますよ。"練達"級です」
「え?」
急にまた固まって動かなくなりましたね。
あれ? 私、変なこと言いましたっけ?
†
わたし、アイギス。今とんでもない大ポカやらかした。この子、同業者!
普通に女の子と喋る感じで話し掛けちゃった。
こんな子が冒険者とか思わないでしょ。しかも練達級って、見た目と違って相当の実力者じゃない。
そりゃシルフィちゃんと話す時はさ、なんとなく男の子っぽく話すけど。わたし普通の女の子相手だと結構女の子口調で話すよ?
どっちが素とかないんだってばその場のなんとなくノリで……?
やっばい。気分がもうそんな感じになっちゃたから、男の子口調に戻せるかなぁ。野郎どもとか同業者だと舐められないように自然と男の子口調とか考え方がそっち方面行くんだけど……
でも本当に嬉しかったんだー。妖精騎士って言われたの。
もう、〈鮮血妖精〉は嫌。忌まわしい記憶しかない。
「あ、あの、アイギスさん。どうしましたか?」
「え? あ、ちょっと考えことしちゃて……そうなんだセレスティナさんって練達級の冒険者さんなんだ〜もしかして二つ名とかあったりする?」
「え〜っと……〈鮮……いえ、〈妖精騎士〉さまにはお恥ずかしがら〈鉄血聖女〉と言われてますね」
「…………」
わたし、黙る。
待って、〈鉄血聖女〉ってこの国で数々の悪党を粉砕して来た筋金入りのイカれ聖女って人からわたし聞いたよ?
わたしって友達いないけど街の人達とかとは普通に会話してる。
冒険者だから、よくそう言う話題だされるの。だから、普通の人が知ってる有名所の二つ名持ちはわたしでも把握してるんだ〜。
〈鉄血聖女〉ってこの国で一番有名じゃん!
権力者バックに居ても、容赦なく悪党戦鎚で粉砕する情け知らずの泣く子も黙る戦闘狂。戦神の申し子。死に場所探して彷徨う不浄霊も斯くやの生命知らずの〈鉄血聖女〉って聞いたよわたし!
「あ、私みたいなのが〈鉄血聖女〉って名乗るのおこがましいですよね。すみませんでした」
「…………びっくりしたぁ。冗談言わないでよ。それに戦鎚も持ってないようだし、そうだよね冗談だよね」
「あ、そう言う意味ではないんです」
と、セレスティナが何もない空間から戦鎚を取り出して来た。女の子が持つにはごっついの。
「私、超常系の魔法も使えるので自分の精神空間に物品を収納できるんです。空間収納って奴ですね……すみません〈鉄血聖女〉は嘘じゃないんです」
「そ、そうなんだ……」
空間収納って魔法として有るんだー。それはゲームの世界ではなかったなープレイヤーなら誰でも使ってたし。わたしのも魔法かな?
って現実逃避やめいわたし。自分のこと考えろ!
見た目子供のわたしがつべこべ言えないでしょうが。
「わかった。じゃ一緒に賊どもブチ殺しに行きましょう!」
わたしはヤケになりその場で殺しに誘って見る。
〈鉄血聖女〉の女の子セレスティナが眼を輝かせた。
「え……はい! ブッ殺しましょう!」
†
一方、遠く離れた地――聖魔帝国。
天使王は大きな運命のうなりを感知した。
漫画制作中に脳に一閃走るようにピキーんと。
「! む。感じる何かが起こりそうな予感が。…………前に感じた運命と同じものを。百合っぽいやつ」
天使王たるアリーシャちゃん見た目3歳児は壁に張られた世界地図を見る。2回目の感知で大体の位置は把握した。
「よい……このアリーシャちゃんが自ら行こう。この漫画を仕上げてから……フフフ」
そして、幼女は不敵に笑う。その顔は赤ん坊が時折みせる邪悪な笑みに似ていたのだった。




