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神祖の妖精王〜妖精騎士アイギスさんの冒険の日々〜  作者: フィリクス
第1章 星幽界の彼方から求めて
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幕間その二 妖精騎士アイギスさんと暗黒騎士ベイバロン卿の策謀

暗黒騎士を出さずしてファンタジーとは言えぬ。

(´・ω・`)〈 こいつ何人、暗黒騎士出す気だ。



暗黒騎士ベイバロンは世に知られぬ地下神殿で部下から報告を受けていた……


「なに? シル・ヴェスターの賊共が壊滅したと?」

「はい……。首領に念話で連絡を取ろうにも繋がりませぬ。確認を取りましたが伯領では賊どもが蹴散らされたとの話」

「ええい。早すぎる! なんと役に立たぬ奴らか……一冬ひとふゆも越えれんとはな」

「所詮は賊共でございます」

「その賊共に妖魔バフォメットの召喚陣さえ与えたのだぞ。貴様がな」

「そ、それはわたしのせいでは……お、おやめ下さいベイバロン卿」


暗黒騎士が腰の鞘から魔剣を引き抜いたのを見て部下の男は後ずさった。

魂さえ粉砕する狂気の魔剣ソウルブレイクは、魂の自由を標榜する暗黒神の教えを信じる者に取っては恐怖の対象でしかない。


「役立たずめっ! 死ねい!」

「ひぃぎやぁあぁぁああああ!」


断末魔の絶叫が地下神殿に鳴り響く……男の死に様を眺めるのは暗黒神に仕える司祭たち。

彼らの中に魂さえ砕けちった男に同情する者など一人もいない。


むしろ、その災禍が自らに及ぶ事を恐れる。

畏怖の対象はベイバロンに他ならない。

かつての魔教皇の懐刀ふところがたな、暗黒神に仕える者で知らぬ者なき恐怖の騎士ベイバロンを。



「全くクズ共めっ! 魔教皇猊下げいかに申し訳が立たぬと思わぬのか!」

「べ、ベイバロン卿。お気を確かに。猊下が崩御なされた後、我らにも動揺が広がっております」

「だからどうしたと言うのだ。猊下より賜りし使命も果たせずこのていたらくとは」

「で、あればこそ卿にお越し頂いたのです。不甲斐なく我らでは命を果たせずと思い」


司祭の一人がベイバロンの前に進み出て懇願するように荒れ狂う恐怖の騎士を諌めた。


「良かろう。まだ、辛うじて信仰は残ってると見える。しかし暗黒祭器が伯爵領にまだあるという情報は本当なのだろうな」

「はい。持ちだされた形跡は有りませぬ。今だ伯爵家が所有しているものと」

「判っておるのだろうな? 最早一刻も猶予はない。事を起こせば奴らが嗅ぎつけて来るのも時間の問題になる」

「ろ、ロルムンドでございましょうか」

「馬鹿めっ。魔女王と天使王が、だ。ロルムンドなどもはや恐れるに足らんわっ」



魔女王と天使王……彼の存在こそ暗黒神殿の最高指導者、魔教皇ヴェルサリウス・ノウスを"対神兵器"と共に討ち滅ぼした存在……


その事実は暗黒神殿の司祭たちに重く伸し掛かる。中には暗黒神の信仰を捨て魔女王を信じる教団に鞍替えする背教者さえ出てくる始末だ。

尚、天使王の教えを信じる者まで出始めた。



「軽々に動く訳にはいかん。が、時間もない。よもや神祖の妖精王がこのタイミングで動きだすとは……」

「け、計画を延期には……」

「ならん! 既に準備は整っている。どのみち神祖の妖精王が姿を現すとは限らん。今まで隠れておったのだからな」

「しかし、本当にあれを呼びだすのですか……」

「……計画ならねば貴様らには死んで貰うぞ」


その言葉にベイバロン以外の全員が項垂うなだれる。仮にも暗黒神殿の司祭。最後の自由たる死の意味が理解できぬものはなかった。

何より彼らは司祭である。

その信仰心によって暗黒神――古代、魔法文明を滅びに導いた闇の王――から魔法の奇跡の恩寵をたまわる者達なのだ。事を為さねば死ねと言われても受け入れるしかない。全てはあらゆる自由の為に。



「し、しかし、ベイバロン卿。我らだけでは……、あの憎き〈鉄血聖女〉により我らの手勢も失われ賊どもに頼る始末」

「左様。あの賊共も〈鮮血妖精〉に殺られたとの話しも……」

「ちぃ……〈鮮血妖精〉と〈鉄血聖女〉か奇しくも両方、妖精人エルフか、忌々しい奴らめ」


かつてこの大陸の帝国と王国。双方で名の知られた冒険者達。特に暗黒神殿に取っては災厄に等しい連中だ。ベイバロン自ら動ければ良かったのだが自身で動けば策謀が嗅ぎつけられる可能性が高く。何度、歯噛はがみした事か。


「我が赴ければ良いが名を知られ過ぎている。我が動くのは暗黒祭器を確実に手に入る確証がある段階だ。貴様ら、何か良い手立ては思い浮かばぬのか」

「ここは致し方ありませぬ。邪神ロアの徒を使っては? の不死の覚醒者グリューゲル殿なら我らの計画にご協力頂けれるかと」

「あの狂人をか?」

「ベイバロン卿……もはや手を選んではおられませぬ。神祖の妖精王出現により聖魔帝国やロルムンド、あまつさえロクス教国さえ動きだしておるのですぞ」


「むぅ」と暗黒騎士ベイバロンは自身の顔を覆う鉄仮面に手を当てた。

信仰は違うなれどグリューゲルの腕前は認めても良い。何より信念がある。

しかし邪神ロアは快楽と苦痛にこそ真実があると説く、よこしまな教義。暗黒神に捧げる神聖なる祭事たるこの計画に入れても良いものか……


「……背に腹は代えられぬ、か。奴に連絡を取れこのベイバロンの名でな。但し、もはや失敗は許されぬぞ」

「ははっ」


暗黒神に仕える司祭達が神殿から散り散りに去っていく。彼らの策謀が動きだしていた。


「目にもの見てろよ不信者ども。このベイバロンある限り信仰の火種は消させはせぬ。……魔教皇猊下。暗黒の深淵よりご照覧あれ。我こそ暗黒神の教えを世に知らしめる者なりと!」



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