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神祖の妖精王〜妖精騎士アイギスさんの冒険の日々〜  作者: フィリクス
第1章 星幽界の彼方から求めて
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第四話 妖精騎士アイギスさんの黒龍退治と騒動の後始末(2)



グランヴァンが戦いの開始を宣言する。

いなや黒龍の周囲に黒い玉が出現する。

一つだけではなく幾つも宙に浮かび大きくなる……


「ちょ、ジェラルダイン。いきなりおっぱじめそうなんだけど……」

「なに、ただのデカいだけの蜥蜴とかげに過ぎん。どのみち爆撃してくるしか能がないからな」


『言うではないかジェラルダイン。では貴様の実力を測らせて貰おうではないか。神祖の妖精王に連なる者共々にな』

「!」


黒龍の思念が語り終えると同時に大きく黒玉が破裂――地上に向かって無数の黒い"雨"となり降り注ぐ。ただその速度は雨なんて速度じゃない。


「弾丸!」

「闇属性魔法による広域攻撃だな、では……任せたぞ」


と、ジェラルダインがこの状況でも慌てることなくわたしの背後に回り、肩に手を置いた。

わたしにはその意図が良く解った。もはや阿吽の呼吸――じゃない。 また、盾にする気だ!


降り注ぐ無数の黒い雨。

大きさは雨粒というより人間大の塊。その黒い飛沫しぶきが次々と地上に着弾、炸裂する。


その攻撃にわたしの赤い鎧に付与されていた魔法効果、完全防御結界の機能が自動反応。


わたし達を包み込むよう結界が展開。

直撃弾や、周囲の着弾炸裂した攻撃。更に発生した衝撃波からわたし達を守りきっていた。


「……やはり防御手段を持っていたな」

「ジェラルダイン……この攻撃くらいならなんとかなるけど。たぶん本腰の攻撃やつは破られる……」


完全防御結界は、あらゆる攻撃に対し"完全"に反応するだけで無敵の防御障壁じゃない。障壁シールドではなく障害バリアなのだ。

つまり攻撃を緩和するだけ。

ゲーム的な説明になるけど障壁シールドは一定ダメージを肩代わりしてキャパオーバーすると効果が切れる。障害バリアは効果が切れない代わりに肩代わりダメージ量は障壁シールドより少ないって訳で……


「……しかもわたしの結界が魔法封印の魔力消失ディスペル・マジック効果にも反応しちゃってるぅ。今の攻撃だけで防ぎきるの限界だよぉ」

「泣き言いうな。向こうの攻撃も軽減されてるだろ。他に防御手段はないのか」

「範囲攻撃だと守りきれないって。わたしにダメージを肩代わりするような技能スキルはないの。防御魔法なら幾つかあるけど」


その肝心の防御魔法が今、使えないんだよね。ハーヴェイさんの置き土産だ。あの女、今度あったら絶対シメる。


「囮、遊撃型の盾役タンクか。なら攻撃手段は――ちっ。もう攻撃が止んだか」


わたし達にダメージがないと見て爆撃のような黒い雨の攻撃が止む。

何か黒龍が思念で伝えようとしてたけど、わたしの完全防御結界が台詞セリフをカット。思念に乗せてくる精神波動が攻撃的だから打ち消したな。


完全防御結界はわたしに掠り傷でもダメージを負わせる攻撃だと判断したら自動反応して展開するけど、展開した後はノーダメージの攻撃でもカットしちゃうのだ。


そして周囲の爆撃が止み、わたしは眼を疑った。

辺り一面の風景が一変してた。

森の中の雪原のような光景だった環境が、一瞬にして地面剥き出しの焼け野原のようになる……

それを見て言いようのない怒りが込み上げてくる。


「ちょ……あいつ。 ……わたし言ったよね。爺さんの墓所だからって言ったよね……欠片も、欠片も爺さん残ってないじゃない!」


爆撃で木っ端微塵に吹き飛ぶ樹木妖精トレントのアーパ・アーバ爺さんの遺骸。近くにあった筈の横倒しの巨樹が綺麗さっぱり跡形もなくなっていた。


わたしはプッつんブチ切れた。怒りが沸々(ふつふつ)と込み上げてくる、心の奥底から。


「あいつはやっちゃいけない事をした。絶対ぶっ殺す! ぶっ殺してやる!」


それに今解った。

たぶん、この感情はわたしのじゃない。"前"の誰かの感情なんだ。余りに唐突に怒りが込み上げてきたから解ってしまった。なんか口調がいつもと違うし。

ただ、わたしは自分を止めれそうにない。気持ちがたかぶっってしまって――ブッ殺したくなる。


わたし、アイギス戦闘民族なの。オッケー"前"のわたし、あの黒龍ぶっ殺そう。『絶対ぶっ殺す』

意見が一致した。

やるべき理由があったらやるよ、わたし。これ前世の負債みたいなもんだ。遺産継承してんだからきっちりケリ付けんとな。


が、その時、ジェラルダインがわたしの耳元で囁いた。優しげな声で。

「まぁ、待てアイギス。冷静クールになれ」


我を忘れて黒龍目掛けて突っ込もうとしたわたしはなんとかその言葉で踏み留まった。

胸がドキっとした。

おい、わたしの感情どうなってる。乙女心と殺意が拮抗したぞ。あ、殺意の感情の方引っ込んだ。


「やるのは構わんが冷静さを欠いていてはな。何、手はある。お前好みのやつがな。で、この結界内から攻撃魔法撃てないか? 私では反応して打ち消される」

「あ、私の結界だから――たぶん撃てる」

「なら、やれ。もう来る――」


ジェラルダインの視線の先では、黒龍が次の魔法攻撃を撃ち終わっていた――先ほどの黒玉が槍のように変形して正確にこちらに飛んでくる!

わたしは咄嗟に魔法を発動させた。


「っ! 〈星幽騎槍アストラル・ランス〉発射!」


魔法を即時発動! 更に次々と次弾を形成し射日しゃしつしまくる。

わたしの放った白光びゃっこう輝く〈星幽騎槍アストラル・ランス〉が黒龍の黒槍と接触し――粉砕、そのまま黒龍グランヴァン目掛けて突っ込んだ。


『なに!?』

「黒龍! わたしがお前程度の魔法使えないと思ったか!最低でもレベル10魔法をもって来い!」


グランヴァンがわたしの〈星幽騎槍アストラル・ランス〉の一撃目を手で振り払い消滅させる。

が、そんなの、このアイギスさんには想定済みだ。

先ほどやられたお返しに次々と魔法形成した〈星幽騎槍アストラル・ランス〉を叩き込むぞ!


グランヴァンも応戦して周囲に浮かせた黒玉を盾代わりに使っていたが、防戦が間に合わないと見たか、回避しだした。奴の作る黒玉より、わたしの魔法形成の方が圧倒的に速い。完全無詠唱で即時発動だぞ。


「レベル9程度の魔法の黒玉作るのに時間掛けていてはなぁ。魔法は速さが重要なんだよ馬鹿め!」

「舐めるなよ小娘!」


思念ではなく直接大声で怒鳴ってきた黒龍。


が、奴は回避に精一杯だ。精神波動を送る余裕もないらしい。多分だけどわたしの方が強い気がする。


けど、わたしは油断はせぬ。と云うのも遠距離攻撃する手段がわたしにはこの〈星幽騎槍アストラル・ランス〉くらいしか無いのだ。

撃ちまくるのは良いけど、余裕で回避されて仕留めれそうにない。本職の魔術師じゃないから誘導とかできないのだ。


そして黒龍グランヴァンがわたしの攻撃を回避しつつ黒槍を次々魔法形成して撃ち込んで来た。しかも、さっきの黒玉浮かべる速度より速い。わたしが挑発したから本気だして来たな。


けれど、わたしの〈星幽騎槍アストラル・ランス〉はお前の攻撃貫通するんだぞ。精神属性の〈星幽騎槍アストラル・ランス〉は通常の魔法

に対しては有利な攻撃なのだ。撃ち合いで負けるかっ。


そして、わたしはグランヴァンの黒槍を迎え撃って〈星幽騎槍アストラル・ランス〉で次々に粉砕する。誘導できれば良かったけど、こちらの迎え撃った攻撃は使い捨てになってしまった。


「では、貴様の望みを叶えてやるぞ。小娘」


わたしはその言葉に身構える。グランヴァンが時間を稼いでいたと気づいてしまった。おそらく、強力な攻撃が来る――

そして、周囲の魔力が流れるような気配を感じてわたしは流れる先の上空に視線を転じた。


先にあったのは黒い、視力10とか余裕であるエルフのわたしじゃなきゃ見逃しそうな程小さい点――


そして、そのにわたしは見覚えがあった。


「まさか……《特異点爆発》(ブラックホール・バースト)……?」

「ほぉ、知っていたか。神祖の妖精王に連なる者というのも然りか……なら手向(たむ)けだ。我が秘奥の(すべ)を見せてやろう」

「正気か、お前! こんな、こんな所でその魔法使ったら――」


《特異点爆発》(ブラックホール・バースト)は神話級魔法とも云われるレベル10の大規模攻撃魔法。擬似的に作りだされた極小の特異点、つまり擬似ブラックホールが周囲の魔力――魔素を吸込み大爆発を起こす強力な魔法攻撃だ。

攻撃威力だけならわたしでも耐えきれない事はない。問題なのはその危害半径――


「――この山岳地帯、全部吹っ飛ぶぞ! 解っててやってるんだろうな、お前!」

「無論だ。さぁどうする妖精騎士。果たして、我を止められるかな」


わたしは黒龍の発言が終わる前に魔法を即時形成して〈星幽騎槍アストラル・ランス〉を何十発も叩き込む。でもグランヴァンは回避に専念してまるで当たらない。


《特異点爆発》(ブラックホール・バースト)の魔法が発動すれば、核兵器並みの威力が来る。わかり易く言うと仮に東京に落とされたら23区即時壊滅。

この辺境の山岳地帯にも人住んでるんだ。下手したら領都(ヴェスタ)に居るシルフィちゃんさえ……


極小のが少し大きくなる。不味まずい発動阻止限界が近い――


わたしは考えるより先に技能スキル〈幻想妖精〉を即時起動。


光速移動して黒龍に迫った。奴の体をすり抜けざまに黒龍の背後で静止、現出げんしゅつ。背中から斬りかかろうとしたが、黒龍グランヴァンは既に振り向きざまに攻撃を仕掛けていた。


「なっ」

「瞬間転移なぞ見飽きておるわ!」


黒龍の剛腕が音速超えでわたしの全身を叩きつけた。

盾で防御したからダメージはほぼない。けれど地上方向に吹っ飛ばされた。


「もう、良かろう。では、発動だ」


わたしはノックバック防止と空中歩行の技能スキルで辛うじて空中に踏み留まった。

ヤバい。わたしが思ったより魔法の発動が速い。


「やめろおお! ここで爆破してもわたしにはダメージにはならないぞ!」

「だろうな。だが、ジェラルダインめがこそこそ逃げ隠れておるのでな。腑抜けめが」


わたしは《特異点爆発》(ブラックホール・バースト)が収束するのを見て黒龍が本気だと悟った。

そして、空を駆けてグランヴァンに迫る。


だが、黒龍の顔にははっきりと不敵な笑みが浮かんだ。

「時間切れだな」

そして《特異点爆発》(ブラックホール・バースト)が発動する――


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