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神祖の妖精王〜妖精騎士アイギスさんの冒険の日々〜  作者: フィリクス
第1章 星幽界の彼方から求めて
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第三話 妖精騎士アイギスさんと神祖の妖精王の探索(7)



私、ミシェル・ハーヴェイは想定外の事態に上擦った声を上げてしまった。まだ子供のような姿の赤い鎧を着こんだ妖精族エルフ……奴がホムンクルス兵の半数を即座に殲滅するなど予想外だったからだ。


「何者なんだあいつは。――すぐにあの赤い妖精人エルフをデータベースで照合検索しろ」


人造人間ホムンクルス兵の副官役が私の命令に即座に従い情報端末を操作する。私はこの不測の事態にどう対処するべき考えはじめる。


近接戦闘を仕掛けたホムンクルス兵6名が倒されるのは想定の内だ。タイミングを見計らって魔法を封じた所でジェラルダインにはかなうまいとは予測できたのだ。


しかし、誰が予想できる。剣刃用いた近接戦闘でも世界屈指の人物、あのジェラルダイン並みに近接戦闘で強い奴が、よりにも依って、そのジェラルダインと一緒に居るなどと。

そんな情報わたしは聞いてないぞ。何の冗談だ。


せいぜい現地で雇った冒険者程度にしか思ってなかったのだ。実際、戦闘前の会話を聞いた限りでは今回の件には関わりない部外者のようだった。せいぜい冒険者で言えば"練達"級くらいかな。

と、甘く考えてたらとんでもない。


「データベースの照合結果出ました。ヴェルスタム王国ヴェスタ冒険者ギルド所属。"熟練"級の冒険者。姓名はアイギスと回答が出てます」

「ほぼ情報なしか。クソっ。何が"熟練"だ。"伝説"すら生ぬるいだろ。うちのハイエルフの爺婆じじばばどもとやり合えるレベルだぞ」

「"練達"級の可能性が有るとの附則事項が――」

「もう情報はいらん。なんだあいつは……」


そのアイギスという赤い鎧の妖精人エルフは、こちらの兵10名から半自動小銃セミオートライフルの一斉集中射撃を浴びていた。


だと言うのに小揺るぎもせずに盾を掲げて銃弾を防御。

背後に隠れたジェラルダインを守りつつ、しかもちょっと銃弾を避けている。

魔法封印された状況では魔法効果で防いだり、身体能力を強化してるとは考えにくい。


今回の魔法封印結界は"太古エンシェント"級の樹木妖精トレント"アーパ・アーバおうの遺骸を触媒にして施した強力な術式の物だ。


格段に効果を増した〈魔力消失ディスペルマジック〉効果は、魔法付与された武具や道具もその効果を失うほど。伝説級の宝具さえ無効化し、聖遺物レリック級でさえ効果の減衰を期待できる。


奴の武装は神々が遺したという最高峰の神話ミシカル級か?

しかし頭部は素顔だ。たまに顔を盾からチラチラ出して来るとか常人なら正気とは思えないぞ。


「クソっ。あいつは化け物か。物理防御力が異常過ぎる。まるで火力が足りてないぞ」


せめて機関銃マシンガン自動小銃アサルトライフルが用意できれば……と私は悔やむ。

ロルムンドが技術流出を恐れている為、調査目的の武装では携行許可が降りなかったのだ。


これではいつ連中が突撃してくるか解ったものではない。しかもこちらの想定の倍の戦力で。


そして、ジェラルダインが地雷に気づく。

その気づく時間を与えない作戦だったが赤い奴のせいで予定が崩れさった。


「止むをえん。時間稼ぎに気付かれた。敵が突撃してくる。地雷如きでは防ぎきれん。ジェラルダインの方に射撃を集中させてタイムラグを作りだせ。おそらく赤い奴が先行してくる。先に赤い奴を相手にするしかない」


そして案の定。赤い奴が突撃してきた……。





わたし、アイギスは地雷が埋没する雪積もる戦場を思いっきり走り抜ける。


そして遂に運悪く地雷を踏み抜く。

けど、地雷の爆発衝撃はわたしの装甲靴に一切通じなかった。なんか踏んだな? くらいの威力の代物である。派手に雪を吹っ飛ばすだけ。


わたしの装備、武器以外は神話ミシカル級で固めてんのよ。そりゃ危険な異世界だもの防具は一番良いもの使うよね。剣だけは伝説級のだけど。

武器は性能良すぎると効果がヤバいので自重してます。


最強格の剣、幻想魔剣を一般人に使ったら掠っただけで魂レベルで相手を粉砕するので……この世界では人権踏みにじるとかそんな非人道兵器よ。あれ。

樹木妖精トレントの爺さんくらい強くないと使えんって。


そして、わたしはボンボン地雷を炸裂させながら横倒しの木を遮蔽にしてた敵兵の元へ駆ける。


ホムンクルス兵は小銃ライフルでわたし目掛けて撃ち込みまくってたけど盾で防御。着弾衝撃などないにひとしい。その程度ではわたしは止まらんぞ。


そのまま猪突して遮蔽に隠れてたホムンクルス兵に体当たりする勢いで戦闘技"シールドバッシュ"をお見舞い。遮蔽の横倒しの木ごと吹っ飛ばす。


敵の状態確認などせず、わたしは近場にあったもう一つの木の残骸に跳躍ジャンプ。そこを足場に今度は思いっきり跳躍ジャンプ。戦場を見渡せるくらいの上空に飛び上がる。


さて状況は、っと。


見るとジェラルダインに射撃が集中してた。折角せっかく、目立つように走って包囲を抜けたのに、こっちに対応無しか。

囮役を兼ねてたんだけど当てが外れちゃう。

あの指揮官のミシェルって人やっぱり優秀。

しかし、このアイギスさんを敵に回したのが奴の不運。


着地目標を指揮官の前方に配置された敵4名の後方に定める。既に跳躍ジャンプした時にはその方向に行くよう調整済み。


後はちょこっと進行方向を制御。

身体を空中で動かして目標の着地地点に軌道修正。

そして樹木妖精トレントの爺さんとの戦いでも使った技能スキル〈幻想妖精〉で自身の質量をゼロに。


そして、自由落下の加速を利用して光速移動して着地。着地前に〈幻想妖精〉の質量ゼロ効果を切っておく。でないと地面に潜り込む馬鹿な事になる。前にそれやって多分、地面のマントル地層に埋まった。転移魔法が無ければ生き埋めだぞ。所謂いわゆる、石の中にいる、だ。

(マントル地層は岩石地層)


背後にいきなり現れたわたしにジェラルダインに小銃ライフルで撃ってたホムンクルス兵達は気づいてさえいなかった。奇襲して奴らを撫で斬りにして殺害する。


FPS(銃撃ち合うゲームとか)だとチーターみたいな動きしてるけど、わたしは容赦せん。家族が帰りを待ってる。きっちり皆殺しにするぞ。

何より一つ気づいたことがあったのだ。わたしの推測通りだとさらに許せん。あの白い女エルフ。


わたしは一気に駆け寄り白い女エルフの元に突っ込む。


護衛のホムンクルス兵が二人掛かりで剣で挑んできたけど、左右からの同時一撃目を剣と盾で防いだ。一人は盾の縁先へりさきで首を掻き切り、もう一人はわたしの剣を投げつけて、心臓を串刺しにしてやった。


投げつけた剣を引き抜いて、もう一度白い女エルフを睨みつける。


白い女エルフが樹木妖精トレントの爺さんの遺体の巨木に手を当てると遺体の一部が動きだした。

前の戦いの時のように、爺さんの巨木の枝や根がわたしを襲ってきたけど動きが遅すぎる。


攻撃速度が常に音速超えないとわたしの相手にならないのだ。剣で全部叩き切っていく。


「クソっ、これでも駄目か!」

「やっぱりか。爺さんの遺体使って魔法使ってたんだな」

「おまえはアーパ・アーバおうを知ってるのか?」

「その爺さん殺したのわたしだよ」

「なに!?」


白い女エルフが驚愕に目を見開く。もう、これ完全にバレる話しだからね。あのジェラルダインに気づかれない筈がないんだし。


「馬鹿な、ならお前が神祖の妖精王か……?」

「そんなの知らないよ。ただ爺さん死にたがってたから引導渡しただけ。血縁だか何かと勘違いされたけどね」

「…………」


良し。今、思いついたけど、この計画で行こう。わたしは神祖の妖精王など知らん。実際そんな記憶ないんだし。…………心当りがない訳じゃないんだけど。


ただ、このミシェルという人には爺さんの"死因"には心辺りあるらしい。わたしは精神感知の技能スキルがあるから相手の感情読めたりするので判るのだ。


「……お前が殺したとしてアーパ・アーバ翁の遺言はどういうことだ。神祖の妖精王がこの世界に帰還したという話しは」

「爺さん痴呆ボケ来てたからお出迎えの時に夢見たんじゃない? そう言う事言ってた気はするけど……」


済まん爺さん。ボケ老人の戯言たわごとにするぞ。爺さんの忠節が試される時。


「馬鹿な。なら、この場で因果律が歪められていたのは――」

「いや、そんな事より」

わたしは殺気をあらわにして怒る。

「――お前爺さんの遺体使って好き勝手したろ。覚悟は当然決まってるんだよな?」

「こ、殺したお前が言えることなのか」

「わたしは介錯したに過ぎん。個人の遺志だ。だが、お前は?」

「神祖の妖精王の情報を渡す訳にはいかん。例えアーパ・アーバ翁の遺体を使ってもだ……」

「死ぬ理由はわかってるな。武器を取れ。蘇生魔法を使えんくらいブチ殺してやる」

「くっ……」


わたしの殺気に当てられたのか、ミシェルという女エルフは涙目だ。当然わたしも激おこだよ。

あれ、でもなんでわたし怒ってるんだろう?

ふと、そんな疑問が湧いたが殺すのに変わりはない。なんだか苛つくしブチ殺そうと思った。


そして、ミシェルという女が杖を手にとって身構える。良し、形式は整った。

わたしはおもむろに歩いて近づく。

もちろん、直ぐには殺さん。両手両足は叩き切る。

この世に生まれたことを後悔させてやるぞ。


そしてわたしがミシェルに一足飛びで切り掛かろうとした時――


バン、と目の前の雪に銃弾が撃ち込まれる。


「……そのくらいにして置いてやれ」

「……ジェラルダイン」



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