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神祖の妖精王〜妖精騎士アイギスさんの冒険の日々〜  作者: フィリクス
第3章 妖精達の冒険ストラテジスト
202/205

第二十七話 妖精騎士アイギスさんと密かに暗躍する者たち(2)







「このアリーシャちゃんが人々を清く正しく導こうと言うのだ」


わたし、妖精騎士のアイギス。今、アウレリア王国の王城で幼女から謎の宣言を受けてるの。


連合艦隊で王都を占領してから5日目の事よ。


その間にわたしは動揺する王都の民だとか、どさくさに紛れて悪さしようとしてた連中だとかをふん縛ったりとか治安維持に奔走してたのよ。


その渦中でアリーシャちゃんが紛れるようにしてお目当ての悪党どもを連行してたんだけど……

やり過ぎて待ったが掛かったのよ。


その理由を聞いた返答が冒頭の第一声って訳。

この国のお偉いさんやら、吸血鬼の帝国の皇女やら、聖魔帝国の外交官が勢揃いの中、堂々と宣言したわ、この幼女。


その宣言にまず抗議の声を上げたのは、以外にも聖魔帝国の駐在外交官だった。


「お、恐れながらアリーシャさま――」

「――外交官。ちゃんを付けて呼ぶのだ」

喋り出した瞬間にいきなりの駄目だし。まず、ご機嫌がよろしくないと解る。

「天使王聖下の代理人であらせられるお方に失礼しました。で、では恐れながらアリーシャちゃん。聖下の勅命なれど連行した者達の数が多すぎます」


アリーシャちゃんが悪魔や天使の憲兵部隊を動員して三千人以上、捕らえてんのよ。

おもにやらかした貴族とその周辺、ロクス教国絡みの裏組織の連中とかだね。ちなみにこの城に連れて来た奴らだけの人数よ。王都外で捕らえて移送してない奴らもまだ居るらしい。


派手にやってるよね。でも、それが今回の集まりの理由で問題なってんの。


「うむ。この国のうみは出し切らねばならぬ。見事に悪とクズの巣窟であった……やはりこの幼女の力が必要か」


なぜかやんわりと抗議されてるのに都合良く解釈して納得する幼女。最初にいきなり明後日あさっての方向に踏み外してるな。

マズいと思ったのか外交官の人が修正を図る。


「い、いえ。アリーシャちゃん。捕らえた者の数が多すぎるので、国政がままなりませぬ。捕らえられた貴族の親類縁者からも嘆願たんがんが相次ぐ次第。民草も不安に思いますれば……ここは何卒なにとぞ、格別のご配慮を――」

「ふむ……やはりスピード感が必要か」


おそらく認識してもらいたい問題が違うの。

聖魔帝国の駐在外交官の人は貴族たちに根回ししてぐにでも問題に一応の決着を付けたいのよ。

でないとロクス教国だとか他の国に介入の余地を与えちゃうからね。その為にこの国の王都を占領したんだし。


だと言うのにこの幼女は裏組織に繋がりのあった連中を纏めて片っ端から捕らえまくってるのよ。纏まるものも纏まらなくなる。



「良い、外交官よ。熾天使アポリオンにすぐに裁判官の天使を派遣してもらおう。う〜む、今こそ人工知能弁護士の活躍の時か」

「なに、その頼りになるのかならないのか解らない弁護役」


「うむ、誰にでも公正公平な裁判を提供する為に聖魔帝国が開発した国選弁護士たち。スピード裁判には欠かせぬ。マッハで判決が出る」

「確かに公平そうだけど……」


わたしは聖魔帝国の外交官の人と宰相バリスタンの顔を伺う。その顔に困惑と焦りの感情をぜにした物が浮かんでたわ。


「ふむ。ではお話はそれだけだろうか? このアリーシャちゃんには成すべきことがある。良い、すべてをなる早で片付けてくれよう」


この国の宰相バリスタンが埒が開かないとわたしに向き直った。


「お、お待ちを! ――アイギス殿下。デリアーズ公爵閣下からもご注進くだされ。このままでは、国情を纏めるどころではございませぬぞ」


「って、言われてるけどどうするの? デリアーズ公爵」

「ことを真人類帝国の本国に知られれば、マズかろうとも思いますが……天使王聖下の代理人殿はそれまでに決着を付けそうですからねぇ……」


軍服を着た吸血鬼の皇女さんも神妙な顔して淡々たんたんと答えるの。深入りして余計な火種を抱え込みたくないよね。


「だよね。――外交官さん。言いたい事は解るんだけど。でも、まず聖魔帝国の方針はどうなのよ」

「………我が聖魔帝国は天使王聖下こそが最高君主、その代理人たる方が勅命を拝命し、さる行いでしたらそれは聖下の御意ぎょいに他なりませぬ……」


つまりアリーシャちゃんを止められる奴が居ねぇ。何せこの場に呼んだ、聖魔帝国分遣艦隊の司令官――魔神将エプスタインさえ、"聖下の御意に異を唱えるなどアイギス殿下は我に自死をお望みか"と同席を拒否されてめっちゃ嫌がるくらいだもの。


だから、わたしに期待されてんのは解るのよ?

外交儀礼上、わたしってその天使王と同格らしいじゃない。つまり代理人よりは格が上だよね。


「止めてくれ、って事なんだろうけど聖魔帝国の方針に口出しする訳にもいかないのよね。そもそも、主導してんの聖魔帝国でしょ」

「し、しかしアイギス殿下。このままご聖断をくだされては今後のアウレリア王国の国政に支障をきたしかねません」


「って、外交官に言われてるけどアリーシャちゃん?」

「幼女は激怒した。必ず、邪智暴虐じゃちぼうぎゃくの王を除かなければならぬと決意した。このアリーシャちゃんは政治が解らぬ。ただの幼女である」


ん? どっかで聞いた事があるようなフレーズの台詞せりふをアリーシャちゃんが返したな。

良く解らないけど、怒ってるのは間違いないよね。


「だってさ、宰相。何言われてるかは解るでしょ? わたしも庇う気にはなれんな。もう、血流れてんだから更に流れるの当然だろ」

「さ、されどアイギス殿下。貴族の不満と次に粛清の対象にされかねないという恐怖は、反乱や暴発を生みかねません。ロクス教国や周辺諸国に付け込まれやも知れませぬぞ」


「……貴族やら為政者いせいしゃやらはいつもそれだな。治める民衆の事を何も考えねぇ。それで居て自分の事になると何も知らない民衆を巻き込みやがる。……そうなったら勿論もちろん、戦争だ。聖魔帝国に真人類帝国、妖精連盟が相手だ。引くと思ってんの?」


引かねぇぞ。何の罪もない、無辜むこの民の血が流れることになってもな。正義ってのは"剣"なんだよ。立ち向かって来る連中は基本斬り捨てる。


「自分たちが何しでかしたか考えてから物を言えよ。人体実験には妖精族も犠牲になってんだよ。それを裁判で決着つけるってのにケチ付けて来たら殺し合いしかなくなるだろ。脳味噌のうみそお花畑か?」


「宰相、アイギス殿下の言う通りだな。王都を占領されてる状態で蜂起するというなら殲滅あるのみ。この状況でロクス教国が艦隊を率いて来ると言うなら我が真人類帝国も一戦を辞さないぞ」

「…………」


バリスタン宰相が顔を俯かせ二の句を告げなくなる。名目が査察でも、軍隊で乗り込んでるのに荒事を忌避する理由がないでしょ。関わった奴、皆殺しでも問題ないわ。文句言うやつもな。


「……ふむ、どうやらお話は済んだようだ。良い、天使王の前では人はみな平等である。ひとしく裁きを与える事を約束しよう。……外交官、務めを果たすが良い」

「はっ、しかしながら、それでは……」


後ろ髪を引かれるのか聖魔帝国の外交官が、宰相他、お通夜つや状態と化したこの国のお偉方を見やるの。

あっさり諦めてるようだけど、わたし達の不興を買うのがぽど怖いと見えるな。ガタガタ言うなら確かに斬り捨てたくもなる。


実際、わたしも不機嫌よ。美少女の眉間みけんに皺を寄らせる。アリーシャちゃんが動かなきゃ国中に十字架を突き立ててるわ。


ただ、わたしが憤懣ふんまんやる方ないその時、広い会議場に姿を現す黒外套を羽織った暗黒騎士の姿が。


外交官が救世主がやって来たように眼を見開いた。


「ジ、ジール卿。お戻りになられましたか!」

「……また、面倒を起こしてるようだな」


近寄ったあと、被った黒フード越しにわたし達を一瞥いちべつする暗黒騎士。


でも、幾らジェラルダインでも簡単にはこの状況を覆されないぞ。3歳児くらいの体躯のアリーシャちゃんも見上げてるけど、その表情は全く変わってない。


「ふむ……ジェラルダインか。良い、このアリーシャちゃんを止められるなら止めて見るが良い」

「……まったく、やれやれだな」


その下手へたに使うと、中二臭いセリフを素敵に使いこなすジェラルダイン。何のてらいもなく呆れた感が出てるのがポイント高い。

幼女に対する長年の感慨の深さがこもってたわ。


しかも素顔は男勝りで麗人の闇妖精ダークエルフよ。相変わらず胸キュンしそうだわ。


でも、わたしは騙されねぇぞ。

どう落としどころ見つけてくれるか楽しみだぜ、できるものならな。



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