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神祖の妖精王〜妖精騎士アイギスさんの冒険の日々〜  作者: フィリクス
第1章 星幽界の彼方から求めて
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第三話 妖精騎士アイギスさんと神祖の妖精王の探索(1)



私は暗黒騎士ジール・ジェラルダイン。

一応、聖魔帝国の冒険者ギルドでは等級ランクSSSの最高位の冒険者だ。


私は、今、聖魔帝国とは別の大陸にある国、ヴェルスタム王国北部シル・ヴェスター伯爵領に、神祖の妖精王探索の為に来ている。


その探索の旅の途中なのだが、現在私は少し困りごとの事態に直面していた。


「あはは、やめて下さい、アイギスさん。きゃ。そこはだめですよ」

「え〜、別にいいでしょ。減るもんじゃなし」


連れの女の子ふたりが密着して、戯れている。雪が積もった道中のさなか、肌が綺麗だとかいう話から、急にふたりともお互いに触れ合いだした。


「あ、良い香りがする。女の子の香りだ」

「違いますよ。石鹸の匂いです。わたしのじゃないですよ」

「いーや、わたしが嗅いでるのは絶対シルフィちゃんの匂いだ。覚えた。」

「いや、やめてください。覚えなくていいですぅ」


しかも、万事この調子でやたら仲の良さを見せつけられる。いや、そういう関係だとは聞いていたが……


私は良い歳した大人なので、子供同士の戯れみたいな物に憧れや憧憬の念は抱かない。嫉妬はない。性的嗜好もない。しかし、良い大人が何を見せ付けられるているのか……という釈然しゃくぜんとした思いは覚える。


アニメや漫画をいきなり見せ付けられた気分だ。

ちなみに聖魔帝国ではテレビでアニメ放送がされ初め、漫画雜誌やコミックも発刊されている。少年漫画なら私も読む。


(しかし、見た目はどう考えても子供同士……まぁ一方の実際の年齢はわからんが……アイギスの挙動は子供のそれだからな……実際の歳も見た目に近いのか?)



さて、どうする。良い大人ジール・ジェラルダイン。少しは水を差した方が良いか?

色々と理由を付けて連れだした手前黙っていたが、冒険するにしては気の緩みようが酷い気もするが……


このまま見せ付けられるのは構わないが(私は人の趣味嗜好をそれほど気にする性格ではない、興味がない。これくらいなら我慢できる)逆にそれも不自然な気がするしな。


ちらりと視線を変えると、狼系の魔物モンスターの群れが雪原の遠方でこちらを覗いていた。丁度良いかと私は妖精騎士を自称するアイギスに声をかけた。


「さて、水を差すようで悪いのだが、古狼ダイアウルフの群れがこちらに狙いをつけてるようだが」

「あ〜、大丈夫。あいつら襲って来ないよ。そんな事よりイチャイチャしたい」

なんだ、その本音。少しは建前で語れ。

「……襲って来ないと判断する根拠を聞きたいが」

「この辺りはわたしの縄張りだよ? で、わたしが"ぬし"って訳。街から他の村に行く辺りの魔物モンスターで頭良い奴はまず、手出さないって」

「では、連中が集まってる理由は? 先ほどから仲間を呼び集めてるようだが」


私に問われ、妖精騎士アイギスがそちらに目線を向ける。そして、「ああ、そっか」と一人で納得していた。


「ああ、これはアレかなぁ。悪いけどちょっと待っててくれる?」

「構わんが……」

と、私はシルフィを見る。アイギスは恋人シルフィと戯れながらも私に警戒してる節がある。挙動も油断してるようで隙がない。流石に"練達"級の冒険者と見做みなされてる奴だ。実際、私は警告を受けているしな。


「手出したらブチ殺す」

私は降参と言った感じで両手を挙げた。

「人の恋路に手を出すほど野暮ではない。手並みを拝見したいな」

「まあ、見てな。――シルフィちゃんちょっと待っててね」

「は、はい。気を付けてくださいね、アイギスさん」


そしてアイギスは古狼ダイアウルフの群れの元へ。本当に少しの時間しか掛からず直ぐに戻ってくる。古狼ダイアウルフの群れも去っていった。


「お待たせ〜。仕事してきたよ〜」

と、言いながら戻るなりシルフィに抱きつくアイギス。シルフィはそれを困惑しながらも、

「あっ、アイギスさん、ジェラルダインさんが見てますよ」

と、私を気付かう。大丈夫、私は問題がない。やたら、肌の触れ合いを求める奴はいるものだ。


「見せ付けてんの」

こいつが問題だな。なんだその勝ち誇った顔。嫌がらせなのか……?

「じゃ、出発しよっか」

「いや、説明くらいはして欲しいな。戦闘も無しに向こうが引いたようだが」

「ん~〜? 見ててわかんなかった? 群れのボスが変わったからその挨拶だよ。あいつらわたしの縄張りでシノギしてんだから、そりゃ筋通すでしょ」

「野生の掟をヤクザ者の筋道すじみちで語るとか斬新だな」

「解り易いだろぉ暗黒騎士」


すると、シルフィはアイギスを引き離しながら。

「あのアイギスさん。動物とお話しできるんですか?」

「そうだよ、シルフィちゃん。これでもエルフだからね。頭良いやつなら意思疎通くらいはできるんだ。……そこの暗黒騎士のお姉さんはできなさそうだけど」

「私ならいちいちそんな手間暇かけずに殺った方が早いからな……。この辺りの魔物で動物系には幅を利かせてるのか」

「利かせてるけど、古狼ダイアウルフくらいかなぁ手綱引いてるの。あいつらこの辺りの高原だと一番幅利かせてるし、村本気で襲われると被害がヤバい感じになるんだ。取り敢えず村人と道すがらの連中は襲うなって伝えてある。代わりに困ったことがあったらわたしに話し通すって感じで。――偉いでしょ〜褒めてシルフィちゃん」

「凄いですアイギスさん。本当に妖精の騎士さまなんですね」


確かに古狼ダイアウルフは生息地域の住人には厄介ものの代名詞みたいな魔物モンスター。一般人くらいだと太刀打ちできない。熟練の冒険者でも一体、二体は相手にできるが十数匹群れると五、六人の冒険者パーティーでも殺られる可能性がある危険生物だ。


「しかし……過保護にすると奴らの個体数が増えるぞ。所詮は獣だ。腹が減れば言いつけを守るか疑わしいな。その辺りは理解しているのか?」

「当然、適度に間引くよ。干渉してんだから当たり前だろ」

「結構。道理というものを解っているな」

「こっちは熟練の冒険者だってーの。暗黒騎士さま」

「なら、その熟練の冒険者に頼みたいが、そろそろ中継地の村だな。暗黒騎士と呼ぶのを控えて貰いたいんだが? 当然理由が判るな」


昨日、冒険者ギルドで暗黒騎士だと名乗ったのは失敗だ。聖魔帝国では特に問題にならず、国外でも冒険者として仕事する際は、既に話が通っていて問題になどならなかったのだ。――完全に失念していた。


「自分で名乗ったのに。……まあ、いいや。でも、なんて呼べばいい。お姉さん?」

「別に私はお前の姉ではない。ジェラルダインで構わないぞ。呼び捨てでな」

「……ジェラルダインって呼び名長くない?」

「そうか、しかし、ジールと気安く名の方を呼ばれるのにも抵抗がある」

「ならジール卿」

「却下だ、たまにしかそんな呼び方されん」

「じゃあ、普段なんて呼ばれてるの」

「…………ジェラルダインだ」


実は幾つか呼ばれ方があるが私としては気に入ってない。知り合いのヤクザ者連中にはジェラの姉御とか言われるしな。

しかし、アイギスとはそこまでの関係ではない。人付き合いは段階が必要だ。いきなり馴れ馴れしい奴を私は好まない。


「ん〜。まぁ解った。わかりました。じゃあわたしの事は妖精騎士のアイギスでお願いします。ちゃんと呼んでよね」

「ああ、良いだろう」

「じゃあ、こっちからも質問良いかな? ジェラル……ダイン?」

「ああ、なんだ」

「探してる樹木妖精トレントを殺った奴の当りってもうジェラルダインならついてない?」


中々、確信を突く奴だな。そうだ、もう既に見当はついている。まだ可能性の段階だが、それを今から確かめに行く訳だが……

さて、こいつに何処まで話したものか……


「そうだな教えてやっても良いが……正直教えない方が良いかと思っている」

この言葉にアイギスは眼光を鋭くする。アイギスは見た目と戯れている時の姿は子供なのだが、目つきだけは一流の戦闘者そのもの――修羅場潜ってるなと一目で判る。

まぁわたしも見た目では子供と大人の微妙なさかいだが。


「まぁ組んだばかりの奴に教える訳ないか。ただ、こっちもシルフィちゃん守らなきゃならないし、どんな奴が出てくるか見当つけときたいんだよね、万が一でも」


「判らん話でもないがそれなら余計に教えん方が良いだろう。私の見当違いの可能性は捨てきれん。偶発的に遭遇する可能性がある以上、何が出てきても可怪おかしくないからな。予断を持たない方が良い。ギルドで依頼を受けたら別の魔物が出てきた。良くある話しだろ」


「……まぁ、解らない話じゃないけどさ。それだと、ジェラルダインの見当が外れてたら解散ってこと? 今回の仕事」

「そう言う事だ。ただ、別の可能性が出てくることも考慮に入れてある。シルフィ嬢にご同行願ったのはその為だ。完全に足取りが掴めなさそうならそこで解散だな。連れ出して悪いがシルフィ嬢は保険だ。申し訳ないがな」

「………………」


アイギスが何か言いたそうだったが、渋々といった感じで納得したようだ。


そして、話しながら雪原を歩いてると中継地の村が見えて来る。情報収集がてら、今夜はあの村で一泊の予定だ。聞いた所、他の村との交易路にもなっている宿場町との事だった。


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