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神祖の妖精王〜妖精騎士アイギスさんの冒険の日々〜  作者: フィリクス
第3章 妖精達の冒険ストラテジスト
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第二十六話 妖精騎士アイギスさんと続・悪党退治の強襲大作戦(4)



王城での戦闘は戦鬼将ガレアスが敗れた以後は大した抵抗も無くもほぼ制圧を完了した。


最後に王国側が辛うじて築きあげたとおぼしき防衛線――通路にバリケードや魔法障壁を張ってこちらの進軍を阻止しようとした守備兵達を蹴散らし、わたし達は目的地前に辿り着いていた。



「やっぱり戦力差が圧倒的……手心加えても制圧に2時間足らずか」

「まだ、玉座の間が残ってますけど……」

「残ってんの王様と取り巻きくらいでしょ? ――ティアエルさん、どうよ?」


「護衛の兵が20くらいかな。そんなに手強てごわそうな人居ないね。このまま突入しちゃう?」

「もちろんよ。降伏勧告だとか、やるんだったら最初にやってるでしょ……」


特に今回裏で糸引いてたロクス教国が揉み消す為に出てくる可能性が高そうだもの。悠長にことを構えられない。


「……何がどうなってるかは知んないけど連中には詰め腹切って貰わんとな……いつも下っ端は責任ばかり押し付けられるって相場が決まってんのよ。そして、遂に年貢の納め時ってね」

「相手が王さまでもアイギスさん容赦ないなぁ」

「連中がいつもやらせてる事よ。今度はおまえの番ってな。調べて情状酌量の余地があれば考慮してやんよ。良し、突入!」



そして豪華な装飾が施された扉を開けて王さまが待つ玉座の間へ一同で押し入る。

な〜にこのアイギスさん一度やった事がある。

手慣れたもんよ。


実際、王さまがきざはしの上の玉座に、その周囲に貴族服着たヤツら、そして護衛の兵や騎士が立ちはだかるという想定通りの場面に出会う。

その連中の様子を垣間見てから、わたしは一歩前に出てご挨拶した。


「出迎えご苦労さま。悪いね、会談の邪魔しちゃってさ」

「………………」


……おっと、緊張を和らげる為に軽口叩いたけど、王さま含む連中から気の効いた返事がない。ベイグラム帝国の皇帝の時はぐに反応があったんだけどな。

仕方ない、軽口叩くようなノリがいけなかったのかと居を正して改める。


「……わたしは妖精騎士アイギス・フェアリーテイル。最近、立ち上げた〈妖精連盟〉という組織の代表よ。聖魔帝国及び真人類帝国との協力という形で貴国への査察で訪れた次第。……罪状を告げる必要はお有りかな人間の国の王さま?」


慇懃無礼いんぎんぶれいといった態度でかしこまって申し上げる、騎士っぽくね。


そしてわたしが返答を待っていると、玉座に座る王様の傍に居た人物――

まだ、少壮といった感じの四十代くらいの貴族がきざはしの上から王に代わって返答した。



「……私は王国の宰相バリスタンである。妖精連盟に付いては通達を受けて知っている。して、アイギス殿下。如何いかなる次第で我が王国に軍勢を差し向けたのか、是非お教え願いたいものだな」

「世界条約にける魔法技術拡散防止条項に抵触する恐れ、というのがわたしが聞いてるおもな理由よ。他にも麻薬生産だとか余罪が多そうだな」


「王国宰相として断言するが私は預かり知らぬ。何より世界条約なるものに我が王国は関わりを持たぬではないか。仮にも一国の王都に攻め込む理由にしては根拠薄弱。妖精連盟は正当性も問わずに国家の主権をないがしろにさるのか」


「なかなか上手い言い方だな。褒めてあげましょ。ただ、結論から言えば答えはイエスだ。わたし個人の正義に反してないかが重要で、おまえ達の主張する正当性とやらを認めてないからな。そして、力があるから押し入った次第――」


わたしは腰の鞘に戻していた剣を抜いて、きざはしの上の方の連中に突きつける。場の空気を読んだのか連れて来た〈黒色邪鬼兵団ブラックグレムリンズ〉の連中も斧槍ハルバートや自動小銃を一斉に突きつけた。

空気が読める兵士、優秀だな。ウチの悪妖精どもだとつい手出ししそうで迂闊なことできんぞ。


「――必要なのはこちらの根拠であってそちらではない。ここであれやこれやと問答していてもわたしの根拠を崩せるとは思えんし、貴様らを納得させる理由もない。実際、証拠は抑えている。後はおまえ達に聞けば話が早いでしょ?」


「それが、小なりとも一国の王侯に対する態度とは……外交儀礼プロトコルさえ重んじる必要はないのだな。……もはやこれまで。しだな」


宰相のバリスタンが状況を見て取り諦めるように首を左右に振った。そして玉座に座った老境の域に達した王様に腰を低くしてかしこまる。


「陛下。恐れながら、これ以上の抗戦は無為むいに終わるかと思われます。ここは苦汁くじゅうを飲み込み、諦めるしかございませぬ」

「…………馬鹿な、バリスタン! こんな馬鹿な事があろうか! 余は国王であるぞ。なぜ、唯々諾々と屈さねばならん。余が何をしたというのか!」


「陛下。事の軽重けいちょうを思えば致し方有りませぬ。王家の未来に係わり有りますれば……」

「馬鹿を言うでないバリスタン! このような乱暴狼藉らんぼうろうぜきを許せと言うのか。それこそ王家の未来に暗雲をもたらす事になるぞ」

「もはや選択の余地がございませぬ。詮議の場は設けられましょう。……有終完美とは申しませぬが、陛下のご助命は確約させまする」



宰相の発言に瞠目どうもくして驚愕の表情を浮かべる玉座の老人。まさか、そこまでの事になってるとは思ってなかったのかな、この王さま。


いや、普通に考えたら生命いのちの危機まで考えるでしょ。居城に攻め込まれてんだよ?

しかも一国の首都、王都に。想像力足りてなくないかな。


「あ、有りえぬ……貴様! バリスタン! 余を売ろうというのか!」

「王家の未来を思えばこそです。陛下。大国間の争いに巻き込まれれば王家のみならずこの国がどうなるかさえ知れぬのですぞ。なら国家の安寧あんねいを図る為、重責をまっとうする事が大事。これ以上に陛下の名誉を保つすべは有りますまい」


「何が名誉か! 白々しらじらしい。生命いのち惜しさに悪鬼、悪魔のたぐいに身を売りおって! だから聖魔帝国との国交を開くなど反対したのだ。それをバリスタン貴様がっ。おのれ! この逆賊が! ――ずはこの逆賊を切り捨てい!」


いきなり激昂する王さま。

なんか内輪で揉め始めたよ……。

唐突過ぎて、わたし達に対峙する騎士や近衛兵も状況に付いて行けてない状態だった。


この土壇場で肝心の王様が自暴自棄って、兵にすれば心境複雑になるものよね。揃って困惑顔になるのも無理がない。


「宰相をるくらいなら先にこっちを相手してもらいましょうか。それにその様子だと後ろ暗い事の一つや二つは有りそうだな、アウレリア王」

「ええい、その者の口を黙らせぬか! 何をしておる敵は兵ぞ。さっさと敵を打ち倒さんか」


めろ! もはやコレまでだ。これ以上戦って何になる。陛下もおやめ下さい。相手は帝国の騎士団を単騎で蹴散らした万夫不当ばんぷふとうの神話の騎士! 神々の領域の存在。元より勝てると思う方がおかしいのです」

「バカな。このような小娘如きがそれほどの者である筈あるか! ええぃ、余が耄碌もうろくしたとたばかりおるか! 何をしている、さっさと討ち取れい!」

「「「……………」」」



王様と宰相という権力者のトップ同士が相反することを言うから近衛達が身動き取れなくなってる。お互いに視線だけ見合わせ戸惑いを隠せてないぞ。


まぁ、仮にもプロならわたしの強さの一端くらい解るだろ。王様が戦闘の素人過ぎてまるで解らないようだけどね。

そこでわたしはおもむろに剣と盾を持ちながら歩いて近づいて行く。


勿論もちろん、斬り掛かって来たらブチ殺すと目つき鋭くしてよ。

殺気って奴をガンガン出すよ。

ちなみにこの状態で本当に向かって来たら斬り殺すぜ。心の底から殺るぞ? って心境にならないと殺気出せないもの、わたし。


そしてそのまま近衛兵や近衛騎士を押し退けるようにわたしは謁見の間の赤絨毯の上を歩み、階段前に到着。


ガレアスのおっさんほどじゃないと遊び相手にもならないからね。一騎当千ですら雑魚。万夫不当でやっと戦いを楽しめるわ。

尚、こちらはノーダメージでな。



そしてわたしはきざはしの上の玉座の老人を改めて見据えた。


「さて、チェックメイトだ。兵にも見捨てられたな。何より元々はおまえの臣下でもないだろ。……王妃と宰相に免じて投降するなら助命してやる。嫌だというならわたしは預かり知らん」

「……馬鹿な。余はこのアウレリアの正統な王なる者ぞ。余こそ神々に選ばれた者なのだ。その余がなぜ降らねばならん」


「なら、神々にも見捨てられたんだよ。いや、最初から見ても居なかったのかもね。わたしも神々の領域らしいけど、信徒の面倒をイチイチ1人ずつ見ちゃ居ないからな。……おかげで悪さをするおまえのようなのも見過ごしちまうんだろうね」


王権神授説かな? どうしていきなり神々の話が出て来るのかさっぱりよ。やっぱり偉い人の考えてることは解らん。自分は偉いから何をしても良いとでも思ってそうだよね。

与えられた権力を免罪符にしてさ。

じゃ、通用する相手としない相手が居る事を教えなきゃ。このアイギスさんは通用しない方だと教えてやんよ。


「お、おのれ口惜しや。後一歩、後一歩だったのだ。それを貴様らのせいで……。愚か者どもめ! 今に後悔するぞ! ロクス教国が黙っておる筈がない、このような言い掛かり……今にも大軍を引き連れて来おるぞ」

「愚かなのはお前だよぉ。せっかく宰相が言葉濁してその教国との関係を伏せてたのに言っちゃうんだもの……吐いたつばは元に戻せないぞ。で、どうして大軍引き連れてわざわざこの国に来るんだ? 洗いざらい喋ってもらおうか。おまえらの悪巧みをな」



そのままわたしは玉座のある段上に上がる。

剣を突きつけ、わたしの後に続いた黒色甲冑の邪鬼兵が老人を拘束するの。

そこに居たのはもはや王様でも何でもなかった。


癇癪かんしゃくを起こしたただの老人でしかなかった。威厳も何も有りはしないよ。

喚き散らすから猿ぐつわまでされたし。


ヴィリア姫を狙われた件をわたしは忘れてないしな。ロクス教国とのことをしっかり根掘り葉掘り喋ってもらおうか。やられた事はきっちり仕返しするぜ。


――ただ、この後、容赦なく王様を尋問に掛けたら予想以上の悪行悪業あっこうあくぎょうが吐き出されるの。

こんなの助命なんて無理よ! ってわたしが叫び出しそうになったわ。


おまっ、何処どこまで人権踏みにじる計画に手を貸してたの。しかも麻薬密売の組織とは別口でよぉ。免罪符にも限度があるわ。


そして、果てしない人体実験の末に生み出されようとしていた、不老不死を実現する為の計画が明るみに出たのであった。



しかも何処どこで聞いたのか、アリーシャちゃんが拷問得意な悪霊連れて来たの。やっべえ、見たことないくらい幼女のご機嫌が斜め下だったわ……



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