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神祖の妖精王〜妖精騎士アイギスさんの冒険の日々〜  作者: フィリクス
第3章 妖精達の冒険ストラテジスト
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第二十三話 妖精騎士アイギスさんと地下帝国遺跡とアレスタの街(1)



その遺跡の中は暗く、何処までも続くかのように複雑な構造だった。

まさにダンジョン。


地下に張り巡らせた通路は無機質なコンクリート壁に覆われていて、風景が変わり映えしないのが頂けないけど……



「大概の古代魔法文明の遺跡はシェルターだった。って聞くからみんな似たような感じなのかな、アリーシャちゃん」

「うむ。大体コンクリート仕立て」

「……無用な装飾だとかレンガとか積まないか」


先頭を歩くわたしとアリーシャちゃんが並んで歩を進める。他のみんなも二列で進んでる。

パーティーの編成は……


妖精騎士アイギスさんと幼女アリーシャちゃん(目玉姿の智天使付き)

アイリ(戦士)とアスタロッテ(魔大公)。

戦神司祭のセレスティナさんに森祭司ハイドルイドのシャルさん。

そして最後方にレンジャーのティアエルさんが警戒しつつ守りに付いてる。


3人で前衛張れるくらいの広さは有るけど4人だと身動き取れなくなる幅。そんな規則的な幅がずっと続く通路をわたし達一行は歩み続ける。

ちょっと殺風景だから飽きが来るくらい。

何より冒険するにしては緊張感がイマイチなくてしっくり来ないんだよね。


「なんか思ってたより安全なんだけど……?」

「ふむ……?」


……かれこれ一時間くらい歩いてモンスターとか出ないから。

アリーシャちゃんも小首を傾げてるよ。

遺跡の最初の層でも危険って聞いて来たから拍子抜けしてるんだよね。


この世界、小一時間歩いたら平原でも魔物に出会うのが普通なの。

森とかなら三十分足らずで襲われるくらいだもの。途中の第三階層にあるキャンプ地までの最短ルートを辿ってるのが理由?

と、わたしが勝手な想像してると微かに物音が聴こえて来た。


「やっとお出ましかな。……いや、結構遠い?」

「誰か戦ってる。ザフィ、状況は?」


アリーシャちゃんが宙に浮く智天使に問うと、その目玉姿の天使の目から宙空に映像が投影される。


映像では冒険者らしい一行が戦闘中……


「相手が人間? ギルドで聞いた襲撃者レイダーとかいう連中か」

「良い。どうやら見せ場の時」


おっとアリーシャちゃんがやる気だよ。

もちろんわたしも異論はない。

襲撃者レイダーってダンジョンの探索者狙いの賊だもの。魔物より殺しても良心が痛まない残念な連中だよ。むしろ殺らなきゃ。


それに急がないとちょっとマズイ状況だった。


冒険者一行は前後を挟みうちにされ逃げ場のない場所で撫で切りにされてるの。捻り潰されるのは時間の問題って一目で解る。


「で、この場所までのルートは? もう、冒険者たちが持ちそうにないけどアリーシャちゃん」

「問題ない、転移魔法で行く。手を繋ぐが良い」


そしてわたし達は数珠じゅず繋ぎに手を合わせる。


一瞬で状況判断して意思統一する。

冒険者としてプロ過ぎるな、うちのパーティ。

そして次の瞬間には転移魔法で一気に空間を跳躍して戦闘現場に到着したのだった――





辿り着いた瞬間にわたしは技能スキル〈幻想妖精〉で眼の前で戦闘してる一行を光速ですり抜ける。

前後から襲われていて、その戦闘の後方に転移したからもう一方の戦闘に参加する為。


〈幻想妖精〉のスキルを解除した途端にわたしの剣が襲撃者の首を落とし、次いで左手持ちの盾で手近の奴をコンクリートの壁に吹っ飛ばした。


おっと、やり過ぎてコンクリ壁に人間大の染みがへばりついちゃったよ。

内容物で朱く血に染まる前衛芸術の誕生。

何が起こったのか理解できない顔をした襲撃者と冒険者。その一瞬が生命取りだよ、賊の方は。


わたしはちょっと本気を出して秒単位で賊どもを剣と盾で撫で切って行く。


もはや何も考えなくても身に付いた手慣れた作業。

殺しは慣れよ。

剣で首を落として、盾の縁先でも首を落とすの。

別に首だけ狙ってるんじゃなくて胴体ごと叩き切ったりもしてるよ。


身体ごと体当たりする感じで一気に賊どもを始末して行く。4秒くらいで七人始末。

これでこちらの戦闘終了。

相手が雑魚だと大体、瞬殺できる。


まだ雑魚でも色んな種類の魔物の群れの方が面倒、体格違うから個々に戦いかた考えないと効率的に殺れないもの。


さて後方の状況は……

と、わたしは振り向いて確認する。

手早く向こうも戦闘が終わってた。



「でも手酷くやられたな、生き残りは結局6人か……」


狙われたのは冒険者と荷物持ちの一団だった。全員で十二人。

冒険者の護衛が前後で3人ずつ付いてたけど、荷物持ち含めて半数が殺られて、更に残りが全員重症で壊滅状態に。


「……セレスティナさん重症人は治癒したけど」

「死者の蘇生は私では無理そうです……ちょっとこれでは……」


目を覆いたくなる惨状がわたしの目に映る。

襲撃者に〈火弾ファイアーボール〉とか〈炎踊フレイムダンス〉とかの魔法を使われたみたい、見事に黒焦げ。中途半端に焼けてるから余計に生々しいぞ。


蘇生魔法も万能じゃなく肉体と魂の状態次第だからね。

ぶっちゃけ肉体の方はわたしだったらなんとでもなる、けど……


「魂も肉体がこの状態では星幽界に旅立ってますね。アリーシャちゃんなら何とかなりますか?」


幼女アリーシャちゃんがどこか遠くの方にその蒼い目を向ける。

けどすぐに小首を振った。


「……魂が星幽の彼方に行きたいっぽい。自由にさせてあげるのだ」

「ああ、やっぱりこの世への呼び出しは無理そうですか」


余っ程の未練がないと魂を引き戻すのって難しいらしい。魂そのものの強さとかも関係してるそうだからね。


「と、なるとこの状況どうするかな」


重症人の治療は済んだ。

けど、直ぐに全快って訳には行かなくて、みんな体力が限界なんだよ。

言葉も呂律が回らないような状態で、事情を聞くのもはばかられるくらい。

かなりギリギリの状況だったからね。


「〈生命活性リジェネレーション〉の魔法で無理矢理動いて貰う?」

「アイギスさん。副作用が怖すぎますからやめましょうよ。皆さん生きるか死ぬかの状態で治療したので、ちょっとこれ以上は……魔法が切れた時に元の状態になったらショック死しそうですし」


……むぅ。そこまで有り得るとは。

元の体力が多ければそうでもないんだろうけど、若手の冒険者の一般的な生命力じゃ保たない可能性が有るとかかな。


そうでなくても荷物持ちは冒険者見習いだとか、ただの雇われとかのようだから……


「なら、ここは生存者連れて一度撤退した方が良い? 他に妙案ある人」

「ん~賊さんも捕らえてるから戻っても良い。この辺りならまだ転移魔法が使える」

「アリーシャちゃんの意見が無難かな?」


とわたしが見回すと、悪魔呼び出して賊を尋問してたアスタロッテがこちらに戻って来た。



「あら、もうお帰りに? これから獲物の解体ショーのお時間ではなく?」

「おっと相手が人間でも魔物扱いで素材採取とか容赦ないよねアスタロッテ」

「狩った獲物を余すことなく使い切るのは狩人の嗜みと申しますし……ほら、魂も」


と、アスタロッテの刺繍レース付きの白手袋で覆われた手の平の上に、物質化された賊の魂が載ってるの。

悪魔的所業だよね~。やる事に人権への配慮が一切ないな。


下手に生きてた方が人としての尊厳を蹂躙されるとは襲撃者レイダーたちも哀れ。同情はしないけど。


「その魂どうするの? 悪魔たちの餌?」

「餌とは人聞きが悪いですねアイギスさま。崇高な悪魔たちの使命へのささやかなご褒美ですわよ。それに少々面白い話も聞けたので」


「面白い話?」

「どうやらこの冒険者の方々は第三層のキャンプ地への輸送隊のようですが、嵌められたようで」

「成るほど……それは面白そうな話ね。きな臭い」


「このまま戻ると面倒ごとに巻き込まれるかも知れませんね」

「冒険者ギルド絡みならね……いきなり厄介事だなぁ」


わたしの顔が笑顔になるよ。

良くある事だよぉ。そういう悪党どもが巣食ってるのって。舐めた真似してくれるよね。



「じゃあ街にはそのまま戻らない方が良いか……」

襲撃者レイダーのアジトが有るそうですから、一旦そこを拠点にしては如何いかがでしょう?」

「他に案がないならアスタロッテ案を採用するよ。それが無難に思えるし」


全く最序盤にいきなりのイレギュラーだよ。

でも、冒険ってこういう物だし。

何事も立てた計画どおりに上手くいかない、って考えるのが普通なんだよね。


柔軟に対応しないと足元掬われるのが冒険者稼業よ。掬われ尽くして一人前に成るものなの。

当たりどころが悪けりゃ死ぬってのが頂けないけどね。


そしてわたし達は襲撃者レイダー拠点アジトにしてる地下遺跡の場所を強襲して奪い取り、そこで状況を整理することにした。



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