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神祖の妖精王〜妖精騎士アイギスさんの冒険の日々〜  作者: フィリクス
第3章 妖精達の冒険ストラテジスト
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第二十一話 妖精騎士アイギスさんとシル・ヴェスター公国での冒険者稼業(5)

すまぬ、ストックが無いのだ。

よって明日の更新は多分ないのである。

(´・ω・`)〈 夏バテとか体調不良らしいぞ。



後日、採伐しすぎ村の付近。


かつて森があったであろう場所で、わたしと森祭司ハイドルイドのシャルさんがもり妖精の子達を連れて、早速、森を復活させる為の下準備をして居たの。



まずは邪魔な切株を樹木妖精トレントたちが魔法で疑似的な生命を与えて、自力で地面から這い出させるの。

そうして増やした魔法の切株たちを労働力にして点在する切株を仕分けたり、魔物に対する作業中の護衛にするの。


切株も生きていて、また芽が出て樹木になるものが有るので全部は引っこ抜いちゃだめらしいよ。


後は森の奥地で植生にあった樹木の苗を見つけて来て植えるの。他にも土壌に魔法で栄養を与えたりとやる事一杯よ。



「でも、シャルさん。労力は掛かるけど3年で"森"にはできるって凄いよね」

「いえ。森としてこの土地に根付かせるにはそれでも十年は掛かるので……以前と同じように森に住まう者たちに恵みを与えるにもそれくらい掛かってしまいます」

「充分だよ……本当に自然に任したら何十年も掛かるんだから。ただ、人間どもの後始末だからね……」



最初は自然に任せようかと思ったんだよ?

でも森近くの村って魔物に対する防波堤にもなってるんだって。

他の近くの村を囮になって守るような形でね。

だから、伐採し過ぎ村を放棄してしまうと近くの村に魔物が行ってしまい困るの。


かと言って肝心のやらかし村は伐採を禁止され生活能力が皆無。なら森を復活させるしかない、という結論に達した事でもり妖精たちの出番になったんだけど……


「……そりゃ、お前ら困るだろうけど後始末は妖精たちだよりって、なんか納得いかなくない?」


「ですが、アイギスさまがそれを良しと成されたのでは……」

「その代わりにこの国を好きにする対価だから仕方なくだよ、シャルさん。魔物たちも住処がなくなれば困るしね。ただ……もり妖精の子達がいつもこんなのじゃなかったのかなと思うと余計にね」



いつも誰かのやらかしで自然が壊れてそれを直していくの。"私"に言われた事だし、もり妖精の子達はみんな喜んでやってるからとても水差すことを言えないけれど。


「……アイギスさま。それが私たちの使命なんです、自然を育み慈しむ……私も思う所がない訳ではありません。ですが、私たちが成さなければ誰がするのでしょうか」

「……シャルさんは正直だから好きだよ。使命感って大事だよね。でもそれだけじゃいけないと思うのよね。だから、頼れる奴らを呼んだんだけど……遅いな」

「……?」


ギルマスが村潰したら不味いって言うからさ。

なら、少しは手伝えって言ったら手配してくれたんだよ。冒険者ギルドも人材は居るんだよね。変わり種だけど。

そして、わたしが丁度、唸ってると待ち人たちがやって来る。


「あの方たちは……?」

「あれ? シャルさんは知らない? 雰囲気が独特だから一目ひとめみたら解る人達だけど」


もう"自然"を崇拝してるって人達なんだよ。

通称はそのまま"ネイチャー"。自然派と呼ばれる人達で元々は森司祭ドルイドの森や大自然への信仰から派生した考えを持つ人達なの。


地球の歴史だとヒッピーと呼ばれる人達や文化に近いかな。カウンターカルチャーと言うより自然崇拝を同じくする人達が集まって、その文化を受け継ぎ繋いでいく集団だけど。


そして個性を尊重するという文化だからか服装がみんな独特なの。革服で身を固めた人から動物皮は信念に反すると一切着ない人。金属禁止から、金属も自然だと全身プレートアーマー装備も居る。


この一見、不統一な集団が集まると途端に個性の集まりになるから見れば解る。何処に居ても一瞬で。


そしてその集団がわたし達の元に辿り着く、前に進み出たのは顎髭を揃えた比較的まともそうな森司祭ドルイドのようなおじさんだった。



「お初にお目に掛かりますな、拙僧は自然派ネイチャー森司祭ドルイド。バームと申します。かの名高き神祖の妖精王さまの系譜に連なる方とお見受けいたします」

「その通り、アイギス・フェアリーテイルよ。遠路遥々はるばる、ご苦労さま。話しは聞いてるかしら?」


「我らに安住の地をご提供頂けると、そうお聞きしております」

「代わりにこの地を魔物から守ってくれればね。森の再生の件は?」

「無論のこと。傷つけられた森を新たにすると、然と。……おお、まさか樹木の妖精たちがこれほどまでに」



遠くで樹木妖精トレントたちが働いている姿に気付き、感動に胸打たれたように感嘆するネイチャーたち。十体も動く大きな樹木の姿は確かに一度には見ないものね。


「まさしく噂どおり妖精王さまでございましたか。もり妖精たちからもお噂は伺っておりましたが……いや、失礼いたしました。何分この目で見るまでは信じられず」

「まぁ、実物見なければ信じられないでしょ」

「真実は一見に敷かずですな。では、我らもさっそく役立ちましょうぞ。皆のもの、長旅で疲れてるなどと申すまいな」


「応!もちろんだ」

「森の賢者と働けるなぞ願ってもない」

「これこそ我が使命だ。大地より運命を感じた」

「見て木株が動いてるわ。あれが意思なきトレントと呼ばれるものじゃないの」

「素晴らしい。もり妖精たちの奇跡を目にする事ができるとは」


そして口々に意気盛んに元気よく答える野郎ども。

実に頼もしい限り。何せ妖精ばりに自然と共に生きる事を至上とする人達だからね。


考え方が独特なので異端視扱いされてる腫れ物集団なんだけど……

集団で集まって冒険者パーティーとして活躍してるから、冒険者稼業では有名どころなんだよ。



そして森司祭ドルイドの隊長が16人の同士たちを引き連れ樹木妖精トレントたちの所へ向かった。


「変わった人達でしょ? あれでも気の良い連中なんだよ。考え方が独特だけど……自然を尊ぶということを生き方にしてるんだって」

「知りませんでした。まさかあのような方々がいらっしゃるとは」

「里の妖精人エルフの人たちとは考え方が違うから結構仲違いしてるって聞くし、知らなくてもおかしくないよ。あいつらもやらかし要員だからな……」


冒険者パーティーとしてはその集団の団結力で知られて頼りになる人達なんだけど、過剰に獲物を狩ったりだとか魔物を無闇に傷つける依頼とかが有ると敵に回る時が有るらしいからね。


冒険者ギルドとしても困りものの集団なんだよ。

村と揉め事起こしたりするし。

でも、わたしからすれば連中の筋は通してるから悪くはないの。ただ、人間の都合とぶつかると魔物や自然の味方をするというおかしな連中なだけで。



「……でも気の良い人達だよ。生き方に純粋さが有るの。あの人達ような生き方や考え方は身体に馴染んだものだと思うもの」

「……アイギスさま。私はまだまだ未熟者です。私はあの方々のように純粋に自然を愛するような心境には至って居なかった……」


「いや、シャルさんは充分過ぎるぐらいだって。う〜ん。言い方が悪かったかな? シャルさんはちょっと肩の力抜いた方が良いと思うの。……仕事任せまくって言えたことじゃないかも知んないけどさ。可愛い顔が沈んじゃ勿体ないよ」


いつも真剣な表情してるんだもの。ただ、考え過ぎなきらいが有るの。それが気に掛かるのよね。

逆にわたしが考えなさ過ぎな事は置いとけ。

アイギスさんはフィーリングで生きている。


そしてわたしはエイっと声掛けて抱き着いたりするの。困ったらボディスキンシップだよ。


「あ、あのアイギスさま」

「当ててんだよ。鎧の胸甲だけどな……馬鹿な冗談は置いといて。難しく考えることないよ。やりたい事やれば良いの。仕事任せ過ぎだったら言ってよ。まぁ、逆にやらないと気が済まないって場合も有るから……我慢はしないでね。頼りにしてるぜ相棒」

「は、はい……お気遣い有りがとうございます」


フード越しに顔真っ赤にしてるのがわたしには解るぜ。これだから男のは堪んないよね。

しかも見た目、美少女の幻想系エルフだもの。


女の子だったらわたしが放って置かないくらいだよ。……アイリと良い感じにならないかな?



今日もアイリと一緒に来てるんだけど、森の奥でザランバルのクローン体と緑触妖精オチュッグたちとで苗木探しに行ってるの。

と、考えてたら一緒に戻ってくるアイリたち。


「なんであいつら空飛んでるの……」


森の上空から二本の触手をヘリコプターみたいに回して飛行してきたよ、緑触妖精オチュッグたちが。

ただでさえイソギンチャクみたいな胴体に大口開けてる妖精とは考えられない姿なのに通常の生物からもかけ離れた事してるんよ。


「なんだ! あれはモンスターか」

「いや、女の子が乗ってるぞ、デカい奴に」

「嘘、信じられない。あれはオチュッグよ」

「オチュッグって空飛べんの!?」



そして自然派ネイチャーの人達の脚光を浴びてわたしたちの目の前に垂直着陸してくる、オチュッグたちのロード、そのクローン体。と、その身体に乗ってたアイリ。


『ふははっ! 見つけて来ましたぞ。聖下! 苗木を』

「ザランバルよぉ。眷属まで品種改良してるな、おまえ」

『おや。これは申し遅れましたな。さよう、飛行型オチュッグ。回転緑触妖精ローターオチュッグたちですぞ。降下作戦も遂行可能なようにと飛行能力も持たせた次第。それ』


掛け声と共に地上に降下したオチュッグたちが、次々に胴体の大口から小型の自動小銃サブマシンガンのようなものを緑の触手で取り出して来た。



『近代戦にも対応しておりますぞ! あの小癪な黒いの、黒色邪気兵団ブラックグレムリンズなぞに負けませぬぞ』

「なんで銃なんて持ってんのよ……」

『古代魔法文明の奴らの鹵獲品ですぞ。火力不足をこれで補う次第』

「降下猟兵かよ……」


『まさにコンセプトはそれ。迅速な兵員展開や個々で飛べるので自由に離脱、離散集合ができるように訓練しておりますぞ……森を守るならお任せあれ。我らもり妖精も自分の身は自分で守らねばなりませんからな……ゲリラ戦とか大得意』


森の中では相手したくない連中の筆頭だな。

視界の効かない森林戦で空飛んで自由機動してくんのよ。奇襲とかやりたい放題だよぉ。


「……良かろう、男の子のロマンがある。傭兵だよりなのもどうかと思うしね、妖精連盟の兵隊として使ってやろう」

『有難き幸せ。我らの森に手を出すやからに思い知らせましょうぞ……』

「これぐらいアグレッシブに森守るヤツらが居たら早々手出されてないでしょ、時代は自主防衛だぜぇ……自然はわたしたちが守る」


好き勝手にさせられないからな。人間たちがやりそうな事は解んだよ。この伐採され尽くした森は未来の現状を憂うに余んのよ。

時代が進んだら環境破壊しまくるからよ。無人の荒野はともかく緑溢れる森や河川を汚しまくるだろうからな。



「じゃあ、ザランバルよ。あそこに稀有な自然養護派の人間たちが居る。仲間として交流を持ってやれ。……人間と言っても毛嫌いすんなよ」

『ほお、この時代にもそんな者達が。ちょい昔にも居ましたな、過激派が同族相手にテロっておりましたぞ』


「……何処かの世界とやる事変わんないな。むしろ統制が必要か……なら、仲良くしろ。……あの連中もあわよくばわたしの支配下に組み入れる。本人たちにはバレないようコッソリだ」

『聖下もお悪ぅございますな……フハハハ、よろしい。ゼルドリスにも頭を使えと良く言われましたからな。仲良くしてやりましょうぞ、仲良く』


そしてザランバルクローンが背を向けオチュッグたちを引き連れネイチャーの人達と交流を持ち始める。似たような奴らだ、仲良くするでしょ。

そしてわたしはシャルさんに抱き着きながら囁くの。


「仲間が増えれば馬鹿な考えもつヤツらが少しは減るでしょ、敵対されるとすれば尚更にな。交渉するなら言葉とナイフを持つに限るぜ……やり方がちょっと物騒だけど人のモンに手出すんだ、これくらいはね」


覚えてるかなぁ? 人間ども。

他所よその世界は知らんがお前らを生かしてる"自然"は誰が作り上げたかを。

"私"はお前らにお恵みを与えてるに過ぎないぜ。

仲良くしたいなぁ、調子乗らせない程度に。


わたしは冒険者、危険請負人リスクブレイカーだよ。金さえ積めばなんでもござれ。もり妖精の子達に働いてもらってお仕事頂戴してるからね。


世界中のヤツら相手にやり取りしそうだよね。

生命いのちのやり取りにならないよう願っているぞ。

平和的にな。……でないと血の雨が降るかも。

わたしはそれほど優しくはないからね。



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