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神祖の妖精王〜妖精騎士アイギスさんの冒険の日々〜  作者: フィリクス
第3章 妖精達の冒険ストラテジスト
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第十九話 妖精騎士アイギスさんの家の恋愛模様と白雪妖精のお姫様(6)







わたし、アイギス。今とても困ってるの。

最近、わたしを好きな女の子がまた出来て、今お付き合いしてるんだよ。


わたしも……その子の事、嫌いじゃないの。

むしろ可愛いよ、がんばるお姫様で。


純粋な子ってわたし好きなんだ、ってあらためて思ったの。シルフィちゃんもセレスティナさんもみんなわたしが好きになった子って純粋なの。


心に曇りがない人って惹かれるんだよね。

どうしてなんだろうね。わたしを見てくれてるってだけで幸せで……


思ってくれるってだけで幸せで……幸せにしなきゃって思ってしまうのは。


「けど、結婚ってなるとちょっと覚悟が居るぅ」

「もう子持ちなのに覚悟も何も……必要か?」


姫さま置いて1週間くらいしたらジェラルダインがまた家に来たの。自宅じゃ話しにくいからパン屋の親父のとこで待ち合わせして。

茶菓子は奢らせたよ。



「来年……来年で? ヴィリアさんとも?」

「まとめて。悪くはない……そう聞いてるが?」

「1週間で計画進めるのは早すぎじゃないジェラルダイン」

「名目だけでも構わんが、そちらの方が都合が良くてな。神祖の妖精王と婚約の形、いずれは伴侶という形にしてこの領を抑える……何が問題だ?」


「……ジェラルダイン……たしかに結婚は女の子の夢だよ。愛しい旦那さまにお姫様抱っことかされてさ……でもそれ、する方、わたしなんだよ?」

「……なにを言いたい?」

「もう少し、もう少し猶予とかないの? 女の子が覚悟決めるには責任重くない?」


わたしの人生経験の少なさを考えて。まだ、子供じゃん。もう家庭持ってるみたいなものなんだけど結婚ってなると重みが違うの。



「王になると言ってた奴が今さらだぞ」

「家庭と王さまは別じゃない? 公私は別ける主義なの……わっかんないかなぁジェラルダインには」

「……解らないでもないが。アイギス、それなら尚更に私ではどうにもできまい。私がよその家庭の事情に口を出せるほど経験があると思うのか?」


確かになさそう。相談相手を間違えてる感はあるよ。でもね、相談できる相手が居ないの。

このアイギス。それは口が裂けても言わぬ。


「来年でやっとわたし10歳なんだよね……」

「物心つくのが5歳くらいと考えれば、15歳くらいだ。適齢期だな」

「適齢期でいきなり三人……」

「……アスタロッテは?」


わたしの心境が急に冷めた感じになる。アスタロッテと恋愛って未だに想像もつかないんだよ。そもそもまともな恋愛する気あるの、アスタロッテって。



「……魔女王陛下とご親戚になるのはもう少し後にしてくんない?」

「その分だと悪くはないんだな?」

「わたしのハートはまだ揺れ動いてないの。良いお友達だとは思うけどね」


「ヤツの頑張り次第だな」

「外堀から埋められてる。わたしの恋人全員寝取られてから最後にやって来そう。……その時、わたしはどうすれば良いの……」

「…………」


黒髪褐色肌の闇妖精ダークエルフ、男前とも言える麗人ジェラルダインの表情が返答に困って硬直したよ。

色恋の話しに興味とかないから共感とかしてくれないけど、わたしの心情の理解くらいは多少できるでしょ。確実に最後に落としにくる、確信があるの。


「…………私に解るのは狙いは来年くらいだな。結婚式の費用は魔女王がポケットマネーで出してくれるだろう……心配はするな」

「そっちの心配はしてないの。わたしが責任に押し潰されずにやって行けるかってこと。アイリまで居るのに」

「子供なぞ勝手に育つさ……アイギス、おまえの娘だ。悪くはなるまい」


ちょっと以外。あのジェラルダインが口の端を緩めるんだよ。微かな笑みを浮かべるって感じで。しかもその後にお茶に口つけて飲むの。

他人事だと思って優雅だよね。



「ジェラルダインはさ……子供相手だと優しいのね」

「子供による」

「もうわたしは卒業なんだね……早くないか?」

「手間は掛けさせられるさ……今後もな」

「まだ、子供扱いしてくれるならもう少し優しくしてよ、ねぇジェラルダイン」


「甘えたい盛りなのは解るがな、アイギス。大人になるのはそれの逆だ。逆に甘えさせてやるのが家庭円満の秘訣ではないかな」

「わたしを甘えさせてくれるヤツが欲しいの……」

「難題、としか言いようが無いな……では私ではお手上げだな。さて、今日の所はこの辺にしたいが……他に用事はあるか?」

「……う〜ん」


結局、自分の用事だけ済ませてわたしの相談には乗ってくれないんだよね、ジェラルダインは。


人の気も知らないよ……まぁ、ジェラルダインに恋愛は無理だろうけど。

純粋な人なんだよ。……純粋に悪の道を歩む闇の世界の住人だもの。危険過ぎてわたしの恋心も冷める。


そしてわたしが悩んでる間にいつの間にかパン屋の親父に注文してた菓子折りをジェラルダインが受け取った。

そしてテーブルに置くの。


「手土産」

「そういう所、豆だよね。彼氏居ないのジェラルダイン?」

「興味がないな。それに家族なら間に合ってる。アリーシャに聞いてないか? 私も一家の長だぞ」

「なんか村長ってのは聞いた」


昔、村一つ作って今でもそこに住んでるらしい。

村長だなんてそんな柄じゃ絶対ないよね。

名士とか、屋敷構えてそんな感じでやってるそうだよ。


「アドバイスするなら気楽にやれ。としか言いようがない。アリーシャが昔、子供のエルフの奴隷を欲しがって無理矢理買わされたが、……いつの間にか大人になっていた。子供に関してはそんなものだ」

「言いたい事は解るけど……それ、放って置いたら勝手に育ったとかそういう事でしょ。参考にならないよ」


「家族なんだから責任は分担するだろう。という話だ。何も一人で負うこともあるまい。他の連中も無責任という訳でもあるまいし」

「……う〜ん。そうかも知れないんだけど……わたしが自信持てないんだよ……」

「やれ。それで済む」


ジェラルダインの端的な言葉にわたしは俯かせた顔をあげるよ。もうわたしもそれしか無いって解ってるの。


「解りやすいくらい容赦ない。自信なんてやってたらつくとか。……わたしが好きな人はみんなわたしの為なら頑張るの解ってる……」

「答えは出ているな。……」


そして用事が済んだとばかりに立ち去ろうとする暗黒騎士。付き合いきれないんだねぇ解る。

こんな面倒な女はわたしでもどうかと思うもの。



「はいはい。頑張る。十歳で結婚かぁ。また増えないと良いけど……」

「別に何人増えても構わんさ。好きなようにやれ」


そのまま素敵な捨てゼリフを残してジェラルダインは立ち去った。

これ以上増えたら身が持ちそうにないよ。

気が気じゃないもの。自分でも惚れられるのに弱いのに。


アイリに彼女とか彼氏できたら死にそう。

例の百合ハーレムシステムの存在もわたしに重く伸し掛かるし、ヴィリアさん上手くやれるかな、とか。


でも……


わたしは幸せだ。家族が居る素晴らしさを手放したくない。私は本当に……


「涙出てくるほどにね。嬉し涙だよ……でも泣いてる場合じゃないからおうち帰ろ」


お土産持って、みんなの笑顔の為に。





菓子折り持って家に帰る途中。冒険者の装いしてて仕事帰りのエルフのティアエルさんに会った。


一瞬、わたしと視線が交差したんだけど、わたしが私服着てたから誰か分からなかったな。

見逃さないぞ、その一瞬の空白。

ただ、直ぐに気付いて金髪ポニーテールを揺らしてわたしの元にやって来る。


「アイギスさん。一瞬誰か分からなかったよ」

「私服くらい着るよ。見分けつけようよ」

「うん。可愛いよね、いつもはカッコ良いから見直しちゃったよ」


さすが天然ハニートラップ。素で女の子を褒めてくる。しかも本人もボクっ娘なの。嫌いじゃない。

だが、このアイギスさん、簡単には落ちぬ。


「そりゃ、そういう服着てるもの。拝むがいい」

「へぇ~」


本当にわたしの周りを一周するの。天然だよね。

自分で言ったけど、そんな露骨に見られると恥ずいって、しかも純粋な好奇心で。

子供みたいな人だからねティアエルさん。本当に齢、千歳以上か?



「うん、すっごく似合ってる。良いなぁ、ボクも着たいんだけど普通の女の子っぽくなるから似合わないんだよね」

「女の子っぽい服嫌いなの? 可愛いじゃん」

「いや、ボクが着ると普通のエルフの女の子になるのが……何となく違和感があって……」

「個性ないのがイヤなのね。解らなくもないかな」


確かにポニーテールの髪降ろしてボクっ娘やめたら、典型的なエルフの美少女だよねティアエル。

村にいたら普通の娘並みの印象なくらい。


「アイギスさんは何着ても個性的だよね。もう、ボクも眼を一瞬奪われちゃったよ」

「ハートも奪われんなよ。わたしは今手一杯だよ」

「あ、また女の子連れてるって評判なってたよ。次々に手出してるって」


冒険者どもだな。いや、街中引っ張ってデートしてたから噂になるのも当然か。女の子好きってカミングアウトしてるから何とも思わん。



「わたしに手出されなかったら宿に帰るんだな。もう日が暮れるよ」

「アイギスさんに出されたら……」

「!?」


急にいきなり雰囲気だして俯くティアエル。

待てい! いつわたしがこの娘のフラグ立てた。


「その、……冗談だよね?」

「そんなボク、女の子に冗談なんて言わないよ。それだけ魅力的だよ、アイギスさん」

「ティアエルさん……何人の女の子と付き合って来たの?」


「待って。別にボク、女の子を取っ替え引っ替えとかしてないって。それ、いつも言われるんだけど」

「言動が危険だもの……勘違いされてもおかしくない。慎むんだな……ただ、褒めるのは悪くない」

「でしょ。ボクも褒められるの好きだもの」

「偉いぞぉ。仕方ない、家に来なよ。甘いもの奢ってあげましょう」


菓子折り持ってる手を上げて見せびらかす。

直ぐにティアエルは気付くよ。冒険者の中でも感覚が研ぎ澄まられた一流のレンジャーだもん。

そして甘いものが嫌いな女の子なんて居ません。


「やったぁ。久しぶりに甘味だぁ」

「じゃぁ、帰ろうか。ほら、手繋いであげるよ」



そして、恋人ごっこして浮かれ気分で二人して家に帰ったの。なんでそんな事したかって?

そりゃ気分だよ。友達感覚でふざける感じになりたかったの。結婚したらこういう事も出来なさそうじゃん。


そのまま一緒に家に帰ったらシルフィちゃんから、何してるんです、ってジト目食らったけどね。

でも、シルフィちゃん、ティアエルさん見たいな子も好きでしょ。って聞いたら顔赤らめるの。

……案の定、わたしのおうちの恋愛事情は複雑だった。誰か浮気してないか……?


って思った時に、ティアエル、うちのシルフィちゃんを誑し込むのやめい。フラグ立てんな。




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