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神祖の妖精王〜妖精騎士アイギスさんの冒険の日々〜  作者: フィリクス
第3章 妖精達の冒険ストラテジスト
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第十八話 妖精騎士アイギスさんと許す者、許されざる者(3)

ついうっかりまちがえて次の話の(3)を投稿してしまったのだが、気にしないで欲しい。

(´・ω・`)〈 予約投稿を間違えるんじゃない。



話は古代魔法文明時代に遡る。



魔法文明の終末期、なにをトチ狂ったか世界の国々が核戦争を始める。

怒った喰食王くしょくおうアバドンという神の一柱に登りつめた妖精ザランバル(悪魔、悪神と思われてる)が姿を現し、この大陸にあった文明の都市という都市を滅ぼしてしまった。


だけど、その時点ではまだこの大陸の魔法文明は完全には滅んでなかったの。


主要都市は滅ぼされ使役していた悪魔や生態兵器が地上を闊歩する時代。

残った人々は地下に都市を建設し難を逃れようとした。それが伝説に語られるのちの地下帝国、魔法文明の後継国家の誕生に繋がった……



『儂らはその時代に生まれた種族なのです。そのように先祖より伝え聞いております』

「ふむ、どう思う? セレスティナさん」

「いえ、アイギスさんの妖精言語は理解できるんですが、相手の方の言語は理解できないんですが……」

「おおっと。忘れてた」


改めて説明して聞いてみた所、その地下帝国で変異人種ミュータントたちが生まれたのはセレスティナさんも知識としては知っていた。

ただ、人工的に生み出されたのか、自然発生なのかはよく解らないみたい。


老人も自分達が地下帝国の末裔とは先祖から伝えられているようだけどそれは解らないとの事だった。

ちなみに他の人間系種族は半妖精ハーフリング以外は大半が人工的に生み出された種族らしいよ。



そして老人が語るのは地上の新たな神々に依る戦いも地下帝国に及んだとの事。闇の王に仕える魔神将が攻め込んで来たのだ。


悪鬼や妖魔、更に魔族を従える彼らとの戦いは熾烈を極めて遂に帝国は滅んでしまった。

けれど肝心の闇の王が倒され、侵略していた魔神将もその後に魔族達の王、魔王の反乱に遭い倒されてしまった。


「あ、魔神将が倒された理由は他にも色々パターンありますよ。他の大陸からやって来たハイエルフの勇者に倒されたとか。地下に眠る神々の一柱に倒されたなどなど」

「まぁ、その辺りは伝説だからね。『それで続きは』」



ただ、地下帝国が滅んでも老人の祖先達は各地の隠れ施設に逃れる事に依って難を逃れたの。

そして長い時が流れ、変異人種ミュータント達は地下施設が崩壊などで機能しなくなり地上に出るしかなくなった。


先祖たちはその時、自分達とは肌が違う種族が地上に居る事を知ったんだって、ただ彼らは同じ人間種族だというのに変異人種ミュータント達を忌み嫌い次々と地上に出た変異人種ミュータントは住処を失ってしまった……



「おそらく地上に残ってた人達との戦いになってしまったんでしょう。……青い肌に赤い目、魔族で無くても吸血鬼にも間違われるそうですから」

「でもセレスティナさん、吸血鬼ともりあった事有るけど肌の色とか変わらなかったよ? ちょっと不健康なくらいで」


「吸血鬼を見た事ある人そう居ませんって。……貴族だったんですね?」

「良くある話らしいね」

「あ、一応言っとくと盗賊ギルド関係で吸血鬼が居てな。デロス老の友人だから殺らないで欲しいんだが……」

「別にアンデッドだからという理由ではやってないって。こっちにも元エルフの妖魔の不屍魔術師デミリッチャーとか居るよ」



そしてわたし達が会話してると老人がじっと見つめるの。たぶんこちらとの意思疎通が困難なだけでこちらの会話の内容はバレてるな。


『それで元の住処に隠れ住んでたのが貴方たち?』

『左様でございます。儂らの先祖はこの最後の拠り所に隠れ住んで居たのです』


だが、今から百年以上も昔、遂にこの場所も地上の者たちに見つかってしまったらしい。


最初のうちはなんとか折り合いをつけて居たのだけど、五十年以上まえにこの伯爵領が独立国だった時代の王さまに研究に協力するよう強制され、軍隊を送り込まれたんだとか。


『それから儂らは運び込まれて来る魔物や人間たちの心を操り、実験の材料にしやすくなるような処置を施したりしておりました』

『具体的な実験の内容は?』


『それこそ様々さまざまです。最初の頃はアンデッドの研究が主でしたが最近は人間との合成による生態兵器を生み出すとか……』

『やはり種族的に精神系魔法の使い手か……』

『隠し立ては申しませぬ、めて子供らはお見逃しくだされ。罪が有るというのならば儂らが被りまする』



わたしは少し考える。実験に関わって居ない者を見逃すのは当然と思うけど、それ以外の者をどうするか。種族的に立場が弱かった。

というだけで罪は許されるのか……


「と、言ってるけど聖職者のセレスティナさんの意見は?」

「贖罪には罪の自覚と悔い改める心が必要不可欠です。どのような立場でも罪を犯したという点は変わり得ない……聖典からの引用で未熟者の私が説教するのは気が引けちゃうんですが」


『だってさ。言葉は解るでしょう? 罪が有るというなら悔い改める機会は与えよう。もちろん死や苦痛を伴う以外の方法でな。但し、罪の重さがこちらの想定限度を超える場合はその限りではない。それが嫌なら死んでもらう。具体的な処置に付いてはこちらも検討する。身の安全については逆らわなければ保証しよう。よろしいか?』


『…………儂らに否応は御座いませぬ。どうか寛大な御心をもって御慈悲を願いまする』

『……可能な限りは考慮しましょう』







結局、あの変異種族ミュータントたちに関しては一旦、聖魔帝国預かりになった。


状況証拠からでも王国法に照らすと立場的に不味いんだってさ。

生命倫理に反する知的生命体との合成は、極刑なのがこの世界の普遍的なルールらしくって。

まともに裁判すると減刑しても死刑は免れ得ないらしい。つまり、それ程最悪な行為なのでいくら立場が弱くても許されないんだとか。



ただ、それはさすがに状況的に酷な話なので、聖魔帝国から待ったが掛かったの。


どのみち政治的な判断が必要で聖魔帝国とヴェルスタム王国が伯爵領を巡って外交合戦をやってる状況ではその判断もくだせないらしいし。


自宅の居間でそんな事を考えてるとセレスティナさんがやって来た。


「何か悩みごとがあるんですか、アイギスさん」

「……あのミュータント達のこと、思い出しただけだよ。結局、村の再建は諦めてあの人達の保護区みたいにするって連絡あったから」

「ああ、魔法文明時代の遺跡も有るので掘り返すとか言ってましたね」


「まだ伯爵領が手に入るとは限らないのに思いっきり計画進めてるもの」

「生活の糧が無くなるので進めてる面もあると思いますよ。アリーシャちゃんが置いて行った調査報告書と計画表見てみると自立支援も兼ねてるとか書いてましたから」

「まだ、一週間も経ってないのにやる事速いよ……」


って、当のアリーシャちゃんに言ったら善は音速マッハを尊ぶ、と力強い言葉が返って来たよ。


今は天使たちを連れてミュータント達のアフターケアをしてるらしい。聞けば精神的にもストレスで心が不安定な人が多かったんだって。


肌の色が違うというだけで同じ人間だという認識はあったらしいから。特に他者への共感に優れた種族だから余計に……

でも、なら尚更なんとかできなかったのかってわたしは思うの。悪党連中に従い続けたら悪党と一緒に始末されても文句言われないよ。

改心なんて待つほどこの世界は甘く無いもの。

でも、


『あの者たちに許しを与えるのだアイギスちゃん。許すことは自分の心を救うことに繋がる。善き心を育て、人々を導く真の王さまになるのだ……』


多分、アリーシャちゃんがわたしの事を心配して言ってくれたと思う。あのえげつないのをアリーシャちゃんも見たらしいからね。


でも、罪には許しが必要か……

わたしは考えた事はなかったな。


「人を許すという事がわたしには解らない。わたしに王さまはまだ難しいよ。セレスティナさん。」

「そうですね。……私も」


わたしの人生、ひたすらに悪党を叩き切って来たんだよ。理由は簡単、許せないの。


だから、人を許すというのが簡単ではない事が解る。簡単に許してはいけないし、けど何処かで許さないと歯止めが利かない事も……解る。


難しいよ。


わたしはまだまだ大人に成れない。

必要あるの? とすら思ってしまう。


"力"がある分それを押し通せる。

つい、許せずにやっちまう。わたしがやらずして誰がやるのかってね。

そんな小物倒しても世の中あまり良くならないのは解ってるんだけど……



「で、……どうするんです? その、お見合いの方は……」

たまにセレスティナさんも突発的なこと言うけど、突然の話題の転換に戸惑うよ。


え、普通はこの話の流れでそっちに行かないよね。

ミュータントの話だよ、今までしてたの。

確かに一緒にお見合い話をアリーシャちゃんが持って来たんだけど。


「……お見合いの話は……。別にほら、わたしが求めたんじゃないんだよ」


前にゴブリン村の詫び入れで、伯爵領あげるから伯爵の生命助けて欲しいって提案出されるんだもの。

伯爵が責任取る形で爵位返上して、伯爵家の当主も本来の当主にするんだってさ。

そして領土はお好きに、って感じらしい。


すべて投げ出して来たな、と少しは感心したんだよね。


元々は伯爵も跡継ぎ候補がどうしょうもないクズで仕方なく継いだらしくって。この領の統治がしっかりできるなら未練はないとか言ってるらしい。


てか、全然知らなかったけど、そのクズ殺ったのわたしだったりするんだよ。本当にクズだったから納得しちゃった。

たまたま王国に来た頃にやったヤツだった。

ただ、その本来の当主さんからお見合い話が。



そして……


「でも、受けないと相手の立場有りませんよね? アリーシャちゃんから相手さんの恋文まで渡されましたよね」

「どうして惚れられてるのよ……」

「アイギスさんが始末した貴族。暗黒神殿にも関係してたような貴族ですよね?」

「今の所、王国一のクズだったわ」


麻薬や禁制品の取引は当たり前、攫ってきた女の人囲うわ、飽きたら暗黒神殿に渡して生け贄にするわ、とクズ度が抜きんでてるヤツだったよ。


仕方ないので生きてるのが不思議なゴミにしてあげたよ。でも結局、奈落アビス送りにしたけど。


「そんなクズから救ってくれた人……。惚れちゃってもおかしくないですって。しかもここの領民も助けて……」

「それはお仕事なんだよセレスティナさん……」

「運命……感じちゃってますよ。あの恋文の量は」


なんか束で、束で貰ったんだよ。夢見る乙女のそれがはち切れんばかりに綴られてたよ。


「…………」

「美人さんでしたね〜。先祖は白雪妖精スノーホワイトと呼ばれる伝説のエルフらしいじゃないですか。……」


お見合い写真にこの世のものとは思えないエルフの美少女が写真に載ってたの。シャルさんに続く北欧系エルフ、しかも白雪の姫って感じだよ。


「つまり……お見合いしろって? セレスティナさん。普通は逆じゃない?」

「いえ、わたしもそうでしたから……女の子の夢、叶えるかはアイギスさんにお任せしますよ。……私の覚悟はガン技まりです」

「シルフィちゃんがなんて言うか……」



戦神の教えに生きるセレスティナさんは覚悟決まっててもシルフィちゃんは普通の女の子だよ?

またぁ? って顔されるに決まってるじゃん。

逆の立場で考えて。わたしも他の女の子連れて来られたらショックだよ。

また幼児退行起こしかねない、それぐらいの衝撃が来るって。考えるだけで不安になるのよ。


「考えて、アイリも、アイリも居るんだよ」

「アイギスさん。……ここは逆に考えちゃうんです。これを機会にお母さん沢山居ると教えちゃうんです。……完璧な作戦です」

「…………」


一理、一理あるかも。どのみちアイリにはわたし達が恋人だと気付かれる。いずれは結婚してお母さん一杯になるのは自明。


「つまり……、その予行演習にもなるから受けろ、とそう言うの?」

「シルフィちゃんにはそう伝えて置くという手も……有ります」


「う〜ん。それでも絶対、またぁ? って顔される」

「もう、恐れずガツンと当たりましょう。いっそ向こうの恋心を砕いても良いんですから」

「それはそれで……どうなのかな……」



女の子の夢砕くとか可哀想じゃない? 別に夢くらい……

って思ってたらセレスティナさんがじっとわたしの事見てた。わたしの優柔不断さを何とも言えない目で見つめてるよ。


「アイギスさん……愛の道は険しく厳しいですよ」

「逃れられない運命に涙出そう」


許す所か、許しを乞う立場だよ。

実は満更でもないの、バレちゃってるし。いや、可愛い子だから一度くらい会ってみたいなとは思うの。


この浮気者! とわたしの心の一部が叫ぶんだけど。必ずしも恋愛に発展するか解らないじゃない。

憧れの人と会うくらいなら叶えてあげても良いよね……とは思うの。

だけど、


「返事は急がなくて良いらしいからもう少し考えよ」

「ええ〜。これ、絶対今すぐ欲しいですよ」


わたしの気持ちの整理もあるからもう少し待ってよ。それにあの恋文のお返事書かなきゃならないんだよ。



ただ、後日アリーシャちゃんが催促しにやって来て有りか無しかだけ聞いて来た。

有りと答えるとニッコリ微笑んでたけど……


そして更に後で聞くといつの間にか婚約している事にされてたのであった……



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