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神祖の妖精王〜妖精騎士アイギスさんの冒険の日々〜  作者: フィリクス
第3章 妖精達の冒険ストラテジスト
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第十六話 妖精騎士アイギスさんとヴェスタの街の金貸し元締め(2)



家族で朝食が終わり、食後のお茶飲みながらみんなで今日は何するの? って話になった。



最近やっと、神祖の妖精王が星幽界から戻って来て妖精族が騒ぎだした騒動に一段落付いたんだよね。


「じゃあもり妖精の騒ぎは大体鎮まったんだねシャルさん」

「はい。この大陸で私が把握している者達に限ってですが」


「十分でしょ。いくらシャルさんが森祭司ハイドルイドだからって世界全部は無理だよ。他の大陸にも森祭司ハイドルイドは居るらしいし、そっちにも連絡付けれる限りは付けたってジェラルダインが言ってたからね。何とかなるよ」



もう最近はずっと杜妖精の騒ぎに巻き込まれだったから。シャルさんを休ませたいの。途中からアイリ来ちゃったからわたしが直接行くのはばかれたからね。


わたしは神祖の妖精王の直系って事になってんだけど、さらにアイリは亜妖精たちの祖神の娘だよ。

何かの拍子でバレたら騒動デカくなるって。人前に、いや妖精前に出すの控えたのよ。


「セレスティナさんもご苦労さま。大変だったでしょ」

「いえ。妖精の方々と会うのは珍しかったですからね。楽しかったですよ。最初の方が殺伐としてただけですって。……血が流れましたね」


「血が流れそうなの優先して行ったからね。最小限にしたと思おうよ。核兵器持ち出して来る馬鹿来るとか大番狂わせはイレギュラーすぎるしさぁ」


自分の国のゴタ付き収める為に核兵器満載の空中戦艦を送り込んで来たエルフの王さま森陽王しんようおうとか、キレ過ぎのヤツとか度が過ぎてるぜ。

奴の国に核弾頭を撃ち返してなし着けたがよ。それすらも手の内って聞いたぞ。キレ過ぎだろ。



「あれ、結局どうなったんです……」

「核兵器使う国はやべぇって戦争なりかけたけど、全面戦争なると困るから結局、事を収めたって。魔女王さまから連絡来たわ」


本当はもっとちゃんとした理由あるんだけど大体そんな理由だよ。何故なぜか詫び状貰ったわ。

この世界の魔法文明の技術遺産を独占する国同士で戦うと世界平和が崩れる可能性云々うんぬん


まぁ核戦争になりかねないらしいからね。

核戦争くらいならなんとかなるのがその大国同士らしいけど、やっぱり被害はとてつもないらしい。


森陽王は関係ない国に核兵器を撃ち込むクズだ。

つまり、本格的に核戦争になったら関係ない国がやられかねないからね。本当にキレてやがるぜ。



そしてセレスティナさんとシャルさん二人して顔を見合わせてホッとした表情を微かに浮かべてたよ。

心配してたんだ。聞かれなかったから忘れてるものだと思ったよ。


「では、アイギスさまの帰還による騒動はこれでやっと落ち着いたのでしょうか」

「だと思うよ。シャルさん。ザランバルも他のもり妖精仲間に連絡つけてくれたらしいし。ただ、あいつらの仲間……いや、何でもない」


もはや妖精ブッちぎった存在の喰食王ザランバルの仲間だからな。


しかもその内の一人も古代の魔法文明圏の一つが滅んだ原因なってるんだよね。全てを腐海の森に沈めてくる腐海王ってね。

妖精じゃないよ、やる事が。


「なら、アイギスさん。今日は何しましょうか? 家でゴロゴロします?」

「そうしたいんだよね。でも、冒険者ギルドに呼ばれててさ。前に話したゴブリンの件で」

「なら、お出かけですね。行きますよぉ。……そういえば、シャルさんも顔合わせしておいた方が良くありませんか」

「あ、そうか。わたしの冒険者の連れだからか」

「?」


シャルさんがきょとんした表情を浮かべる。

シャルさんも千年生きてるから冒険者くらいは知ってるけど、冒険者じゃないから話しにはついていけないよね。


「冒険者って、冒険者としかパーティー組んじゃいけないって決まりはないんだけど。この人うちのパーティーの人だからって一応、ギルドに報告入れとく決まりみたいなのあるんだよね。トラブル防止だったっけ?」


「ええ。聞いた話だと昔、素人を魔物相手の囮や弾除けに使った人とか居たみたいで……見習いとか言いながら今でもやる人居るらしいですけど」

「見習いを雑用にするのは普通だけど……弾除け……あり得るのがこの稼業だよ」


冒険者もクズが居るからね。ただ、そこまでクズ過ぎると流石にやり方が汚過ぎるからバレたら他の冒険者やギルドに締められるんだよ。


うちら冒険者は一応、"表"の稼業で神殿とかにも付き合いが有るからね。

あまりに素行が悪いと文句付けられるんだよ。冒険者の素行が悪いと街の治安も悪くなるからがおもな理由で。



「でも、素人弾除けにして魔物やったとか戦いを神聖と考える戦神神殿にバレたら、冒険者ギルドに果たし状送られてもおかしくないでしょ。戦神司祭のセレスティナさんの意見は?」


「詰問状は送りますね。それを見過ごすと戦神神殿の教義に反するような事ですから。てか、送られたんじゃないですかね。こってり絞られますよ、普通は」

「やっぱり。わたしも帝国居たとき来たわ。名指しで」


冒険者ギルドの冒険者には神殿の人達も所属してるから冒険者がいくらわるでもやって良いことと悪い事の線引きは有るんだよね。

普通の善良な冒険者も居るんだし。大体悪党が幅を利かせるからそうでもしないと統制取れないってのも有ると思うよ。



「……あの伝説のラディアス神殿揉め事件」

「……忘れたい。よく切り抜けられたよ」


遠い過去の話しだよ。悪いことしてないのに来るからね。ちょっと"幅"を利かせただけでさ。

そしてわたしが遠い目してると、シルフィちゃんが居間にやって来るの。ちょっと困った顔してた。


「すいません。アイギスさん、実はアル君ちょっと熱があるみたいで」

「え? わたし見たときぐっすり寝てたけど」

「微熱ぐらいです、ただ体調悪いみたいで」

「真冬だからね。風邪引いちゃたか。どうしよう、魔法で治しても良いんだけど」

「やっぱり、治せるんですか……」


シルフィちゃんがなんとも言えないような顔してた。この世界、魔法で風邪くらいは治せるの。

元村娘のシルフィちゃんも使えるんだろうな、って思って聞いたんだね。使えるよ。でもその不安そうな顔は……?


セレスティナさんが代わりにちょっと、って感じで割り込んで来たよ。


「アイギスさん。子供の病気を治すのは……、知ってそうですけど」

「治しちゃうと耐性が付かないんでしょ? 病気の元を消去するからそんな気がするよ。大人になってから病になると重い病気とかもあるんでしょ?」


「そうです。そうなんです。だから気軽に治せないんですよね。余程の高熱でた時に奇跡に頼るとかなら仕方ないんですが」

「〈生命活性リジェネレーション〉は有り?」


「有りです。むしろその奇跡があるならそちらで対処するんですが…………アイギスさんがその魔法使うのは待って欲しいです」

「……?」

「いえ、アイギスさんの魔法は元気になりすぎるんですよね。病気治りきってなくて効果切れた時が怖いですって。子供に掛けるのはちょっと」


わたしが体力を回復する魔法〈生命活性リジェネレーション〉を掛けたら死にかけでも全快するからか……体力の総量が少ないとそうなるの。


普通の冒険者だと魔法の効果が続く限り体力満たんになって、傷受けても即座に再生する無敵の超人になるよ。


「セレスティナさん。わたしの魔法は迂闊に掛けれないのね。子供の成長にまで影響及ぼしそうだし」

「ええ。なのでそれなら今日は私はお留守番しようかと。私も〈生命活性リジェネレーション〉の奇跡は賜わってますから」

「う〜ん。ならそうして……」


わたし、アイギス。ふと考えるの。シルフィちゃんとセレスティナさんが二人きり……



「アイギスさん。どうしましたか?」

「何でもない。なんでもないよ。なら、悪いけどアル君の面倒頼むね……シルフィちゃんも何か必要な物とかある?」

「いえ。粥くらいなら材料有りますから。セレスティナさんも居てくれるなら……本当に助かります。前にアイギスさんに魔法掛けて貰ったら……」


セレスティナさんがああ、と納得と呆れの半々にした表情した。言ってよ、わたしの魔法が強力過ぎるってシルフィちゃん。前に掛けたあの時だよね。

疲れてそうだったから掛けてあげたのに。


「寝れませんでした……」

「解りますよ。シルフィ。奇跡にもほどが有りますよね。効果切れても体力持て余しますよね、あれ」

「…………それは御免。あの魔法は調整の仕方解らないよ。病気治すのも」


掛ければ良いだけの魔法だよ。込める魔力量とか言われても解らないって。技能スキルで威力調整出来ないし。普通は回復魔法に威力調整とか要らないよね。


「ですので、今日は冒険者ギルドに三人で行って来てくださいね。アル君とシルフィは任せてください」


セレスティナさんが真剣に何一つやましいことなんてないって表情。勿論もちろん、わたしはその瞳を見つめるよ。


「…………」

「…………」


お互い見つめあってたらセレスティナさんからこっそり念話の魔法で語りかけて来た。


"アイギスさん。アイリちゃんの前ではできません……よね"

"イチャつくんだ。やっぱりイチャつくんだ"

"なら、アイリちゃんに私たちが恋人ってちゃんと説明してくださいよぉ。お母さんって言ってもその役って感じで理解されてないですよ"


"時間が、時間が欲しいの。アイリに浮気してるとか思われたくないの"

"もう、アイリちゃんの前でイチャつけないんですから、私たちでイチャつくしかないじゃないですか"

"返す言葉が無さすぎるのやめて"

"多分、ちゃんと話せば解ってくれますよ。記憶がないのは話してるんですから"


そう。全てはわたしの優柔不断なの。アイリにちゃんとわたし達の関係話してないんだよね。

おかげでわたしはセレスティナさんとシルフィちゃんとイチャイチャできないの。


反応が怖いでしょ。どう考えても。バーギアンお母さんの事はもうどうでも良いのとか言われたら……

怖い。反抗期も怖ければ、悲しそうな顔されるのも怖い。


しかも、わたし達が黙ってるから話だけずっと聞いてたアイリが首を傾げたよ。

よく解らないってあどけない表情。こんな子に二人も恋人居て愛し合ってるとか言えない。さらにもう一人恋人の座を狙って来る子も居るんだよ。


「あの、アイギスさま。出発はいつにしましょうか」

「シャルさん……すぐに行こうか二人の邪魔をしてはいけないの」

「私たちはいつでもウェルカムです」

「…………」

「?」


シルフィちゃん、何か言ってよ。ジッと見つめないで、解ってるから。てか、アイリが慣れるまでってみんなで話合ったじゃん。


「アイギスさん……お仕事頑張って来てくださいね……アスタロッテさんも今日来ますよ……」

「早く帰ってきてね。ってことだね。把握」


さらにわたしを狙う為、わたしの恋人二人をまず狙って来る女の子の影が。

わたしの恋の事情はわたしを置いてけぼりにして、波乱万丈だよ。この家庭の事情をアイリにどうやって話すのか頭抱えるよ。


それまでイチャイチャはできないの。

アイリ……察して。賢い娘だから気付いて。

若しくはちょっとだけ一人で行動できるくらいになるまでアイリを安心させなきゃいけないの。


わたしに課せられた家庭の問題はただ時間が解決してくれるのを祈るのみだった……



ただ、わたしはこの時、シャルさんがわたしを見つめる瞳にまだ気付いてはいなかった。



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