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神祖の妖精王〜妖精騎士アイギスさんの冒険の日々〜  作者: フィリクス
第3章 妖精達の冒険ストラテジスト
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第十五話 妖精騎士アイギスさんと娘アイリの小鬼退治の冒険(5)



そしてわたしは次の日の日付け変更した辺りでゴブリンの悪たれ共のアジトの場所を突き止めていた。



昨日さくじつの日の沈むに頃になって依頼を正式に受け、夕食食べてゴブリンの集落行って、連中から悪たれゴブリン共の詳細を聞き出してと大忙しだぜ。


ここまで急ぐのも盗まれた雪羊を取り戻すため。



そして深夜の森の中を歩いて行くとアイリが何か見つけたように指し示す。


「お母さん、あそこ」

「見つけたね。役立つな、このコンパス」


ゴブリンの村で族長から悪たれの居所を探す為にもらった魔法の品マジックアイテムだ。中に悪たれゴブリンの毛が入っていて、そいつが居る方向をずっと指し示すっていう便利アイテム。


まあ同じ効果の追跡魔法もあるんだけどね。

ただ、追跡魔法は逆探される可能もあるから困りもの。このコンパスも例外じゃないのよ。

何より雪羊がその追跡魔法で探知できなかったから、今回は気合を入れないと。


ゴブリンの悪たれがそこまで考えてるとは考えづらい……わたしが盗賊ギルドを疑ったのはそれが理由だし。



そしてアイリが指差した場所には崖に穴が空いていた。おっとこれは……


「まさかの根城は洞窟かよ」

「あの中に悪いゴブリンが居るの?」

「そ、集落と同じで森の中にあると思ってたけど。なかなか楽しめそうな場所にアジト構えてるな」

「楽しいの?」

「わたしはね。ダンジョンとか胸躍るよ」


そう、冒険者やってたら何度か入ったことがあるんだけど余り機会がないんだよね。偶々たまたま、わたしが縁がなかっただけかも知れないけど、数えるほどしか経験ないや。



「じゃあ、アイリ。行こうか。経験は少ないけど攻略の仕方は解ってる。アイリにはゴブリンを狩って貰いたいしね」

「うん。解った、お母さん。アイリ頑張る」


娘はやる気のようだ。

わたしもテンション上がるよ。最近は戦艦内部突入やら銃火受けたり、食い飽き過ぎた森や魔物倒して終わりとか、冒険してる感がなかったから。久々にまともな冒険ができるぜ。わたしの日常が帰ってきた感ある。



そして今度の相手は単純明快な悪党ども。

アイギスさんこの冒険者稼業でも一番楽しみなのが悪ガキどもを懲らしめるブッころす仕事なんだよね。


犯罪を未然に防ぐ感があるのがなんとも言えないよ。ここで奴らを始末すればその分迷惑が掛かる人が居なくなる。素晴らしいよね。


それに、悪ガキどもが夢みる輝かしい未来。

それを奪って、地獄に叩き落とす瞬間とか堪らないのよ。わたしの妖精気質を大満足させてくれる。この仕事の醍醐味だよ。愉しみだなぁ。妙な性癖持ってんなと思われるからとても人には言えないけど。

このアイギスの謎の使命感がそうさせるの。

盗賊ギルドの奴らも居たら一石二鳥だしね。


まぁ今回は練習も兼ねるからゴブリン殺るのはアイリだけど。……一匹だけわたしが始末つけなきゃならない奴が居るが。

さあレッツ、ダンジョン探索だ。





そして、私たちは洞窟の奥深くを進んで行く。

のは間違いだ。

この洞窟は奥へ奥へと深く続き、途中で幾つも分かれ道があるというなかなか歯ごたえのあるダンジョンになっている。


でも、冷静に考えよう。そんな洞窟の奥まで行ってアジトにするかな。と。


魔法の目ウィザーズアイ〉で疑似的な視覚を飛ばして先に洞窟を軽く探索したけど構造が広すぎる。何より他の魔物の存在がここを拠点にするのにネックになる。


だというのに人探しのコンパスが指し示したのはこの洞窟……



「まあこのコンパスを使えばまる解りだよね〜」


洞窟の壁側を常に指し示すコンパス。

その壁を、魔物を注意しながら、わたしとアイリは見逃さないよう丹念に眺めながら、洞窟の中を歩いて遂に目的の場所に辿り着いた。


「ココだな。アイリには解る? この壁」

「なんだか透けて見えるけど……?」

「普通の人には洞窟の壁と同じように見えるの。やっぱり隠し通路か。まあ逆にないとおかしいでしょ」


別にゴブリンは特別に魔物に襲われないとかそういう能力は持ってない。他の魔物もいるから洞窟の一角だけを占有してアジトにしてるんだよ。

それに手強てごわい相手だけど単純に強いかと言うとそうでもないよ。

魔法による搦手からめてが厄介なんだよね。



「そしてこの壁を通り抜けると〈警報アラーム〉の魔法で感知されるとか、そういう仕組みでしよ」

「警報?」

「仕掛けられた場所に触れると魔法の名称の通り音が鳴るのよ爆音で。それで侵入者が来たか解るんだよ」


「……じゃあ、この壁越えるとゴブリンに見つかってしまうんだね。……奇襲できなくなる?」

「アイリ賢い。そうだよ、そのまま壁越えると見つかるの。だからこっちも魔法とかでなんとかするんだよ。まあ見てて」


わたしの手持ちの手段だとざっと思い付くのは3つ。


原子分解ディスインテグレイト〉の魔法で壁を消滅させ横穴あける。転移魔法〈星幽界転移アストラルテレポート〉で移動。〈魔力消去ディスペルマジック〉で魔法消去。


他にも幾つかある。手持ちの手札が多いからいくらでも対策できるよ。まあ〈魔力消去〉が無難かな。


そして〈魔力消去ディスペルマジック〉で壁の〈周囲擬態カモフラージュ〉と〈警報アラーム〉の魔法を一度に消去。淡い光を受け消滅する壁。


「じゃ、行こうか。ここからが本番だよ。罠とか仕掛けられてるだろうし。わたし達も隠蔽魔法を掛けてこっそり侵入。敵が居たら――」

「アイリが狩るんだね」

「頑張ってよ。でも、逃げられても深入りしなくて良いからね。わたしの側をあまり離れないでね」

「うん。お母さんと一緒に頑張る」


そしてわたし達は悪たれどもの秘密基地に侵入する。どういう歓迎してくれるのか愉しみ〜。






まず出会ったのはゴブリンの肉体派だ。人間くらいの大きさのホブゴブリン。

手に棍棒持って、顔の口から牙出てる。

緑色の鬼の佇まいだね。

その首から上が、アイリの手が変化へんげした爪で今掻き切られて落ちたけど。


隠蔽魔法でこちらの存在を気付けないと呆気ないね。

ただ、ホブ野郎が歩哨に立ってた場所は、分かれ道の先で早速目当てのモノを見つけたよ。



「お母さん羊さんがいっぱい居る」

「やっぱりまだ生かしてたか。結構ギリギリだったね。…………ざっと、30くらいか」


正確には36匹。

道の先はその羊の頭数を収められる広い空間になってた。家畜小屋みたいに足の踏み場がないくらい詰め込まれてるってほどでもない。

所狭しって感じに雪羊たちが押し込まれてたけどね。


「でも、羊さん達元気なさそうだよ」

「ゴブリンどもがまともに面倒見るはずがないよ。ご飯貰ってないんでしょ」


明らかに衰弱してる羊達。地べたに横になってるのが多いね。羊でも飲まず食わずならそうなるよ。野性じゃなくて家畜だし。



「じゃアイリ。羊さん達に水飲ませて、後飼い葉も。食べれるようなら食べさせて」

と、空間収納からわたしは桶やら飼い葉やらを大量に取り出した。ちょっとした小山になったな。


最初から雪羊を取り戻すのが目的の一つだもの。これくらい用意してるよ。いきなり羊の介護になるとは思わなかったけど。


そして羊達が目の色変えてこちらにやって来る。

腹好かせてたんだね。可哀想に。

中には立ち上がれないほど衰弱したのも居たけどわたしが〈生命活性リジェネレーション〉の魔法で体力を回復させたよ。元気になったのかメェ〜って嬉しそうに鳴くの、可愛い。わたし懐かれるのには弱いんだよね。



そしてアイリがちょっと戸惑いながら、動けない羊に餌と水を運んであげてる。

その頑張る光景を母親気分で眺めてたかったんだけど、わたしにも別に仕事があった。わたしは死んだ頼れる兄貴ホブゴブリンの元へ。


「……来い〈召喚サモン悪妖精アンシーリーリャナン・シー〉」


魔法陣から現れたのは金髪の美女。

人の精気を奪うサキュバス見たいな妖精、吸精妖精リャナン・シーのお姉さんだ。


ちなみにこのお姉さんの職業クラスは死霊術師。魂を星幽界から呼び出して霊魂と話しをしたり出来るの。普段は獲物の精気を全部吸い尽くしてから不屍アンデッドにしてはべらすとか極悪なことをしてるんだけど。


「じゃ、お話を伺おうか。リャナン・シー、死んだばかりだから魂はある。生ける屍リビングデッドにして尋問して」


そして生ける屍となり金髪のお姉さんの手駒になったホブゴブリン。野郎どもなら誰もが羨む境遇になった奴からゴブリンどもの人数から洞窟の罠まで、何から何まで聞き出したよ。


極自然に生ける屍になったホブゴブリンが四つん這いになり、その上にリャナン・シーが座って尋問するんだよ。


いつ見ても野郎歓喜の光景だわ。わたしにその趣味がないから解んないけど。男の人ってこういうの大好きなんでしょ? 前に仕事で娼館に踏み入った事あるんだけどこういう場面に出くわしたんだよ。鞭で叩かれてたりとか。



でも、これで全ての準備は整った。懸念してた逃げ道がないのは幸いだった。これで逃げられる可能性は万に一つもねぇ。


出入り口には奴らの大先輩、黒帽子妖精ブラックキャップを置いて来た。悪タレどもが勝てる可能性はこちらも万に一つもないな。

黒帽子なら羊盗むどころか村一つの住人皆殺しだぜ。伝説級の冒険者より強いんじゃないかな、あいつ。


そしてアイリが雪羊を見て回ってわたしの元に戻って来る。一匹一匹様子を見たけど、衰弱してただけで死にそうなのは居ないって。

仕事の半分はこれで達成の見込みがついたな。



「アイリ。もう罠とかないらしいから奴らを追い詰める感じで行くよ。隠蔽魔法も解いてそのまま突っ込む。アイリが頑張って仕事していってね」

「うん。解った、お母さん。爪で斬って行けば良いんだよね」


「方法は任せるよ。殴ったり蹴っても良いよ。どのみち一匹残らず狩るのが仕事だからね。色んなやり方で殺して見て、良い経験になるから」

「うん」



素直に頷くわたしの娘。

じゃあ、ここからが本番だ。アイリのかてになるような必死の抵抗を期待するぞ、悪たれども。


罠も対して仕掛けず、一仕事終わったと酒盛りしてるような素人どもだがよ。それぐらいは期待したいね。高級肉美味いからってバクバク食ってるらしいな。喰うためにもう十匹バラしたとか驚きだぜ。

せいぜい三、四匹と思ってたわ。


「家畜育てる労苦ってのを奴らは何も解ってねぇのにその成果だけ頂くとか許せねえ。万死に値するぜ。アイリ、遠慮は要らない。なぶり殺しで」



そしてわたしは娘を狩りの猟犬みたいに解き放つ。もちろん、一緒について行くよ。

窮鼠猫を噛んで見ろよ、悪たれども。

お前らの最後の仕事だぜ。ダイエットには丁度良いだろ。あの世に顔向けできるつらにしてやるよ。



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