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神祖の妖精王〜妖精騎士アイギスさんの冒険の日々〜  作者: フィリクス
第2章 暗躍錯綜のフェアリーテイルズ
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第十三話 妖精騎士アイギスさんと報復戦艦のお仕置き。と、花園城塞の秘密の封印(2)



悲鳴が鳴りやまなくなった。報復戦艦の艦内。



一通りの戦闘を終え、エルフ軍人の生き乗り達は妖精と悪魔たち、各々おのおののお楽しみに成り果てていた。


戦艦の個室や大部屋に連れ込まれたり、そのまま艦内通路でバラされたり、狩られた者たちがどうなるかはお察しだよね。生命を大切に"使われてたよ"。

わたしとアスタロッテが艦橋に向こう道すがら、チラチラ見えるのは悪夢の様相のワンシーンだった。



黒帽子のゴブリンが、台の上に拘束されたエルフにナタを振り上げ、振り降ろした瞬間上がる絶叫。

それを悪霊ディブクたちが眺めてるの。


『キャハハハ』と狂ったように声を上げる闇翅のピクシーたち。傷ついて抵抗できないエルフに群がり、悪戯の限りを尽くしてる。

わたし達が近づくと針の上に突き刺して持って来たのは人体の一部。なぜかわたしに褒めて貰いたいみたいに持って来るの。


妖精ブッカ・ドゥーとか人喰いの妖魔達が通路の角でムシャムシャと口を動かしてるのもみた。仲良さそうな感じだったよ。コレいけるね、って感じで獲物の部位を分け合ってたの。


見方を変えると平和な光景かも知れないね。

悪い奴らがお仕置き受けてるの、でもやられる方からすると……


「解ってたけど悪夢だわー」

「え? まだ序の口にさえ入ってませんよ」

「入口見えるだけでわたしはお腹一杯だよぉ」


通路の戦闘後の痛ましい血痕とかはさ、冒険者とかの仕事やってるから慣れたものだけど。


「あのね。虐殺屠殺の場とかに慣れたら人として何か終わらない? わたしまだ"人"で居たいんだけど?」

「あら、でも人間でもお肉屋さんはそういうお仕事ですよね? 違うのは家畜と知的生命体と、扱うものが違うくらいで……他に違いは倫理道徳の問題くらいでは?」

「…………その違いが大き過ぎるしデカ過ぎる」


まぁ、でも、それ楽しみに悪妖精と悪魔たちは仕事したんだしね。奴らに取ってはご褒美か。狩人が狩って何が悪いの、って話しと同じかも知れない。


悪魔たちはそれが存在の本質みたいなとこあるから。別にわたしも怒らないしさ。別世界の連中だからなコイツらは。それに女猫妖精フリュドラの悪ガキが生命弄ぶのにわたしキレたけど、あれは人間だからだよ。


人間でなくなれば、こういう事になる。その教訓を与えないと馬鹿がまた馬鹿やるのを止める奴が居なくなるからね。

尚、馬鹿が現れるのは止めようないと思うよ。

この世に犯罪がなくならないのと同じでね。



ただ、わたしのゲンナリ感はどうしようもないでしょ。もっと手早く終わらしてくれるものだと思ってたらこんなじっくりやるとか、想定外だもん。


「これ、初心者には難易度高いよアスタロッテ。わたしはそういう趣味はないんだって」

「大丈夫です。アイギスさまなら慣れますわ。やり始めれば徐々に癖になって行きますよ」

「だから、慣れたら終わりだよぉ」


と、力説してくるアスタロッテにわたしは涙目。

アスタロッテが危険過ぎるよ。本当に平然としてるからね。わたしのブチキレも鳴りを潜めるわ。


「あのね。殺しと同じで慣れだとは思うんだけど、慣れちゃイケナイもんだってわたしの感性が警告してくるの。もう、戻れなくなるってさ。わたし、まだ子供だってジェラルダインから聞いてないの?」

「……なるほど。ですが、感受性を育てるなら、むしろ今では?」

「どんな感性を育てる気だよ。わたしの多感さが死ぬわ。摩耗する以外あり得ないでしょ。育つか、こんなもん」


と、こんな感じでわたしはエルフ耳に聴こえる地獄から耳と目を背ける。艦橋までの道のりをアスタロッテと駄弁だべってたよ。

まともな感性持ってたら目も耳も塞ぎたくなるって。正気値サンち直葬されるわ。



そして、二人して地獄に行く前の辺獄リンボと化した艦内を歩いて艦橋に繋がる通路のゲート前に辿り着いた。

でも、そのゲートが封鎖されてるんだよね。

極めて強固な魔法で封印されてるの。艦内に敵が侵入された時の備えだね。素人のわたしでも解るよ。


アスタロッテがゲート横のキーロックがある機械に端末を繋げて何か操作し始めた。


「ダメですね。さすがに一朝一夕いっちょうきっせきと言う訳には行かなそうです」

「魔導炉は簡単に掌握できたのに、これはダメなんだ」

「この艦は古代魔法文明時代のモノですから。魔導反応炉はシステムが更新されて無かったのでハッキングも容易でしたけど……」

「こっちはセキュリティアップデート済みか」


ぶっ壊すのも考えたんだけどアスタロッテに止められました。壊せる威力で技やら魔法でやると、艦ごと壊れる危険性あるくらい強固だってさ。



「では、少々お時間かかるので、饗宴をお楽しみください、アイギスさま。小一時間は掛かります」

「うわぁ。逃れられない」

見なくても良いんだけど、暇が出来ちゃたら覗いて見ちゃうよね。

え? わたしだけ?

多分、わたしの妖精気質が原因だね。嫌なのに興味湧いちゃうの。そして時間潰しの為に悪い妖精たちと悪魔たちのお楽しみを少しだけ見るのでした。もちろん後悔したよ。







でも、いきなり見たのが難易度高かったわ。


とある大部屋。そこには椅子に座って拘束具を付けられたエルフ男性の姿。ちょっと頭が……

そして蝿の姿の悪霊と、闇翅のピクシーたちや吸血妖精の女の子らの姿もあった。


『はい。まずここに用意した健康なエルフ男性。先ほど針で楽しみましたが、急所というのは何も爪や目、指や下腹部以外にも有りましてな。例えば、最大の人体の不思議、頭の中……』

『おお〜。それは発想になかった』

『じゃ、試しにハンニバルして見ましょうか。我もエルフでやるのは初めてでしてな、ああ口輪は取った方が、愉しめますな。――ウコバック』

『嫌だ。止めてくれ!嫌だぁ』

『なーに。痛覚は有りませんとも。では、そこのピクシー殿から順に――』


おっとヤベェな。別の画面に切り替えよう。なんか料理人風の衣装きた悪霊も居たからわたしの正気度がさらに削られそうだぜ。



そして次の画面で見たのは、吸血妖精バーヴァンシーの子たちが女性エルフを艦内通路に集めて魔法封じの首輪を付けてなじってた。アイツら可愛い顔して性格最悪だからな。


『オラァ。このアマぁ。その程度で泣き出して許されると思ってんのか』

『きゃははははは。さっきまでの威勢どうしたのぉ? ほらほら這いつくばって媚び売らないと』

『嫌ぁ。もうやめで。いっそ殺して、こんなごどされたく――ぐべ』


首輪に付いた紐をぐいっと引っ張って、最後まで言わせない吸血妖精の子たち。相手が無抵抗でも容赦ない。大人しくなるまで解らせたのか、エルフ女性の顔に痣とかある。這いつくばせて、尊厳を蹂躙してるよぉ。


余りに哀れなのでわたしは他の画面に切り替えようとするとシルクハットに燕尾服? 昔の英国紳士のような出で立ちの男が映しされた。



『おや、これはこれは。……我ら悪霊ではお目に掛かれないやり方だね。実に斬新だ』

『あん? なんだ、てめぇは?』

『なに、只の通りすがりの悪霊だとも。少々、今回の宴席に遅れを取ってしまってね。遅ればせながらやって来たのだが……どうやらお邪魔してしまったようだ。妖精のお嬢様がたの仕置きがあまりに純粋なのでつい口を出してしまった』


『なに、おじさん。文句あるの? 喧嘩売ってる?』

『いや、まさか。むしろ、我ら悪霊デビルのやり方が余りに凝り過ぎていたのではないかと反省してるくらいでね。真面目過ぎるのも考えものだな……』


と、あごに軽く手を当て思案に耽る色男。


その様子を見た吸血妖精の子たちが顔を見合わせる。悪霊デビルの若い紳士に小馬鹿にした様子や口調が見られず、対応に迷ったって感じで。


『ああ、これは失礼。では、お詫びにこういう趣向は如何いかがかな? お気に召して頂けると良いのだが……』


と、ぱちんと指を鳴らす悪霊の男。

すると、男の背後から人間大のカエル姿の悪霊がぴょんぴょん飛びながら姿をあらわした。そして恐らくエルフだったものを吐き出した。

『……!?』


目を開いて驚く吸血妖精バーヴァンシーの子たち。カエルの悪霊が吐き出した"もの"は、人間の形を保ってるがその姿はドロドロで溶けていた。

そして、動いていた。


『なに、核兵器が使われたと聞いてね。それならば、と。発想が少々貧弱だが、何分ここに来る前に現地に寄っていたもので。……そこのエルフのお嬢様にどうかな? 私は先を急ぐので、そこの悪霊は好きに使ってくれたまえ。では』


と、返答も聞かずにシルクハットを降ろして会釈してから立ち去る紳士の悪霊。

吸血妖精の二人はお気に召したようだ。頷きあってた。


『いやあああああ! やめて、許して、赦して!』

『お〜ら。オマエに丁度良い、タンクベットが来たぞ』

『あははは。その顔治してもらいなよ。だいぶマシになるんじゃない? スキンケア最強そうだよ』


そしてエルフ女性は首輪に付いた紐を引っ張られ、大蛙の悪霊の口の中へ投げ込まれる。

エグい。人間のやる事じゃねえ。相変わらず性格悪すぎるぞ、吸血妖精バーヴァンシーども。



けれど、他の場所の様子を眺めてもその所業は、まさに悪夢以外の何物でもないんだよね。


首無し騎士の妖精が、ギロチンに取り憑いた悪霊とエルフ軍人の首を飛ばしてわ、それを他の悪魔がくっつけて治してエンドレスしてたり。


吸精妖精リャナンシーの美女が優雅にティーカップを傾けてお茶を愉しみながら、エルフ軍人を誘惑の魔法で操って、共食いさせてたり。


その地獄の様子をエルフ軍人に見せながら発狂を精神防御させて防ぐ狂気妖精ザントマン吸魂妖精ディメンターが魂吸って、正気を保てるギリギリ狙ってたりしてたよ。



「あら、まだ前菜と言った所ですわね」

「コレでメインディッシュじゃないとか、悪魔とか人間の想像力の限界突破してんじゃないの」


「それこそ、そんな馬鹿な、ですよ。悪霊達がやる事に比べたら、人間の方こそ段違いに悪逆非道ですよ? 妖精の無邪気さも、一点突破で方向性が定まってしまってますからね」

「うわぁ。知りたくない世界」

「まあ、それはおいおいで。ロックが外れましたわ。アイギスさま」


艦橋に繋がる通路のゲートが開く。

さ、元凶をブっ叩きに行きますか。

すべて奴の責任だ。やらせてるのは、わたしだけどよ。原因はぜんぶアイツだよ。

じゃあ、ケリをつけに行くぜ。


と、思ったらさっきのシルクハット被った紳士風の若い男姿の悪霊が姿を現したのだった。



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