第十二話 妖精騎士アイギスさんと花園城塞キレッキレッエルフ対決(6)
喰食王が召喚した悪魔たちによって戦艦内は、至る所で血みどろの戦いになっていた。
「じゃ、突っ込みたいんだけど戦況どうなってる? 特に女猫妖精さん達の安全確保は?」
わたしと意識を繋げてるザランバルに聞いたんだけど、代わりにアスタロッテが戦艦内の映像を、備え付けの制御盤を操作して中空に幾つも投影してくれた。
別々の場所でエルフの軍人たちが頑張って抵抗してた。最初に襲撃を受けた時は不意打ちで成すすべなかったようだけど、さすが軍隊と言った所か。
『捕らわれた者達は確保しましたぞ。はっはっはっ、雌猫どもめ、青い顔しておるわ。普段強気な癖に、一度弱気になるとおとなしくなりおって』
「おまえが目の前に召喚した妖魔どもが竜とも戦える連中だから、そりゃビビるわ」
核兵器ブチ込んでも耐えれそうな真龍には一歩劣るけど、次点くらいの強さの連中呼んでるもの。
人質救出に出した妖魔が特に強い。
胴体に縦に開いた大口もつ妖魔ピシャーチャ。
さらにコイツが手下の食人鬼の妖魔どもを召喚して、速攻で人質取ってたエルフどもを食い殺してるからね。
他にも、ザランバルは大きな口を開いたまるっこい胴体の妖魔ビッグマウスだとか、一見、悪霊っぽい見た目だけど実体化した身体をもつ複頭の妖魔イーターエビル、とか食い殺してくる系悪魔を大量に呼んでるからね。
「ザランバル。おまえの手下の悪魔って喰い友か何か? 大体、お前に似たようなやつばっかだけど」
『フっハッハッハ。確かに連中とは喰うと言う一点に於いて気が会いましてな。必要なら呼びだす次第。たしか、あの者らは聖下が我の配下に付けてくれた悪魔ですぞ』
「なるほど。私が付けたのか。それは納得」
多分、ザランバルの見た目から、前の"私"が、悪魔使役系の職業と配下を設定したんだな。召喚するNPCの能力をカスタマイズする事が出来たからね。
そしてエルフの軍人たちが艦内の通路にバリケード作ったりして組織的な抵抗をしている映像を、悪魔と天使のお姫様が微笑み浮かべて見ていたの。
この子、どちらかと言うと性格、悪魔寄りだよね。
さっき天使みたいに思えたけど気の所為だった。
「あらあら、時間の問題でしょうけど頑張りますね。艦内の〈次元封鎖〉を解いたので精霊を召喚して対抗してますが」
「人の精霊使うとは太々しいな。まぁいいぜ、どのみち押し切れる」
ザランバルたちの悪魔たちは倒されても無限に召喚できる。一度に使役できる数は有限でも、魔力さえあれば何回でも再召喚できるから。
しかも召喚体だから倒されても死ぬことがない。召喚主のザランバルを倒さない限り埒があかないんだよね。
「けど、この分だと以外に時間掛かりそうだよね。時間掛けると何があるか解らないからな。早めに決着つけようか」
最初は戦艦の中を駆けずりまわってブチ殺しに行く予定だったけど、コチラの想定外をやられると次は対応できるか解らない。
エルフの軍人連中も必死だろうしな。死兵ってのは形振り構わなくなるから怖いよ。やはりキッチリ留め刺さないと駄目だよね。
「ザランバル。確保したフリュドラさん達を離脱させることはできないか?」
『我の友人、妖魔の不死魔導師、ゼルドラスを呼びだせばできますな。奴も聖下の臣下ですぞ』
「妖精以外にも"私"、手下居たんかい」
『いや、奴は元はエルフだったような……?』
「元エルフのリッチャーか。まあいいや。よしっ、ならそいつに離脱ゲートを作らせろ」
不屍の魔術師リッチャーが更に力を求めて妖魔化したのがデミリッチャーだ。魔術師魔法や暗黒魔法の専門家。〈次元転移門〉くらい作れるでしょ、確か。
「では、私も悪霊たちを呼び出しましょうか? お早く制圧するなら数が欲しいですよね?」
「アスタロッテ……人質がまだ残ってる可能性もあるけど……その当たり大丈夫?」
「フフフ。問題ありませんよ。その程度の認識はできる者達ですから」
「じゃあ頼むよ……わたしも呼びだすか。悪魔だけに任せるってのも何か居心地良くないし、違う気がするし」
妖精の不始末だからな、コイツは。
妖精も居ないと示しつかないでしょ。
悪い子にお仕置きするには丁度良い連中が居るぜ。
凶悪だから、普段の冒険者の仕事では絶対使わねぇって奴らがよ。
「来い! 悪戯好きな妖精ども。お前らの出番だ。開け、〈幻想世界門〉!」
神祖の妖精王たるわたしの召喚に応じて、わたしが作りだした召喚魔法陣から妖精たちがやって来る。
おそらくヤバ過ぎるので前の"私"でも手放せなかったであろう奴らが。数少ない召喚契約が残ってた連中だ。
妖精は何もみんなが皆、良い子ちゃんじゃないんだよ。普通の妖精でも悪いことするし。
そして、"私"の召喚に応じて魔法陣から姿を現して来るのは生粋の性格属性、悪・中庸のやつら。性悪さは同じ性格の妖魔どもに負けるどころか多分上回ってる。
悪・混沌属性の悪霊とやる事がどっこいの連中だぜ。
まず召喚陣から飛びだして来たのは、翅妖精の中でも度が過ぎた悪戯してくる闇翅の妖精ダーク・ピクシー。もってる針でなにをしてくるかはお察し。ヤバいことしかしない。
帽子を血で染め上げるが故に赤帽子妖精と呼ばれる小鬼妖精。その中でも、黒く濁るまで帽子を色漬けした黒帽子を被る小鬼妖精、ブラックキャップ。大きなナタを持ってるぞ。もちろん振り降ろして来るぜ。
妖精の中でも平然と人を殺して食う倫理感ゼロの奴。黒透明の妖精ブッカ・ドゥー。
そして精神世界に住む妖精で物質世界の妖精であるアールヴとは対をなすアルプたちの眷属。魂喰らいの吸魂妖精ディメンター。
この2種族は姿隠して襲ってくるからたちが悪い。通常の看破魔法では見破れないから対抗手段がなければ戦いが一方的になる。
そして戦いが正統派の奴らも。
死を予告する嘆きの妖精バンシーの騎士。首無し騎士で同じみのデュラハンナイト。
コイツらは相手に死の宣告の呪いを与えてくる。
そして問答無用で大剣もって正々堂々ブチ殺しに掛かってくる。必ず殺す。絶対殺すマンだ。騎士道精神に溢れてるぞ。首をトロフィーとしてコレクションして来るけど。
そして墓守の妖精犬で同じみの黒妖犬。その中でも狡知に長ける首に鎖を巻いた妖精犬バーゲスト。デュラハンナイトの狩りのお供や、次に紹介する妖精と共に獲物を追うぜ。
そして、一見、エルフ族に見えるけど血を啜る美少女姿の吸血妖精パーヴァンシー。この子たちは獲物を敢えて殺さずにいたぶり尽くして来る極悪な子たちだよ。
正直、わたしとは性格合わないんだけど言うことは聞いてくれるんだよね。よっぽどの事がないと使わない子たちだけど。
そしてわたしは次々と他にも邪悪な妖精達を呼び出す。
ひと通り召喚し終わると、パーヴァンシーのリーダー格の狩人の子。フリギュアが進み出てきた。
「お久しぶりです、ご主人様。私たちを呼び出したと言うことは……悪い子が居ましたか?」
「そうだ。お前らに最適な仕事が見つかったよ」
金髪緑眼でエルフの代表、森妖精族と変わらない特徴の美少女エルフの子。
その子が笑みを浮かべる。他の呼び出された妖精たちも嬉しそうだね。
なぜか慕われてるんだけど、使うと本当にヤバいことしかしないから普段は召喚しないよ。
それに、前の"私"のこと聞いても余り知らないらしくってさ。むしろ、以前とお変わりなく、とか言われるくらいだし。多分、"私"も手を焼いてたと思うんだよね。この子らに。性格がDARK悪魔系だもの。
そしてわたしと同じくアスタロッテも性質の悪い悪霊どもを呼び出し終わっていた。うちの連中と遜色ない奴ら呼び出して来るのはさすが。
やっぱりこの子、悪魔だよぉ。天使要素どこぉ。
「アイギスさま。コチラも手勢をひと通り召喚しましたよ。戦い方はどうしましょうか。直接指揮なさいます?」
「……フリュドラさん達さえ無事に確保できれば……、もう後はお任せで良いよ。……ハイエルフのあの馬鹿だけはわたしが相手する感じで良いんじゃない?」
戦艦の動力炉、巨大な魔導反応炉が設置された空間に所狭しと呼び出された"邪悪"な者達。コイツら相手にエルフの軍人が何処までまともに相手できるか……考えるまでもない。
強さが違い過ぎる。銃火器なんてそもそも強けりゃ必要ないんだよね。この世界では物理攻撃力より魔法攻撃とかの方が重要だしさ。
「じゃあ、悪戯好きの妖精ども。悪霊どもや妖魔どもと仲良くやれ。季節は過ぎてるがトリックオアトリートだぜ。"悪戯されたくなければお菓子を頂戴"、但し菓子はあいつらの生命だ。行って来い」
そして、なだれを打つように妖精と悪霊たちが出撃する。核兵器をぶっ放すような悪い子には、丁度良いドぎついお仕置きだぜ。
『フハハハ! 喜べエルフども。神祖の妖精王さまが貴様らに直々にお仕置きしてくださるぞ! 聖下直属の祝福されざる妖精部隊によるワイルドハントだ。十余万ぶりの断罪に、歓喜の声を上げるが良い! フハッハッハ!』
悪魔と妖精の夢のコラボって奴だ。悪夢を見晒せよクズども。核兵器撃たれた場所は既に地獄だ。
文句はねぇだろ。




