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漆黒の愛し子  作者: 花垣ゆえ
Ⅰ章 二つの故郷
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第5話 神殿

きのと登場・・・!?



至高神ホロが創りし世界、リリーネルシア。

この世界には大小いくつもの国が存在しているが、どの国もみな至高神ホロを唯一神として崇めている。よって各国に1つその国の神殿の総本山として中央神殿が建てられており、また各国の中央神殿同士で横に緩やかな繋がりも持っていた。


では、各国に必ず1つ中央神殿が存在している理由は何か。

表向きには「その国の中にある神殿の中心的役割を担うため」である。

しかし、裏の理由―――本当の理由はある“モノ”を守るためである。


―――“休み木”である。


“休み木”は、神聖なる木のことである。

そしてそれは、至高神ホロが地上に舞い降りる際に必要不可欠なものなのだ。

なぜ必要なのかというと、至高神ホロの神気はこの世界には強過ぎ“地上のバランス”を崩してしまうためだ。だから地上に干渉しないように、神気が世界に漏れないように“休み木”と呼ばれる特別な力を持った木に舞い降り、その危険を回避しているのだ。


といっても、そうそう神が地上に舞い降りることはない。がしかし、その舞い降りる木がなければ神は決してその国に行くことはない。そのため、中央神殿は“休み木”を守っているのである。





…神に見放された国とならないために。




◆◆◆




空には大きな月がぽっかりと浮いている。

神殿の磨き上げられた大理石の床は、月明かりが反射してきらきらと輝いていた。

その廊下を滑るように、老人が一人明りを持つことなく早足でどこかへ向かっている。

彼は、絹の白地に金糸の刺繍で縁取られた、ゆったりとしたローブを身にまとっていた。その姿からも、高位につく神官だということが分かる。

彼の背中の中ほどまである長い髪は曇天を思わせる灰色で、瞳の色も同じく灰色である。今は考え深げな色をその瞳に浮かべている。

そう…彼こそはこのワーグナー国の中央神殿最高責任者、トトゥロ大神官長である。




―――胸騒ぎがする。


怪訝そうに目元にしわを刻む。

彼は世界がざわめくような気配を敏感に感じとっていた。「今日はいつになく騒がしい」と。

何かあるのだろうか…?

そのざわめきの正体を知るために、「奥の間」と呼ばれる部屋へと向かっているのだ。先ほどからその部屋よりざわめく気配を感じるから…。


「奥の間」と呼ばれる部屋は、大神官長の命が無ければ開けることができないように、強い封がされていた。また、実際に命により開けたことのある者も高位の神官が数名だけという、大変厳重に管理されている部屋であった。

ではそこまで厳重に管理されている部屋には、何があるのか。



実は、

その「奥の間」にあるモノこそ中央神殿が密かに守り続ける―――“休み木”である。




そこへ、彼は向かっているのだ。

神が舞い降りる神聖なる木に、大切な木に「何か」を感じたから。



トトゥロは「奥の間」の重厚な扉の前に着き、一度呼吸を整え精神を集中させる。

そして腕を伸ばし、指先に力を集め扉に触れる。

封を破る言葉を同時に紡ぎながら……



スー……―――。

音もなくゆっくりと開かれる扉。



そして―――「!!!」



目の前に広がる光景に彼は思わず、息をのんだ。

あまりの異常さに。



普段の“休み木”は葉が一枚も無い、ただの白色の木である。何の力さえ感じない、本当にただの木であった。

しかし、今あるのは―――普段とは全く違う、強い神気と眩い光が木から溢れだしているそれである。

そればかりか、木の枝は何かの生物ように蠢き、その木の上部にある“何か”に必死に絡みついていた。

その“何か”は、眩い光のせいで全く見えなかったが…異常である。


トトゥロは大神官長と拝命されて久しく、大抵のことには全く動じることはない。

しかし、今の彼はこの光景に畏怖さえ感じ、一歩も動けないでいた。


大事である…。



―――。

すると突然聞こえた。脳に直接語りかけてくるような、不思議な声が。

男性のようであり、女性のようであり。

甘い響きを持っていたが、他者を従わせるような厳しい響きも持って。


一言。






―――私の愛し子だ―――






その瞬間、“休み木”から光が一斉に溢れだした。

光の奔流。飲み込まれる!と感じた次の瞬間には―――静寂…。


シン…――と何事もなかったかのように静まり返る部屋。


それは一瞬の出来事だった。

部屋の中央にある“休み木”は、まだ淡く光ってはいたが以前のように静かさを取り戻していた。

また、ただの木に戻っていくのだろう…。

トトゥロもまた普段の冷静さを取り戻していた。余裕が出てきたところで改めて“休み木”をみると、なんと―――


人がいた。

しかも、少女を言っていい年齢の。

そのほっそりとした身体には、無数の枝が絡みついていた。

あぁ。先ほどの何かはこの少女だったのか…と落ち着いて見遣る。

先ほど蠢く枝がとらえていた何かは、この少女だったのだ…と。



そして―――「!」

よく見ると少女は“漆黒の髪”を枝に散らしていた。



“漆黒!!!”

はっと息を呑む。

まさか―――彼の思考が急速に回転しだす。



――先ほどの声は、きっと………至高神ホロの声だろう……。

“休み木”から発せられる、あのお声は!!!

では、「私の愛し子」との言葉の意味は………あの少女のことなのか………!?

………ならば、漆黒の髪を持つ、その…意味……は………?

至高神ホロのみに体現する色…漆黒を…その身に染める、その意味は―――!!!


そして理解する。


この少女は、至高神ホロの失われし異名“漆黒の神”たる、愛し子。






―――漆黒の愛し子なのだと。







次、男その1でてきます。

これからがイイとこですかね…。

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