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漆黒の愛し子  作者: 花垣ゆえ
Ⅱ章 暗闇から光へ
36/48

第20話 出発の証


「この後どうする?」


一日中遊びまわったというのに、乙はまだまだ元気な様子で話す。


「…ん~。そうだな…、そろそろ夕方になるからな…」


対するミハは、空に顔を上げスッと目を細めながら言った。

その横顔に傾きかけた太陽が濃い影を作った。


「もう、帰る?」


ミハの様子からそろそろ帰ったほうが良いのかな?と、乙は感じ取った。



この世界には電気がない。

だから、人々は太陽と共に生活をしている。

日が昇ると同時に生活が始まり、日没とともに終わる。

夜になるとランプや蝋燭、暖炉などで明かりをとるが、ランプや蝋燭は高価なため長い時間使用することはない。

だから、夜は本当に暗い。

乙がこの世界にきて最初に驚いたことだ。



――夜はなんと暗く、なんと明るいことかと。



明かり一つない夜はとても暗く、その夜空に浮かぶ星は煌々と輝いていたから。


しかし同時に、夜は大変危険でもある。

よからぬ輩が夜に跋扈するからだ。


だからこそ乙は、「もう、帰る?」と聞いたのだ。

まだまだ遊びたかったし、見て回りたかったが、ミハを困らすわけにはいかないから…。



乙は、ミハの返答を待った。

相変わらず目を細めて何事かを考えているようだったが、ゆっくりと目を閉じそしてまたゆっくりと目を開いた。

深緑色の瞳は、深い森のように柔らかい色をたたえていた。


「連れて行きたい所があるんだ。乙に見てほしい物がある」

「私に?何を見せてくれるの?」

「それは行ってからのお楽しみだな」

「…お楽しみか~。わくわくするね!」


クスクスと笑う乙をエスコートして、再び馬車に乗り込んだ。




◆◆◆




カッポカッポ、カタカタという音を聞きながら目的地へと進んで行った。

そこは中心からは離れた場所だった。


馬車から降りたった乙は思わず、「ここ?」と呟いた。

何しろそこは、何もない大きな空き地だったから。

乙はそろそろと近寄り、何もない空き地に入って行った。

不思議に思いながらもその中心まで歩いて行く。ミハも乙の後ろからついてきたが、少し離れたところで止まった。

広い空き地を見渡しながら乙は言った。


「ここが、ミハが見せたかった場所なの?何もないけど…いったいここは何?」

「あぁ…。ここは…、ここには、近々ある建物ができる。その場所だ…」

「建物?」

「そうだ。ここには、孤児院を建てるつもりだ…特に、双子の孤児を積極的に受け入れる、な…」

「え!?」


勢い良く乙は振り返った。

ミハは穏やかにその視線を受け止めた。


「双子の、孤児って…どういう…」

「前にも話したが、双子っていうのは忌み嫌われている…孤児が出やすい」


ミハから“双子は凶兆の前触れとして、忌み嫌われてきた”と、乙は前に聞いたことがあった。

そのため双子が生まれたら、引き離されて育つか、または一方を殺してしまうというのだ。


貴族のもとに生まれた双子は、大体は離れて育つ。

…が。

特に庶民や貧しい者は、売ってしまうか、捨ててしまうか…特に、殺してしまう事も多いという。双子としてこの世に生を受けた赤子にとって、何ともつらい運命が待っている。



ミハは話しながら、沈痛な色をその瞳に滲ませた。


「…良識がない場合、特に酷い。子供の命を簡単に手放してしまう…それが現実なんだ」

「…つらい、ね…」


乙は何と言っていいかもわからなかった。

胸が詰まって、眩暈さえした。


「だから…、だからこそ、双子を積極的に受け入れる孤児院を作りたい。…命を、この世に生まれた命を、一人でも多くの命を救いたいんだ。ここが、その最初の孤児院になる…」


そっと微笑みながら空を見上げたミハ。

その瞳には、孤児院で幸せそうに暮らす子供たちの姿が見えているのだろうか。

柔らかく微笑む顔を見て、乙はふと思った。


「もしかして、それはミハの提案で…?」

「いや、違う。私だけでなくて、…ニースとの、な」

「!」

「ここの孤児院は、国と神殿の承認が与えられることになった。そこで、国と神殿の代表として私とニースが当たる事になったんだ。…陛下や大神官長も、2人が適任だと笑って言っておられたよ」


その時の事を思い出したのか、フッと苦笑した。


「すごい!国と神殿が承認したんだね!すごいよ、それってすごいことだよ!ミハ!」

「ああ。それに国も神殿でも、双子の問題をどうにかしたいと思っていたみたいでな、タイミングが良かったっていうのもある」

「うん!それに、2人が問題解決にあたったら、すごく効果あると思う!何と言っても、この国で最も有名な双子が携わるんだもの。――きっと、きっと、上手くいくよ!」


頬を上気させながら乙は笑った。

そして、いくらか真剣な表情になって、窺うように尋ねた。


「ミハ…。さっき、ニースと、提案したって言ったけど…それって、もしかして…?」

「あぁ、もしかしてだ」

「じゃ、じゃあ、ニースと…?」


「…ニースと話し合ってみたんだ。お互い、スタートラインに立つために」


そう力強く頷いて、遠くを見るように目を細めた。

まるで、大切な幸せな記憶を思い出す様な、そんな穏やかな瞳だった。



***



少し前のことだ。

ミハはある決意を秘めてニースの元へと向かっていた。


コツ、カッ、コツ、カッ――


大理石を鳴らすミハの靴音と松葉杖の不規則なリズム音が、シンと物静かな神殿に響いていた。

ニース自ら買って出た“力”による治療のため、定期的にニースはミハの元を訪れていた。…神官長という多忙の中である。

だが、逆にミハはニースの自室に訪れたことは一度もなかった。


不規則に鳴り響く音は、ミハの緊張を高めた。


止まりそうになる足を何とか前に押し出し、ニースの元へと向かう。

…ここで止まってしまったら、自分の決心が鈍ってしまうから。


あ…。


いつの間にかニースの部屋の前に着ていた。

フッと不安を吐きだすように呼吸を整える。

そして意を決して、コンコン――と扉を叩き、「…私だ、ミハだ」と名乗る。すると、中で息を飲む音が扉越しにも聞こえてきた。


一拍置いて「どうぞ…」と言う固い声が返ってきた。


キィ――…と鳴る音とともに扉を開ける。


ミハの目に最初に飛び込んできたのは大きな執務机で、その上には書類や本などがうず高く積みあがっていた。

ニースはというと、その山の向こう側に立っていた。

ニースの居室を初めて見たミハは、少し意外にも思っていた。ニースの几帳面な性格にしては、机の上が乱雑だったからだ。


キョロキョロと無遠慮に見渡す視線を感じたのか、ニースは少し戸惑っているようだった。


「…ミハ。…なん……。いえ、それより、中にどうぞ…」

「…あぁ」


ニースは突然ミハがやってきたことに、どのように対処すればよいのか、わからないでいるようだ。

勧められたソファーにミハが腰掛けると、ニースも相向かいに座ったが、どこか所在なさげな様子だった。

常とは違い、おどおどとした様子のニースにミハは軽く苦笑した。


「ニース…、大丈夫か?緊張しているように見えるが?」

「…ッ。そう言うミハこそ…、何だか…、……」

「……」

「……」


無言。

結果、2人とも緊張していることが分かった。

このスチエーションに…!


痛い沈黙から抜け出すように、ハハ…とミハが力なく笑い、今日来た訳を話しだした。


「今日はな、ニースと話したい事があってきた」

「…そうですか」

「……。実は…前に進もうと思って、私も…もちろんニースも、…一緒にな」

「…それはどういう?」

「前に、キノトに言われたんだ『何も、2人は始まってないし、もちろん終わってもいない』と…」

「え…?」

「私たち2人の事を話したんだ、双子の呪いのことも含めて…。そしたら、キノトが言ったんだ。『2人はスタート地点に立ってすらないって…」



そうあの日。

乙に双子の話、そして自分たちの過去について話をしたのだ。


『私たちは救われたんだ、キノトに。…でも、本当に私は臆病だ。なかなか前に進めないでいる。…ニースとも、何も、何も変わっちゃいない。…きっと、ニースは私を怨んでいるから』

『そんなことないです!そんなことっ!!』

『…いや、そうなんだ。私さえいなければ、ニースは…』

『勝手に決め付けちゃだめ!…ニースがそう言ったの?違うでしょう?それは、ミハが勝手に思い込んでいるだけです』

『…いや、そんな――』

『いや、じゃないです!…何も、2人は始まってないし、もちろん終わってもいない。2人はスタート地点に立ってすらないの!そこに立つことすら避けてるんです!だから、だから、まずそこに立って、きちんと2人で話し合ってください。今から始めるんです!』

『………始まっていない…?終わってもいない…?』

『そうです!相手の気持ちを勝手に思い込むんじゃなくて、ちゃんとぶつかって!きっと、きっと思いは伝わるから。…だって、2人きりの兄弟じゃないですか』

そう言って、フッと堪えていた涙を一筋流したのだ。 

キラキラと伝い落ちる涙。美しい宝石のようだとミハは思ったのだ。

『……ぶつかるのか…ニースと…』

『そうだよ。…ぶつかることって、すごく怖いことだけど。…立ち止まっているままじゃ、何も始まらないから』『あぁ、そうだな。始めてみるよ。…スタートラインに立てるように』

『うん。…私も、始めてみようと思う』


『一緒に、一緒に始めてみよう。勇気を出して』

『…あぁ。始めよう』


乙と誓ったのだ。

前に進むと…。



ニースは息をのんで聞いていた。

その顔は血の気が引いて真っ青になっていた。

ニース…?と、そっと声をかけると、ビクッと体を震わせた。

明らかに様子がおかしいニースにもう一度声をかけると、両腕で体を抱きしめるように抱え込み、俯いた。


「ニース?おい、どうし――」

「ミハ!!…あぁ、ミハ!!ミハ、ミハ…!!」


突然、肩を震わせながらミハの名を何度も叫んだ。

泣いているのだろうか…?

嗚咽をかみ殺すようにしながら、必死にニースは言葉を紡ぐ。


「ミハ、ミハ!!わ、私が…私が悪いのです。…ミハ、は、何も…何も悪くなどないのに。私が、ミハに、そんなにも、…!」

「ニース…?いったいどうしたんだ?」

「あぁ、神よ!…私は、わ、たしは…。何と罪深い…!あぁ!神よ!!神よ!!」


髪を振り乱し、次から次へと溢れてくる涙が頬をつたった。


「ニース!」


尋常ではない様子のニースへ身を乗り出し、強い調子で名を呼ぶ。


「どうしたんだニース!…ニース!」

「あ…あぁ…、……」

「ニース!こっちを、私を見ろ!!」

「……ッ!」


強く肩を掴む。

はぁ…、はぁ…、と荒い呼吸を繰り返すニース。

そして、恐る恐る開いた瞳は、


曇天を思わせる鈍い灰色だった。


一度として光を映したことのない瞳は、涙で濡れて輝いていた。

ニースは見えるはずはないのに、必死に瞳を彷徨わせミハを探した。


「…ミ、ミハ…?どこに…?」

「ここに。目の前にいる、だから落ち着け」


縋る様にミハへ手を伸ばす。


「ミハ…、本当に、わ、私が…。私が、悪いのです。ミハは、何も、悪くなどない」

「…ニース」

「怨む?…私が、ミハを怨むなど!あぁ、そんなことあるはずはないのに!」

「!」

「そうです。そんなことあるはずもないのに…。むしろ、私が、私さえいなければ…。そうしたら、ミハは幸せな日々を送ることができたのに…」

「な、何を言って!」


驚くミハに、ニースはずっと心にしまっていた胸の内を明かした。


「私が子供の時に、あんなことを、ミハに…!なぜ、言ってしまったのか!あぁ…、己の弱い心が憎らしい!」


溢れる涙がぽたぽたと、握った拳の上に落ちる。


「本当に、ミハ…!私が悪いのです!全て、すべて…!」

「ニース!違う!あの時のニースの言葉は真実なんだ…。気に病むことなどないんだ。私が、双子なのに、ニースから全てを奪ってしまったから…!だから、ニースは何も悪くなどないんだ!全て私が――」

「いいえ!いいえ!ミハ、それは違うのです!!…私が、あのようなことを言わなければ…!」




そう。

あの時、2人が8歳の時。

いつものように遊んでいたら、ニースがおもむろにミハに言ったのだ。

ニースは、今までそのことを一度も口に出したとはなかった。

きっとずっと感じていたことであっただろうに、しかし子どもながらにそのことは言ってはいけないと分かっていたのだろう。

それでも、不意に言葉に出してしまったのか、その言葉を初めてニースが言ったのだ。


『どうしてふたごなのに、ぼくだけめがみえないの?』


『どうしてぼくだけと―さま、か―さまとくらせないの?』


『ミハがぜんぶとったの?』


『………ぼくから………ぜんぶ………』




ミハは言う。


「あの時の、ニースの言葉は、真実の言葉だった。…双子なのに。ニースだけが目が悪いのは、きっと私がニースの視力を奪ってしまったからなんだ。それに、ニースが養子に行ってしまったのだって…私が、先に生まれてきたから――」


自分さえいなければ、ニースは…!



手に顔を埋めるミハ。


「すまない、ニース!私が――」

「違うのです!ミハ!…あぁ、違うのです」


流れる涙もそのままに、ミハの肩に手を置く。


「あのようなことを言った私が悪いのです。…それに、目が悪いのは、それは端なる生まれつきです。そして、養子に行ったのも、ミハが原因ではない」

「…そんな!」

「いいえ。私はそれが正しかったのだと思います。目が見えぬ私に、ガーバント家を盛りたてていくことなどできようはずもないのだから」

「……ッ」

「それに――」


ニースは言葉を切り、ミハに顔を上げるように促す。

顔を上げたミハの瞳に映ったのは、…涙を流しながら微笑む顔だった。


「ミハ…。それに、私はよかったと思っています。…目が見えぬことも、養子になったことも。…もちろん、ミハと双子として生まれてきたこと、全ての事が」

「…!」


ニースはミハに言ってしまったことを、ずっと悔やんでいた。

なぜあんなことを言ってしまったのか…。

しかし、あの当時、何も知らない子供だった。

全てを与えられているミハと与えられないニース――そう感じていた。


ミハが全てとってしまったのだと。


でもそう言った後に、気付いたのだ。


――そんなことはないと。


自分もミハに負けぬほどの愛や幸せを与えられているのだと…!


仲の良い兄弟だったのにあのようなことがあって、ミハと疎遠になってしまった。

会えない日々が増える中、感じたのだ――双子は2人で1つだと。

片割れだけでは生きられないと…。


全ての原因は、自分の弱い心のせいだった。

だからこそ、そのような弱い心を捨てるために、神官という道へ入っていったのだ。



「ミハは、何も悪くないのです」

「そんな…。それを言うなら、ニースこそ何も悪くなどないのに…」


力ない声で呟くように言った。


…初めて知ったのだ。


互いの胸の内を…。


そしてわかった。



――それぞれが、自分が悪いと思っていたということが。



あぁ…。それは、何と…。



「キノトの言った通りだった…」

「…え?」

「『勝手に決め付けてはだめ』『勝手に思い込んでいるだけ』…キノトはそう言っていた」

「…ええ、本当に。そうでした…」

「キノトはすごいな…」


微かに苦笑しながら、顔を見合わせる。

ニースの涙は止まっていた。


「ミハ…。私たちは、前に…進めますか?」

「もちろんだ。…ニース、一緒に、前に進もう…」

「えぇ」


穏やかな顔をした2人は、本当に瓜二つだった。

まるで鏡を見ているように…。



***



話し終えたミハは、本当に穏やかな顔をしていた。

乙の前に立ちそっと手を握った。


「ニースと話ができてよかった…。でなければ、私たちはずっとすれ違ったままだった。ありがとう、キノト。キノトのおかげなんだ」

「…ミハ」

「だからここは、この孤児院は…2人の出発の証の様なものなんだ」


見上げるように空き地へと視線を向けた。

その横顔に、今日最後の夕焼けが一際強い光を放っていった。


「きっと…、きっと、良い孤児院になるよ。こんなにも2人の心が詰まっているんだから」


キュッとミハの手を握り返す。

ミハも手を握り返しながら、神妙な顔つきになり乙を見た。


「キノト…。それで、お願いがあるんだが…」

「ん?なに?私に出来ることなら」


微笑みながらミハを見上げる。


「……実は、孤児院に。…キノトからの、加護を与えてほしいんだ」

「…!」


加護――。

その言葉を聞いて息を詰まらせた。

驚愕に見張られた瞳には、戸惑いが浮かんでいた。


「…ミ、ミハ…。ごめん、私には、私には…そんな“力”なんてないの。加護なんて…」


そう。

乙には“力”がない。

至高神ホロの愛し子であるにもかかわらず、そのホロの力の片鱗である、“木火土金水”の“力”を扱うことが未だできないでいた。

だから“力”が扱えないのであれば、加護など到底できるはずもなかった。


「本当にごめん。…ニースやルシカに教わっているんだけど…全然なの。ごめんね…」


密かに、特別授業を行ってもらっているのだが、全くその気もないのだ。

実はそのことをかなり気にしていた。


“力”を使うことのできない自分は、ホロの子ではないのではないのか…?と。


申し訳なさそうに謝る乙に、ミハは安心させるように微笑む。


「キノト、何も“力”を使って加護を与えなくてもいいんだ」

「…え?だってそれじゃぁ…」

「いいんだ。ただ、キノトが願ってくれたら…子供たちがすくすくと育つようにと、願ってくれたら」

「……」


願うだけでいい――。

ミハはそう言ってくれた。

何の“力”もない自分。

けれど、願うだけでもいいというなら――力になりたい。


乙は、「うん…」と頷いた。

それを見たミハは先ほどの夕焼けにも負けないほどの、光り輝く笑顔になった。


「ありがとう、キノト!…あぁ、キノトが願ってくれるなら、きっと良い孤児院になる」

「…そうかな?」

「そうに決まってる。…それに、ここは出発の証だから。絶対に良い孤児院にするつもりだ…」


スタートラインに立った2人。

その証である孤児院。


ミハは、前に進んだ。

勇気を出して一歩を踏み出したのだ。


なら…。

私も…、一歩を踏み出さなきゃ。


乙は漆黒の瞳に決意の色を浮かべた。



――この手で守ると。




夜の帳が落ち始める。

乙は馬車に乗り込む前に、もう一度だれもいない空き地を見渡した。


そして、2人の証を想い、目を閉じる。



――カサルア。


心の中で呟いた。

乙も一歩踏み出すために…。





今回はミハのターンです!

第6・7話で双子の過去のことや乙との約束が出てきます、それのその後という感じです!

さて、次回はいよいよⅡ章の山場です。

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