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漆黒の愛し子  作者: 花垣ゆえ
Ⅰ章 二つの故郷
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第13話 優しい光

Ⅰ章最後!


「ここはどこ?」

上下左右どっちがどっち?

今、乙はやわらかい光の中にいた。

「どこ?」

わからない。でも頭のどこかでわかっていた。

そう。きっと振り返ればいるって―――あの人が。



…いた。



やわらかく微笑んでいた。

乙もそれが嬉しくて、花がほころぶような笑顔を向けた。

どちらからともなく歩み寄り、見つめ合う。


『…愛しい子。私の唯一の子。私の名は、ホロ。私に教えておくれ、愛しい我が子の名を』


脳に直接語りかけてくるような不思議な声は、男性のようであり、女性のようであり。乙の脳に優しく響いた。


「ふふふ。私の名前は速水乙だよ」

『…キノト。キノト、キノト、キノトキノトキノト。あぁ…どんなにか焦がれたことか。愛しい子。やっと逢えた』

「わたしも。逢えてうれしい。すごく、すご―――く」

『私はキノトが生まれるのをずっと待った。それこそ気が遠くなるほどの時間を。そしてやっと生まれた。キノトが。しかし…生まれいでた先は、私の創りし世界ではなかった。必死になって探すと…なんと“地球”にいた。すぐにでもわが胸に抱き帰らんとしたのだが…キノトの世界の神々が抵抗してね。愛しい我が子を横取りしようとするのだよ。あぁ…阿修羅め、乱暴に攻撃しおって』

はぁ…と嫌な記憶を思い出したように顔をしかめた。

その事実に驚きつつもホロが子どものように悔しがる姿を見て、なんだかくすぐったいような気持ちになった。

…阿修羅って。ふふふ。やっぱり暴れん坊なんだ。


『…無理にでも、それこそ地球を更地に変えようとも、キノトを連れて帰るつもりだった。しかし、キノトを生んだ母御や家族の悲しむ姿を見るとなれば…無理強いはできないと思った。あぁ、だから断腸の思いで…私は…キノトを見守ることとしたんだ。時が来れば、私とキノトは繋がることができるから。強い絆で結ばれている私たちは、いつか、きっと逢える。―――そうして、出会った。来てくれた。私のもとに!!!』

歓喜に打ち震えるように言った。



キノトは初めてホロと出会った時のことを思い出す。

あの日…森の中へ誘われるように行くと、大きな木が淡く白い光で輝いていた。

そして…腕が伸びてきて…



「あのときの人は、やっぱり…ホロだったんだね」

『そう。あの日、あの場所で全ての条件が揃い、キノトの世界に行くことができた』

異世界の神が、異世界に舞い降りることはかなりのリスクを伴う。そのため、最も影響が少ない時に逢いに行ったのだ。それがあの日だった。



―――やっと逢えた。



思いは一緒。

ずっと焦がれていた2人。



―――うれしい。



ギュッと抱きしめ合う。長い間、離れ離れになっていた時を埋めるように。強く、強く。

光が溢れる。

そしてあることに乙は気付く―――ホロの躰が漆黒色であることに。

ホロはその身から溢れる白光に包まれているため、てっきり白光色の色をしているのだと思っていた。髪も肌も。瞳はより強い金色で。

しかしこのように抱きしめて、すぐ近くで見たら違ったのだ。髪も肌も瞳も闇を切り取ったかのような、漆黒色。


そして思う…私と一緒だぁ。


乙の髪と瞳は、ホロの色なのだ。

日本人特有の黒目黒髪ではない、まして家族の遺伝などでもない。

乙は“漆黒色”の瞳と髪なのだ。

(ちなみに乙の家族は、茶目茶髪の色素が薄い家系だった。)


ホロの愛し子たるものがホロより受け継いだ色。



―――あぁ。うれしい。



ギュッとさらに抱きしめる。それにホロも応え、一寸の隙間もないように強く抱きしめる。


「ねぇ、ホロ。私はこの世界でどう生きる?」


…って、聞きたかった。

けど、そんなことを聞いてはダメ。甘えすぎ。

それに…きっとホロは答えてしまうから。

それではダメだ。

だって、自分で見つけるって決めたんだから。




存在する意味を見つけるって。

自分らしく生きるって。




「ホロ。私、この世界で生きる。精一杯。だから…見守っていてね」


見守って―――これは私のわがまま。でも、これだけは。これだけだから!

ホロを見上げる。

するとやわらかく微笑むホロの瞳と出会う。

漆黒の双眸が見つめ合う。


『もちろん。見守らせておくれ。愛しい子―――漆黒(しっこく)愛し子(いとしご)



光が溢れる。







―――ぅん。

ゆっくりと瞼を押し上げる。…夢?



今は夜と朝の狭間。

夜が終わろうとして、朝が始まろうとする瞬間。

窓の外には雲ひとつない群青色の空が広がっていた。



ホロ…。



乙は、美しく微笑む。



また逢える?



…いつでも。



ホロの声が聞こえた気がした。

うれしくなって、声を上げて笑った。



その瞳は希望の光に満ちて煌めいていた。

今後乙は“漆黒の愛し子”として、この世界で生きる。

眩いほどの光を放ち、強く強く生きる。



至高神ホロの唯一の子―――キノト。



世界が言う。




「「「漆黒の愛し子に御光があらんことを」」」









Ⅰ章終了!

きのとがトリップしてからこの世界で生きることを決めるまでを描きました。


次はおまけの回を挟みます。

内容は、きのとの家族のことです。生まれた時、成長する時、見送る時を描きます。あとホロVS阿修羅も。

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