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冬野つぐみの『IF』なオモイカタ  作者: とは


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触れ合えるのは悪いことではない その2

「このゲームでおしまいにしよっか。せっかくだから、最後は盛り上げちゃおうよ」


 箸を集めながら提案してくる品子に、惟之は胸騒ぎがしてならない。

 同じ考えであろうヒイラギと自分から、同時に言葉が発せられる。


「「却下!」」

「なんでだよ! まだ話すらしていないっていうのに。……うぅ、ひどいじゃあないか」


 うつむき声を詰まらせる品子の隣へ、さとみが駆け寄っていく。


『なくな、しなこ。みんな! しなこがかわいそうじゃないか!』


 さとみは(だま)されている。

 惟之を含め、皆がそう思うものの、さとみにそれを指摘するのは可哀想で出来ない。

 そんな自分達の心を逆手に取り、品子は少女の手を握りしめる。

 

「ありがとう、さとみちゃん。いいんだよ、私がちょっとわがままを言ってしまっただけだから」

『わがままじゃないぞ! 楽しいをしたいのは、わたしもいっしょだ』


 困り顔で品子の頭を撫でるさとみの姿に、惟之達の心に次第に罪悪感が生まれてくる。


「くっ、わかったよ品子! お前の言うとおりにしてやる。けど、この一回だけだからな!」


 さとみの悲しげな表情は見たくない。

 その思いからのヒイラギの発言に、皆は渋々ながらもうなずく。


「よっし、最後の遊びはこうだ!」


 とたんに元気になった品子が、赤い印のついた箸を机の上に置き、残りの箸をシャッフルし始める。


「あれ? 王様の箸を外しちゃうんですか?」


 不思議そうに尋ねるつぐみへと、品子はウインクをする。


「うん、先に命令と番号を決めちゃうんだ! 今までよりずっと、スリルがあるでしょ?」

「まずい! おい、しなっ……!」


 惟之の言葉を遮り、品子は宣言する。


「はい! 三番と四番が頬をくっつけま~す! さぁ、みんなくじを引こうか!」


 笑顔で品子が箸を掲げるものの、誰も手を伸ばそうとしない。

 なにかしらの罠が仕込まれている。

 皆、そう思えてならないのだ。


「あっれあれ~? しょうがないなぁ。じゃあ私が引きますかね」


 白々しい言葉と共に、品子が箸を一本取りだす。


「えーっと三番だね! さぁ、四番の人は誰かなぁ?」 


 嬉しそうに話す品子の言葉に、さとみ以外は確信する。

 品子は何か仕込みをして、自分が当たるようにしていたのだと。


「おい、品子! お前、何かズルしただろう!」


 たまらず叫び出すヒイラギに、品子はからからと笑って答える。


「え~、何を言っているんですか? 証拠もないのに変なこと言わないでくださ~い!」 

『だめだぞ、ひいらぎ君。しなこはちゃんとかくして、えいって引っぱっていたぞ』


 純粋なさとみは、品子は素直に引いたと信じ込んでいる。

 確かに不正が暴けない限り、こちらが何を言っても無駄だ。


「はい! じゃあ、僕が引きますよ」

「くそっ、俺も次に引くからな!」


 女性陣が犠牲になるくらいならと、明日人とヒイラギが名乗り出る。


「え~、私としてはかわいい子から引いてほしいんだけど」

「誰がお前の望み通りにさせるか! ってくそ! 俺は一番だ」

「うわっ、ごめんなさい! 僕のは六番です」


 なんということだ。

 残りの箸は四つ。

 どうにかして、自分がその中から四番を引かなければ。


 仕方がない。

 こんなことで力を使うのは不本意だが、ここは『鷹の目』を使って箸の番号を読み取ろう。

 品子に背を向け、発動を行おうとしたその時。


「なぁ惟之。お前まさか、鷹の目を使って番号を透視しよう。そんなこと思っていないよなぁ?」


 こちらの行動を先読みした品子からの言葉に、惟之は固まる。


「サングラスを外し、発動をしていないか目を見せろ。なんて言うつもりはない。まぁお前は、そんな不正はしないとは思うが」


 四本だけになった箸を弄ぶように揺らし、品子は挑戦的な視線を惟之へと向けてくる。


「どうせ次に引くのは、お前じゃないのか? さぁ、好きなのを選べよ」


 にやにや笑いながら、品子は割り箸を惟之の鼻先へとつきつけてくる。


「待ってください! わっ、私が引きます」


 つぐみがそう言いながら、惟之の隣へとやってくる。

 一本一本を見極めるように箸を見つめていた彼女が、手を伸ばしかけたところで惟之は声を掛けた。


「いや、冬野君。次は俺が引こう。だから君には、見守っていてほしい」


 惟之の言葉につぐみは、はっとしたように手を止める。


「わかりました。では私、そうさせていただきます!」


 大きく頷いたつぐみは品子の背後へと回り込み、惟之の正面へと立った。

 祈るように両手を組み、惟之をじっと見つめている姿に、たまらずヒイラギが声を掛ける。


「いや、冬野。惟之さんが言った『見守る』は、そういう意味ではないと思う」

「えっ! そうなのですか?」

「あは~ん、冬野きゅんはかわいいねぇ。そんな天然さんなところ、大好きだよ~ん」

 

 もはや勝利は自分のものだ。

 そう確信している品子に対し、惟之は『覚悟』を決める。

 方法は分からない。

 だが、何かしらの不正をしている品子には。


 ――多少の仕置きは必要だ。 

 惟之は、ゆっくりとサングラスを外していく。


「いけません、靭さん! そんなことをしたら目が!」


 サングラスを外せば、惟之の目には痛みが襲う。

 そう思っているつぐみからの悲愴(ひそう)な声が部屋に響いた。

 すでに自分の目は、完治している。

 その事実を知らないつぐみからの声に、黙っているという負い目が惟之の心に痛みを与える。

 せめて心配をかけまいと、彼女へと笑みを向け、惟之は答えていく。

 

「長時間ではないから大丈夫だよ。さて品子、俺の左目を確認してもらおう。これで俺が、鷹の目を使っていないことは実証されるな」


 惟之が鷹の目を発動すれば、瞳は金色に変わる。

 まっすぐに品子を見据えれば、彼女も自分へと目を合わせてきた。


「……あぁ、確かに発動はしていないな。じゃあ、引いてくれ」


 まさかの行動に、品子はしどろもどろになっている。

 

 文字通りに目の前にある、四つの箸を惟之はじっと見つめた。

 先ほど声を掛けてきたつぐみが、品子の後ろから真剣な表情で自分を見つめてきている。

 残りは二番、四番、五番、七番だ。

 彼女のためにも、確実に四番を引かねばならない。

 無言のまま見つめ続けることしばし。

 そのうちの一つである箸を掴めば、品子が驚きに目を見開く。

 箸を取らせまいと力を入れてきた品子に、惟之は笑みを浮かべてみせた。


「どうした品子? まるで()()()()()()()()()()といわんばかりじゃないか」

「べっ、別にそんなわけじゃ!」

「そうか? じゃあこれを選んでっと。……ほぅ、これはこれは」


『四』という数字が見えるよう、惟之は品子へと箸を差し出してみせた。

 

「俺がお前のお相手だよ、品子。さぁ、覚悟を決めてもらおうか」

お読みいただきありがとうございます。

次話タイトルは『触れ合えるのは悪いことではない その3』です。

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