機械の神1
翔達が新武器を試していた頃、神藤邸では黒鴉が海外での戦闘を聞き父の心配をしながら修繕と調査で封鎖されたビルから持ち帰りで事務作業を行っていた。
海外に調査報告を交換しあって戦闘データをまとめながら神華に敵についての質問をする。
「最初にも聞いたけど神田は今回の機械兵団について知らない?」
「すみません、アタシは知れないです…兄弟と言っても互いの情報はほとんどありませんので…」
神華は書類をトントンと机で整えながらため息を吐く。
「はぁー、どうしてこう上手く行かないかなぁ」
力を失いただの一般人レベルまで堕ちた自分の人生に泣き言を呟く。
「なら自分の世界に帰ればいいのに」
「帰りたくても眼鏡奪われたからね…まぁ元より作ってないんだけど」
ペラペラと書類を捲りながら答える神華に黒鴉は同情する。
「力を奪われたのは同情するわ、何も悪いことしてないのよね?」
「ええ!成り上がる為の努力はしてます」
荻原の事をすっかり忘れている神華は開き直るように自分が如何に努力してここまで来たか力説しようとする。
「努力して大企業に入社して実力で成り上がって権力を得る!夢物語をですねぇ!」
「神様って便利ね、ウチに簡単に入社して一年経たずで社長秘書だなんてね」
自身の魅了支配を使ったなんて言えないが使ったとしか思えない程のサクセスストーリーに黒鴉が笑う。
「ああ、えっと…実力は確かでしょう?」
話しすぎたと気付き笑い誤魔化しながら何かを話そうとするが黒鴉の声に遮られる。
「お父様からのメール!」
黒鴉はパソコンにかじりついて神華は誤魔化す必要がなくなり安堵する。
「ふふ、お父様も商売根性逞しいわ、オリハルコンの買い付け行ってくるそうよ」
「ええ!?まだ使用方法決まってないのに買うんですか!?」
「技術と情報の共有を条件に休めに入手できたらしいわ」
これからの開発をウキウキになりながら事務連絡を始める。
「新素材か…」
神華は幾つか書類を確認して頭を抱える。
「数少ないのになにが作れるのか…そもそも加工できるの?」
「そこは技術者頼りね、まぁ何とかなるわ」
父の安否も知れて気が楽になった黒鴉が伸びをして翔達の事を思う。
「浜松も新武器で活用できそうだし今回も楽勝ね」
「そんな上手く行きますかねー、というかあの男に御執心過ぎません?」
翔を意識し過ぎと言われて黒鴉が鋭い目付きになる。
「可愛い妹を奪った男よ!使い潰してやる」
ダブルスタンダードな発言だが神華は事情を知らず適当に聞き流す。
「双子だから好みも同じかと思いましたよ」
「…っく、私の理想はもっと大きくってよ!イケメンは必須よ」
「はいはい面食いっすね」
黒鴉は翔への憎しみが増したのか震えながら黒い笑みをする。
「ふ、ふふ…早く敵来なさい」
「こわ…もう男の話はやめとこ」
神華は黒鴉の狂いっぷりに冷や汗を流しながら反省するのだった。