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神の下僕は世界を守りたい  作者: D沖信
精神と鉄機を操る神々
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飛んだ記憶2

暫く窓の外をただボーッと眺めていると扉をガラッと開けて黒鴉が意気揚々と入ってくる。

「やぁ浜松、家で転んで入院とは災難だったわね、ぷぷ」

黒姫に似ているが雰囲気も態度も全然違う相手に翔は目を細めて睨むようにして観察する。

「えっと…誰だ?」

翔の言葉に黒鴉が固まり笑い顔のまま青筋を立てる。

「ムカついたからってその言い方はないんじゃないかしら?」

「いや、その記憶喪失なんで」

「はぁ!?この私を忘れたですって!?ふざけんじゃないわよ」

黒鴉の怒鳴り声に新顔の黒服の女性が扉を開けて入ってきて今にも殴りかかろうとする黒鴉を掴み止める。

「黒鴉様、落ち着いてください」

「止めるんじゃないわ神田ぁ!今すぐにこいつの頭叩いて思い出させてやるのよ!」

神田と呼ばれた女性が黒鴉にそっと耳打ちすると黒鴉がニヤリと笑う。

「しょうがないわねぇ…浜松!」

「な、なんでしょうか?」

黒鴉の暴れっぷりにドン引きしながら翔が返事をする。

「我が社のチームの一員としての自覚が足りないから喝を入れてやろうと思ったけど確かに病院で暴力沙汰はいけないわね」

勝手に捏造した話を始めようとする黒鴉だったが黒姫が入ってきたことで中断させられる。

「姉さん!?なんで居るんですか!?」

「ッチ、間が悪いわね…」

計画が上手くいかず舌打ちする黒鴉を軽蔑する目で黒姫は見つめる。

そして隣の神田を見て二人とも下がるように注意する。

「姉さんは癇癪起こしてすぐ暴力に移りそうですからね…翔君の傷が癒えるまでは近付かないでください」

睨む目は前髪に隠れているが強い敵意と威圧感を向けられて黒鴉がたじろぐ。

「か、過保護ね…神田、下がるわよ」

「申し訳ございませんでした黒姫様、失礼致します」

出ていく二人を睨みながら見送った後、黒姫はバッグから何冊か漫画と小説を取り出して翔に手渡す。

「翔君の部屋にあった本です、何か思い出しますか?」

「表紙だけじゃなんとも…ありがとう神藤さん」

「名前で…それと呼び捨てでいいです、前から呼び捨てですから」

黒姫が寂しそうにする。

「わかった、黒姫…」

名前を呼んだ途端翔の脳に電流が流れるような感覚がして頭を押さえる。

「痛、何か思い出せそうな気がする」

「本当!?子供の頃に結婚する約束を…!」

「してないな…あぁ、うん、思い出した」

黒姫がちょっとがっかりする。

「したんですよ?でもそれがないなら本物ですね」

「どっちだよ!神鳴の捏造の記憶か…」

神鳴の名前も過去の食い違いの記憶も正しく黒姫の知る翔だった。

「でも私の名前で記憶が戻るなんて愛ですよね?」

「普通に混乱してた記憶の整理が出来ただけだって…ロマンチストだなぁ」

翔は黒姫のアプローチをのらりくらりと回避しその後感謝する。

「色々と心配かけたな、ありがとな、後は傷を癒すだけだな」

「そうですね」

「ところで…今朝バナナを食って皮を階段に仕掛けた馬鹿は一体誰なんだ?」

黒姫が固まりしどろもどろになりながら答える。

「別に仕掛けた訳じゃなくて、ゴミ捨ての時に落としたというか、運が悪かったというか…その…ご、ごめんなさい!」

「そうかお前か…」

翔が笑顔で威圧すると黒姫は必死に何度も謝り翔は仕方なさそうに許す。

「バナナの話したら腹減ったな…朝食抜いてるし何か食べたい」

「す、すぐに何か用意します」

罪悪感で従順になった黒姫が飛んで何か食事を用意しに行く。

翔は窓の外を見て今日も平和だなと呟いていた。

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