二人1
朝、何時も通り目が覚め、何時も通り食事に階下に降り、大あくびをしながらリビングに入る。
「おはよう…あれ?」
普段なら誰かいるはずだが幾つかの書き置きがテーブルにあった。
読むのを後にして朝食の準備を終えた後に席に着き書き置きを確認する。
「なになに、一時里帰りしますぅ?」
玉藻前とダンが一度自分の世界に戻るとの事で神鳴が面白半分に着いていくというメモだった。
トーストにジャムを塗りながら神鳴も行ったことを愚痴る。
「どうせなら俺も行って暇潰せればよかったな…」
リモコンを操作してテレビを点ける。
「んー、見事な晴れ、今日も一日暑い日か…」
天気予報を聞きながら食事を終えてコップの牛乳を飲み干して食器を流しに置く。
「暇だな…」
外に出る気にもなれず何しようかと頭を捻る。
「おはようございます」
黒姫が私服で挨拶してくる。
「んあ、おはよう…」
翔は書き置きを黒姫に渡して大きく伸びをする。
「へー、里帰り…では暫くは二人きり…」
含みのある言い方に翔が嫌な予感がして話を変えようとする。
「向こうの世界も見てみたかったよなぁ…」
「そうですねー、ふふふ」
「は、はは…なんでしょうか?」
黒姫の放つ威圧感に近い熱視線に根負けして翔が何を考えているのかと尋ねる。
「デートです」
「猛暑日です」
翔が即答で嫌と近いニュアンスで答える。
「デートです!」
「何のプランもないですよ!?」
黒姫が確かにと何かを考える。
「仕方ありませんねお家デートというやつです」
邪魔されずに二人きりで過ごせるチャンスを逃さないように必死に策を練りだしてくる黒姫に翔は黒鴉とその父のプレッシャーを背中に感じる。
「まだ死にたくねぇ…」
「…?」
翔の気苦労も知らずに黒姫は朝食の準備を始める。
「翔君は映画とドラマどっちがいいですか?」
「んー、シリーズ一気見でもする気か?映画の方がいいかな」
どうやって見るのかと考えていると黒姫が楽しそうに鼻歌を歌いながら朝食を完成させて翔の対面に座る。
「ふふ、クレジットカード!」
「ウチのじゃないよな?…神藤の方だよな?」
黒いカードに驚きながら聞くと黒姫は頷き堂々と宣言する。
「姉さんの経費で落とします!」
「おもいっきり横領じゃねーか!せめて許可をだな…」
「そんな事したら…来ますよ?姉さん」
容易に想像できる光景に翔が身震いする。
「事後報告で行きます」
「どのみち黒鴉に切られそう」
食事を終えて黒姫はニコニコしながら自室からノートパソコンを持ってくる。
「これをテレビに繋げば何でも見れますよ」
「いつの間にノートパソコンなんて…」
「色々買ってますから、えーっと」
テレビの裏から回線を引っ張り出して繋ぐ。
「…俺の知らない配線が!」
「無線もありますけど映画見るなら有線ですよね」
「無線!?」
知らない間に家の環境を改造されつつある事を聞き翔はまた驚愕するのだった。