試験
暫く待って黒鴉がマイクを握り舞台の上に立つ。
「ようこそ覚醒した皆様、本日は日本、ひいては世界の危急存亡の秋に備え我々神藤グループの新規事業にご応募いただきありがとうございます」
壇上には黒服の男達が睨みを効かせていた。
「皆様は優秀な成績を納めた各地域の精鋭、是非頑張ってくださいね」
試験を行うためと幾つかの班分けを行われ翔は三人の男性と共に黒鴉に連れられて地下の駐車場に連れてこられる。
「遠藤様、久坂様、加藤様、あと浜松様は別会場です」
中には先程声をかけてきた男もいた。
「別会場？ふふ、特別待遇か」
筋肉質な大男が嬉しそうに用意された車に乗り込む。
「無愛想な君もか…成る程ね、俺は久坂健吾、俳優やっているんだ、ヨロシク」
久坂と名乗った男は口だけの挨拶を翔にして大男に続いて車に乗る。
残った細身の男性が翔に挨拶する。
「君とは挨拶してなかったね、若いね、浜松君？僕は遠藤貞光、お互い何が待ってるか分からないけど頑張ろう」
（ということは残った大男が加藤か）
翔も遅れないように車に乗り込む。
着いたのは一軒の豪邸だった。
「貴方達の実力を知った上で一番難しいテストをするわ」
黒鴉は結構大きい魔石を黒姫に持ってこさせる。
「ま、一人実績二千円のお馬鹿も居るみたいだけどどうしてもってお願いだから、死なないでよ？」
男達の目線が翔に集まる。
「は？っち、足引っ張るなよ」
「てっきり裏で稼いでた凄い人だと思っていたよ」
顔から火が出そうな程恥ずかしい思いをさせられる。
「一番の働き者には顔役になってもらわないといけないからね、末永く支えてもらうためにも…黒姫をあげるわ！」
何を言っているのかと翔が言おうとするが男三人は財閥の一族になれると知って歓喜の声をあげる。
（黒姫…こうなること知って俺を呼んだのか…）
「じゃあ行くわよ、魔石は使い方を知っていれば魔物を呼び出すこともできるのよ」
黒鴉は大きい魔石を投げようとするが諦めて転がして叩き割る。
すると中から大きな飛竜が現れる。
「おいおい、ヤバい感じじゃねぇか？」
「ワイバーンって日本未確認じゃないか？」
久坂と遠藤は逃げ腰になっていた。
鼻を鳴らし加藤が勇猛果敢に拳で立ち向かうがひらりと宙を舞うワイバーンを捉えられずにいた。
「取り寄せた魔石が飛竜とは…まずいわね」
黒鴉が指を噛みながら恨めしそうに飛竜を睨む。
「黒鴉、あれ倒せばいいんだな？」
「は？あんたは茶番の為に…」
（呼べるか分からないが氷雨が使えればアキトさんみたいに…）
翔はダメもとで焰鬼と氷雨を呼んでみる。
「焰鬼！氷雨！」
二本の刀が手元に現れ手に取り腰に携える。
「あれ一体で数十万か…昔の俺ならビビっただろうけど今は不思議と勝てる自信しかないな」
翔は三人を飛び越え氷柱を飛ばし飛竜の動きを制限させながら氷の足場を作り焰鬼の一撃を当て飛竜を燃やす。
「ふう、ぶっつけ本番で上手く行くもんだな」
全員から熱い視線を向けられて翔が自慢気に手を振る。
飛竜は魔石になりそれを拾おうとする翔だったが何者かに妨害され魔石を奪われてしまう。
