金の卵を求めて4
スタッフが慌ただしく準備を進める中で翔が黒鴉に参加者の確認をする。
「そういえば海外や他のチームにはどういう奴がいるんだ?」
黒鴉が渋い顔をしながら資料を見るように言う。
「さっき渡した予定表と資料見てちょうだい、悪いけど私は挨拶の準備に行くわ」
翔がちゃんと確認していなかった資料を黒姫と共に確認する。
黒姫が予定表を見て呟く。
「参加者30人近くいるのに予選で16人になるって凄いですね…」
「どうせ予選落ちするのは数合わせのやらせ要員じゃないのか?ほら」
翔は参加者名簿を見て役職で目立ちそうな人を指差す。
「現役の巫女だとか神父とかいるんだぞ?流石に…」
「翔君、ここは地球であって地球じゃないのですよ?神鳴が作った世界ならありえます…多分」
「まさか、いや…ありえるな…」
翔はパラパラと名簿を捲っていく。
無個性な学生や会社員等もいる中で異彩を放つ役柄に翔は畏怖する。
「あれ?参加者は皆日本人っぽいですね…海外の人来るって言ってましたよね?」
「他の参加者と違う待遇なのかもな」
名簿からカタカナ表記の名前のを取り出し黒姫に渡す。
「ミハエル・ストーンズ…これさっき翔君が言ってた現役神父さんじゃないですか?」
「…あ、ほんとだ」
翔は急ぎ何枚か資料を抜き出して黒姫に渡す。
「これが巫女さんの…葉山絣、こっちは格闘家ですか盛岡孝夫」
「格闘家は無名だけど魔物退治とは実力は別だしな」
「なるほど、あ、医者なんているんですね…金森勇気強いのでしょうか?」
翔は資料を確認するが戦闘方法等は記載がなく首を傾げる。
「それは…わからないな軽いプロフィールしか載ってないな」
「女性の外国人さんですね、ロゼット・マルコフ…警察官、公務は大丈夫なんでしょうか?」
一人一人確認していると翔の携帯が鳴る。
素早く取り出して確認する。
「黒鴉か…どうしたんだ?」
「黒姫に代わって頂戴」
本人に直接かけろよと思いながら黒姫に電話を渡す。
「姉さん?…うん、分かったわ」
通話を切ると携帯を返してくる。
「なんだって?」
「少し煩くなるけど許してって」
翔の頭に疑問符が浮かびそうな顔をすると競技場の天井が音を立ててゆっくりと閉まっていく。
これの事かと思っていると警報がけたたましく鳴り響く。
どよめきと動揺が会場に広まるなかで翔がハッとして黒姫を立たせる。
「やりやがったな…黒鴉とスタッフを…いや、アイツは自分で身を守れるか」
「察しがいいんですね翔君」
「お馬鹿!事故があったらマズいだろうが!」
翔が大声で会場の準備していた人達に呼び掛ける。
「全員散開!敵襲!」
翔の声にいち早く反応した八坂と久坂が二手に別れ通路に入っていく。
他の参加者も慌てて蜘蛛の子を散らすようにバラバラと移動を始める。
その様子をモニターで見ていた黒鴉が大笑いする。
「呼んで正解だわ、私が表立ってやるよりいいでしょ?」
「ナレーション使う必要無かったですね」
魔物が溢れる廊下をモニタリングしながら扉の施錠を確認する。
「ま、扉薄いのがちょっと心配だけどなんとかなるでしょ」