金の卵を求めて3
黒鴉の指示で翔は一度会場を離れまた別のモニター室に案内されそこでこれからの説明を受ける。
「さっき聞いた通りあなたは補充要員、不慮の事故で参加者が動けなくなった場合に参加してもらうわ」
「不慮の事故って…」
「予選が小物の魔物を狩って数を競う予定なんだけど…」
大量の小さい魔石が部屋一杯に用意されている監視モニターを見せて黒鴉が説明を続けようとするが翔がその量に驚かされる。
「これ…この数…何かあったらヤバいだろ」
「その為の監視モニターよ、取り敢えず、まぁ実力者揃えてるから負傷者はそこまで出ないと思っているわ」
翔の不安とは別に勝手に話を続ける。
「その後は参加者同士で戦うトーナメント」
「この前黒姫と本気でやりあったがまさかそれレベルをやる気じゃ…」
全員が武器を持って血ミドロな様相を想像して青ざめる。
「そんなのしないわよ!これは宣伝、キャンペーンよ?有っても打撲とかで済むようにするわよ…ちなみにあなたは木刀ね」
「…アキトさんならまだしも俺じゃ無理だぞ、精霊禁止は」
「あら?諦めるの?」
挑発するように黒鴉が笑うが翔は真面目に答える。
「いや、テレビ的にも木刀は地味だし…」
「…そうねぇ、まぁ考えとくわ」
確かに絵面は地味だと思い直し打開策を考える事にする。
「兎に角、まずは小物の討伐稼ぎ、楽しみにしてなさい」
「そこは俺には無関係な話だがな…」
「あら?なにかあったらテレビクルーをしっかり護衛するのよ?」
翔が引き気味に困惑する。
「いやいや楽しみって、まさか悪いこと起きる事期待してるのか?」
「どうかしらね…さぁ準備に取り掛かるわよ」
黒鴉が気合いを入れ翔に予定表を手渡して部屋を出ていく。
翔も予定表を見ながら黒鴉を追う。
黒姫が魔石を保管している部屋の前で不安そうにキョロキョロと周囲を確認している所に黒鴉と翔が合流する。
「この中に大量の魔石が…」
「金額が低い低級品よ、お父様の言う通り面倒なやつよ…」
IDカードをかざし扉を開ける。
モニターで見ていたが山のように積まれた小さい魔石に翔も黒姫もドン引きする。
黒鴉は小石ほどの魔石を一つ掴み翔に投げる。
翔は落とさないようにキャッチしてそれを眺める。
「これ割れるのか?」
あまりの小ささに翔が疑問に思う。
「さあ?ペンチかなんかで割るんじゃない?ほらそこの台車に乗せて」
「こういう仕事こそテレビ局のクルーがやるべきじゃないか?」
「馬鹿ね、もし割って抵抗できなかったら大惨事よ?」
そんな危険な物扱おうとするなよと翔は思いながら台車に段ボールを乗せて適当に詰めていく。
「まだまだ余ってますね…」
黒姫が全然減らない山を見て呟く。
「本当、何とかならないかしらねー」
他人事のように黒鴉が台車を押し三人で部屋を出てしっかりと施錠する。
ゴロゴロと音を立てて指定の場所に運び観客席で一息入れる。
「誰が一位取ると思う?野良のチームもちょっと気になるのよねぇ」
黒鴉がニヤニヤしながら翔と黒姫に尋ねる。
「あの騒ぎ起こした八坂って強いの?」
「どうだろうな、俺が木刀だったら普通に負けると思うぞ?」
「あら?じゃあ期待するわ」
黒鴉は自分の陣営には興味無さそうに他の参加者を眺めるのだった。