金の卵を求めて1
金の卵を発掘するという目的で黒鴉が開く親善試合とやらに行くことになる浜松家御一行、そこに黒鴉の期待していた神楽の姿はなくアキトがいた。
「ちょっと何でアキト…先生がいるのよ」
呼び捨てにしようとして睨まれ先生と付け加える。
「仕方ないだろ、向こうでも学業あるんだから」
アキトの返答に不服そうな態度を取るが諦めて会場に向かうことになる。
会場の大きな競技場に着くや否や黒鴉が不穏な事を言う。
「浜松達が来てくれたお陰で魔物も呼び出せるわねー」
「普通に覚醒者同士で戦うんじゃないのかよ!」
神鳴が退魔士と訂正する声を無視して翔が文句を言う。
「ふふふ、スポンサーが刺激を求めててねー、いいでしょ?テレビもあるし」
大きな競技場を借りただけあって大規模なイベントになるようだった。
「姉さん、大事な話ちゃんとして欲しかったです」
「まあまあ、皆は参加者のコメントするだけでいいからー」
アキトが玉藻前達を見ながら聞く。
「俺やコイツらは映らないよな?少なくとも狐と吸血鬼は大問題になるぞ?」
「安心して皆は別室、ちゃんとそこは弁えてるわ」
ホッとする一行はその別室に案内される。
モニターが幾つもありテーブルには色々と飲み物と軽食が並んでいる。
部屋の様子を見て翔が恐る恐る聞く。
「…飯も有るってことはめちゃくちゃ長いのか?」
「そうね、ロケもあるし…モニター越しじゃ分からないなら会場行っても良いのよ?浜松と黒姫…それに先生は違和感無いでしょうから歓迎するわ」
準備のいい黒鴉を不審に思いながらも神鳴達がモニターを眺め始める。
「トイレは廊下に出てすぐ、御飯は定時になったら出すわ、飲み水はウォーターサーバー、何か質問は?」
アキトが翔と黒姫の背中を押す。
「子守りは任せてお前らは行ってこい」
翔達の反論を待たずして部屋から締め出す。
仕方なく黒鴉に着いていくことにする。
「よっしゃ!あいつらの分の軽食と飲み物はいただきだ!」
二人が去ったのを確認してアキトの一声で盛り上がり小さなパーティーが始まる。
会場を見にがらんとしている観客席に案内される。
「まぁ取り敢えずここで参加者の確認ね…」
紙の束をチラッと眺めながら説明を始める。
「浜松は久坂健吾と遠藤貞光…覚えているかしら?」
「ああ、試験の時にいた…あれ?加藤って大男は?」
「怪我で辞退、残念ね…」
パラパラと紙を捲って他の選手の名前をあげる。
「そうね、ウチのところで最近成績上がってるのが…」
黒姫が何かを見つけて小さな悲鳴を上げて翔の背に隠れる。
「ああ、荻原も居るわよ?アイツ結構頑張ってるのよ?父親捕まってから特に」
面白そうに笑うと翔をチラッと見て一人の人を指差す。
「彼あなたの名前あげてたけど知り合い?」
八坂が準備運動をしているのが目に映り翔は顔を覆う。
「まさかマジで殴り込みするとはな…」
「今回は各地で名前と賞金上げてるチームを呼んでいるのよ、彼無名だけど世話になったし丁度良かったから入れてみたわ」
「神藤グループ以外からも?」
黒鴉は自慢気に鼻を鳴らして資料を見せてくる。
「そりゃテレビの企画よ?ウチ以外からも出して盛り上げないと、海外からも呼んでるのよ?」
「…出来レースじゃないよな?」
黒鴉は親指の爪を噛みながら意味ありげに参加者を見る。
「シナリオはあるわ…悔しいけどね」
「あー、やっぱり?」
「あなたや黒姫が出ないのはその為よ…」
黒鴉は時計を確認すると打ち合わせがあるからと二人を置いてどこかへ行ってしまった。