修行の成果3
助っ人を終えて帰ろうとする翔を呼び止めて黒鴉が礼を述べる。
「私一人でもなんとかなっただろうけど助かったわ」
「まあ一度戦った相手だからな」
納得するように頷き尋ねる。
「よく刀で倒せたわね…私の攻撃通らなかったのに」
「まぁ黒姫のサポートあったし関節部は通ったから…」
「そもそもなんであんたが倒した奴が出てくるのよ!」
黒姫の名前が出て黒鴉の機嫌がちょっと悪くなる。
「黒姫がお前の代わりにお前として仕事してその時にな」
「ふーん、その時に一緒に居たのね」
更に目付きが鋭くなる。
黒鴉が何かに気付き目を見開く。
「…ちょっと待ちなさい、黒姫は私として戦ったの!?」
翔が目を逸らす。
「ちょっと!答えなさいよー!」
浜松家にて、神鳴からお呼びだしを受けた神楽がクレームを受けていた。
「どうして精霊とか教えたのよ…もし全員使えるようになったら…!」
「あら?私が渡した武器と他の武器を一緒にしないでよ?精霊はあなた達の世界でいう付喪神、そこいらのなまくらとは違うわ」
黒姫が首を傾げる。
「それじゃあ年代物の武器だったりしたら凄く強い精霊が出てくることになりません?」
神楽が無言で考え込んで都合が悪い展開になると判断して逃げようとする。
「流石に大丈夫でしょ、それじゃ説明はしたから…」
「姉さん?」
「そんな年代物のお宝を使える人間なんて居ないわよー」
黒姫が姉の名前を出すと神楽は誤魔化し笑いをして逃げて物置に飛び込む。
「姉さん!待ちなさい!」
神鳴が逃げる神楽を追って物置に入っていく。
残された黒姫が一人残され物思いに更ける。
(神藤家の名前を使えば…)
翔が疲れた様子で帰宅してから黒姫から神楽の話を聞き黒姫の新しい武器の提案を拒否する。
「なるほど、武器の歴史か…畏れ多くてそんなもの使えないし今のままで十分だ」
「そう…ですか、少し見てみたかったですけど」
「何より借り作るの怖い」
翔の本音を聞いて黒姫が笑う。
「姉さん苦手ですか?」
「向こうが俺に敵意を度々向けている気がしてな…あと親父さんも」
そこに飲み物を取りに降りてきたダンが居合わせて話を聞いていたのか茶化すように言う。
「それアレあるな、家族取られた嫉妬というものであーる」
炭酸飲料を二本持って玉藻前への愚痴を呟きながらそそくさとリビングを出ていく。
「なるほど…金持ちの嫉妬は怖いな」
「ふふ、お金持ちじゃなくてもそういう感情は怖いものですよ?気をつけてかださいね?」
黒姫は携帯の通知に表示される黒鴉の名前を見て意味深な笑みを浮かべてリビングを出ていく。
翔は苦笑いしながらテレビを点けて流れるニュースをボーッと眺めながら呟く。
「全員のご機嫌取りなんて無理だよなぁ…はぁ」