修行の成果1
異世界での修行生活をある程度アキトが説明をしていると竜司は父親として一番知りたい話を聞いてくる。
「悪い虫が近寄らなかったどうか…そこが知りたいですね」
アキトを睨みながら聞くと黒鴉が全力で否定する。
「お父様、それはあり得ないわ…流石に」
「しかし君からは何か違和感を感じるんだよな…」
黒鴉の弁明よりもアキトの正体について言及しようとすると翔達の顔がひきつる。
「説明するのは難しいですが…元地球人とだけ…」
「ほう、あぁそうか」
翔の方をチラッと見て納得する姿を見て神鳴が呟く。
「こいつヤバいわ…」
「褒め言葉と理解して良いのかな?」
聞き逃さなかった竜司に神鳴が小さな悲鳴を上げる。
黒鴉がキョロキョロと何が何やらという感じで困惑していると竜司が席を立つ。
「さぁ帰るか、黒鴉?」
「は、はいぃ…」
黒鴉を引き連れて帰っていく。
浜松家を出ていく神藤親子を見送ってようやっと解放された翔達が深いため息を吐く。
「俺の正体さっさと見破るとはなぁ」
アキトが青ざめながら頭を掻く。
「流石の観察眼ね、財閥の社長ってああいうものなの?」
「父さんが特別なだけかと…」
神鳴がうんざりした感じてテーブルに突っ伏して愚痴ると黒姫が苦笑いで答える。
翔は話を変えるようにアキトに質問する。
「そういえば黒鴉の性格矯正は?」
「あ?ムリムリ、精霊については理解してもらえているとは思う…多分な」
疲れた様子でアキトは不安な事を言い残して帰っていった。
屋敷に向かう車の中で黒鴉は父親から説教を受けていた。
「修行も良いが業務を妹に押し付けるのはいただけないな、わたしに一言言えばすぐに帰って来て許可したのに」
「申し訳ございません、一人戦えない自分に苛立ってしまい…」
「焦りは身を危険に晒す、お前はわざわざ前に出る必要はないのだから」
愛でるように頭を撫でられて黒鴉はビクッとする。
「ああそうか、黒姫に嫉妬したんだな?」
心の内を見透かされ黒鴉は悔しそうに反論する。
「違う!黒姫が傷付き続けて苦しんでいるのを…戦うのを辞めさせる為に…!」
「ははは、そういう事にしておこう。それで?どれくらい強くなれた?」
黒鴉は自信あり気に胸を張る。
「ふふ、期待してくださいお父様!今なら飛竜でも落としてみせましょう!」
「そうかそうか!では屋敷にて見せてもらおうか!」
「え!?屋敷で!?」
突然の提案に黒鴉が驚くが少し考えた後震えながら承諾する。
「や、やってやりますわ!」
「がはは、楽しみだ」
ニコニコする父親に恐怖を感じながら黒鴉は拳を強く握り奮起する。
竜司は隠れて携帯を操作していざという時の為に連絡を入れて翔達を呼ぶことにした。