令嬢の勤め6
座敷を追い出されてどうしようかと翔と黒姫が顔を見合わせる。
「取り敢えず姉さんのふりしなくていいんですよね?」
「親父さんも休んで自由にしろって言ってたしな…」
二人は服装をお互いに確認して「着替えるか」と呟き部屋に戻る。
私服に戻して部屋を出ると竜司がビジネススーツを着て翔に威圧的に話しかけたくる。
「黒姫の前ではああ言って君を認めたが、君自身は黒姫をどう思っているんだ?」
「黒姫は…色んな事を俺のせい含めて背負っていますから、俺が一緒になって…」
「あー、違う違う、そういう無理に真面目な返答じゃなくてさ、単刀直入に好きかどうか、結婚したいかどうかだ」
気負って言い訳じみた事を言う翔に急にフランクになって聞いてくる。
「好きです、結婚…したいですけど」
「ふむふむ、両者両親公認で許可しようじゃあないか!ははは」
「両者?うちの両親に会ったんですか?」
軽い感じに説明を始める。
「会ったぞ、黒鴉から君の話を聞いてご両親を調べたら海外にいるって話を知ってね、ビジネスついでに会ってきたよ。情報網と行動力と速さだけは取り柄でね」
がははと自慢気に語る竜司にある種の恐怖を感じながら翔は両親について聞こうとするがそれより先に竜司に付き合いについて釘を刺される。
「卒業までに手を出したら…殺しちゃうかもだから、わかってるよね?」
「は、はい!大丈夫です。まだ手を出してません」
「じゃあ、この話はここまでだ、節度ある行動をよろしく頼むよ」
大笑いしながら去っていく竜司を翔は呆然と見ていた。
ひょっこりと黒姫が顔を覗かせてその話を聞いていたのか顔を赤くする。
「親バカだから気にしないでくださいね、さぁ帰りましょう」
「恐いのか優しいのか分からない親父さんだな…うちの両親に会ってたとは…」
両親の事を聞き忘れたと翔が思い出したが竜司はもう居なくなっていて諦めざる終えなくなった。
「私、父さんに認めてもらえるとは思ってなかったから…凄く嬉しいです」
「あの親父さん相手だと駆け落ちもできそうにないからな、はは」
「えー駆け落ちする気概合ったんですか?」
二人は冗談を気軽に言い合いながら屋敷を後にする。
車の後部座席で電話をしながらノートパソコンを操作しながら不敵な笑みを浮かべる。
「あー、荻原さん?此度は残念でしたな、いやぁ、しかしとんでもない仕事持ってきましたね、ええ、それなんですがね?」
不祥事等諸々の情報を記載したメールを何処かへと送付してパソコンを閉じる。
「あんまり我々を甘く見てはいけませんよ?それと縁談ですけど御断りします、婚約決まってますから、ははは」
通話を切って目的地を運転手に伝える。
「新聞社までよろしく頼むよ、大事な話があるからね…。娘達はまだまだ甘いな、敵は徹底的に潰さないとな」