神の力6
街に出ていた黒姫と玉藻前は下らない雑談をしながら散策していた。
「それにしても日が出てるっちゅう理由だけで部屋に引きこもるアホは困りもんやなぁ」
「吸血鬼なんですよね?灰になっちゃうのでは?」
「んなアホな…」
神斎の破壊活動のおかげでボロボロになって工事中の広場を見て玉藻前が頭を掻く。
「あちゃー、そりゃあんだけ壊したらこうなるわなぁ」
「…やっぱり野放しには出来ませんね」
修理が終わるまでは通行の規制がされて新たな戦いの場所を探さざるお得なかった。
「どないする?ここ以外で戦える場所あるんか?」
「人が多い場所に出るならそういう場所を探す?」
二人は周囲を見渡してテキトーに道を選んで進もうと決めた。
遅れて八坂が工事中の広場に到着する。
「うわ、アイツら狩場めちゃくちゃにしてくれやがって…」
あまりの驚きについ口走ってしまい慌てて黙り鋭い目付きに戻す。
「狩場?あなたも怪物達と戦うのかしら?」
黒鴉と黒服の男達が八坂近付き声をかけてくる。
「あぁ?…うぉ」
面倒臭そうに追い払おうと黒鴉を睨もうとするが後ろの黒服に驚き身構える。
黒鴉が営業スマイルで名刺を渡す。
「私こういう者ですわ」
「神藤黒鴉ぁ?…企業のチームか、覚醒者の集いねぇ」
興味無さそうに企業チームを読み上げて考えておくと言ってどこに行こうかと思案していると黒鴉が挑発するように聞いてくる。
「浜松翔、ご存知?」
かまを掛けるように同年代の八坂に尋ねる。
名前に反応してしまいそうになるが我慢してしらばっくれる。
「っ…知らねーな、何の用だ?」
「ただのスカウトよ、興味あったら連絡頂戴」
「そうかい、気が向いたら連絡するよ」
八坂が歩き去るのを眺めて黒鴉が鼻で笑う。
「腕試しにいずれ連絡してきそうね、身辺調査しておいて」
黒服達が一つ返事にどこかに連絡し調査を命じる。
黒姫達は道に迷いながらフラフラと街を彷徨って軽食に舌鼓していると八坂がやってくる。
玉藻前がすぐさま反応して八坂と睨み会う。
「おんやー、この前のヤンキーが何の用や?」
「お前らに用はねーよ」
八坂も面倒なヤツに会ったと疲れた顔をする。
「今日は面倒なヤツばかりに出会うな、魔物なら歓迎するんだが…」
思い出したかのように魔物の玉藻前を睨む八坂を止めるように黒姫が前に出る。
「やめてください」
「…ん?お前さっきの?」
構えを解いた八坂が黒姫の雰囲気に名刺を取り出して名前を読む。
「姉さんがいる…?」
嫌な予感を覚えて黒姫が玉藻前と顔を見合わせる。
「アカン、面倒事の予感や!」
「帰りましょう」
「あ!おい、そっちは…!」
わざわざ八坂が来た方向へ走って行く二人を止めようかと思ったが諦めて歩き去る。
八坂の危惧通り黒姫達は面倒なヤツに遭遇する。
「見つけたわ!我が妹よ!」
テンションが少しおかしくなっている黒鴉に二人が困惑していると媚びた感じに黒姫に詰め寄ってくる。
「ねぇ黒姫?お姉ちゃんに付喪神さんについて教えて欲しいなー」
「え!?え!?」
普段絶対に見せない態度と仕草に二人がドン引きする。
「…何よ、何時も通りがいいのかしら?」
「姉さん精霊に興味があるのですか?」
「そうよ、皆が使えるようになれば魔物との戦いも楽になるし負傷者も減る、被害も減る!ウィンウィンじゃない?」
目を輝かせる黒鴉を諌めるように黒姫が答える。
「姉さん、力は皆持てれば平和になる訳じゃないと思うのですが…」
「ふふ、抜かりないわ、神藤グループ傘下だけの独占でもいいのよ、技術は力…」
「それが本音やろ?自分とこだけ強くなってどないすんねん」
玉藻前も呆れて目付きが鋭くなる。
「…あら?強くなれば人が集まる、支配地域が広がれば神藤グループ大躍進よ」
「姉さん…そういう考えなら賛同できませんよ、危険すぎます」
うるうると涙目になりながら黒鴉が見つめてくる。
「お姉ちゃんを信じて」
「都合のええ時だけ姉顔すんのやめーや」
玉藻前の冷静な言葉にため息を吐きながら黒鴉が髪を掻き乱してイライラを爆発させそうになる。
「姉さん!わかった、わかりましたから落ち着いて」
「姫やんも甘ちゃんやで…」
そこに運悪く魔物が出現して話が中断される。