新たな敵4
全員で街に服飾を購入しに街に出る。
翔と黒姫で別れて男女別に買い物に移る。
ダンがフード付きの上着を目を輝かせながら品定めする。
「日光を多少軽減できるいい服であるな、なぜ我輩の世界にこういうものが無いのであろうか」
「サンバイザーとサングラスってのもあるぞ」
「ふむふむ、これもまた良いものであーる」
試着した姿を見て翔がラップやってそうという感想を抱いているとシルバーアクセサリにまで目が行くダンを引き留める。
「そこまで予算無いから勘弁してくれ」
「カッコいいではないかー、お願いするであーる」
「そういうアクセサリは自分で稼いで買ってくれ」
残念そうに肩を落とすが幾つかの服を購入してご満悦になりながら黒姫と合流しようと指定の場所へ向かう。
「先ほど言ってたラップとやらも教えて欲しいである、色々と興味が出てくるである」
「はは、そういうのは…ああ、しまった」
翔は二人分の携帯を作る必要があると考えて財布を取り出して頭を抱える。
「どうしたのであるか?」
「いや、大丈夫だ…多分」
いっこうに帰ってこない黒姫達を待ちながら一時間、全員両手に紙袋を持って新しい洋服に着替えた黒姫達を見て翔の顔がひきつる。
「すみません、お待たせしてしまいましたか?」
「いや、さっき終わったとこ」
「結構待ったであるよ?」
翔がダンを殴り小声で伝える。
「こういうのは相手に気を遣わせちゃダメなんだよ」
「そ、そういうものであったか…」
「ごめんなさい、神鳴も服が欲しいって…」
翔が神鳴をじっと見つめる。
「お前服あるんじゃなかったのか?」
「い、いいじゃない新しいのくらい」
「く、黒姫さん?予算はあとどのくらい?」
黒姫が首をかしげて小銭を渡してくる。
(マジか…予算が死んだ)
小銭を財布に入れながら神鳴を見て頭を下げる。
「神鳴、頼むよ魔物呼んでお金を…お金を…!」
「だ、駄目よ!姉さんにまた叱られる!」
「なんや?どないしたん?」
玉藻前が翔と神鳴の狼狽え具合に頭を掻く。
「翔君…もしかして…」
「この後二人分の携帯だぞ…いや、忘れてた俺も悪いが…」
黒姫も思い出したように驚き困惑する。
「け、契約だけなら月払いでなんとかなりますよ」
「そ…そうだな!大丈夫だよな!」
五人がビルを出て次の店に向かおうとすると広場で偶然河内と猪尾に出会う。
「翔っちじゃん…うわ」
猪尾が死んだ瞳をして大所帯で移動する翔に声をかけて後悔する。
「よぉ、二人とも何してるんだ?」
「そりゃお前…コレよコレ」
猪尾はお金を示す丸を指で作りゲラゲラと笑う。
「翔と黒姫…と神鳴か、それは分かるが後ろの二人は?」
河内が話を変えるように話しかけてくる。それに対して胸を張ってダンが答えようとするが翔がすかさず止めてダンに小声で説明する。
「魔物ってバレたら攻撃されるかもしれないからあくまでも人間として振る舞ってくれ…頼むよ」
「分かったである、我輩はダン・ピエールである、浜松殿の友達であるよー」
「やべぇぞカワちゃん外人ラッパーだ…」
「…流暢な日本語だ、外人じゃなくて芸名じゃないか?」
玉藻前も名乗ろうとするがまた翔が止める。
「お前の名前は有名だろうが!死ぬぞ」
「あぁん?返り討ちにしたるわ!ウチ玉藻前、よろしゅうなー」
「カワちゃん見ろ狐だ!めっちゃ可愛いぞ!」
「落ち着け、翔を羨ましいとか妬むんじゃないぞ!」
可愛いと言われてにこやかに狐アピールをする玉藻前に骨抜きにされる二人を見て全員が呆れる。
「ふ、チョロいわ」
「いやきっとあの二人が馬鹿なだけだから」
喋る魔物を見たことない二人は全く無警戒に自己紹介して二人と別れて携帯を買いに向かう。